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絵本トレンドライターN田N昌の “大人だってもっと絵本読みたいの!”

絵本だけの楽しみ、「縦開き」特集!

本は横に開いて読むものでございます。小説は右から左に、漫画は左から右にと、本には左右に開いて読む、いわゆる「右開き」「左開き」のものがあります。

絵本の場合はというと「右開き」と「左開き」の両方がございます。とはいえ、最近は左から右に開いて読む「左開き」が主流かと。これは、テキストが縦書きか横書きかの問題で、最近の絵本は横書きが多いためかと存じます。

絵本にはさらに、「縦開き」というものも存在しております。かなり少数派ではございますが…。その縦開きの絵本界隈が昨今盛り上がっているようなので、今回は最近話題の「縦開き絵本」をご紹介させていただければと存じます。

ちょっと最近気になっています! 縦開き絵本界隈

まず、縦開き絵本といえば、「100かいだてのいえ」シリーズ(偕成社)でございます。2008年に出版された『100かいだてのいえ』に始まり、『ちか100かいだてのいえ』、『うみの100かいだてのいえ』と次々に大ヒット、刊行後わずか10年でミリオンセラーに、累計部数は427万部を突破しております。

そして、シリーズ刊行15周年となる一昨年は、6作目となる『ぬまの100かいだてのいえ』が出版されております。

今回の舞台は、なんと「ぬま」!

ぬまの100かいだてのいえ

ある山のてっぺんに「まんげついわ」とよばれる丸くて大きな岩がありました。岩から少しはなれた沼に、オタマジャクシのウズがくらしています。ウズはやさしく勇気があって、みんなの人気者。仲間たちと毎日楽しくくらしていたある風の強い日、「まんげついわ」がゴロゴロゴロゴロ バシャーン!とぬまに落ちてきて…!

大人気「100かいだてのいえ」シリーズ第6弾。今回の舞台は、なんと「ぬま」!
淡水にくらす生きものたちがウズを出迎えます。どんな生きものたちがいるのでしょう?

 

地下、海、空、森と毎回、舞台をかえてきた「100かいだてのいえ」シリーズの最大の特長は、それぞれのページ(階)で細かく描きこまれた生き物たちの暮らしぶりでございます。子どもたちのハートを鷲掴みでございます。また毎回主人公が変わるのも、このシリーズの楽しみどころでございます。ちなみに最新刊(ぬま)では、オタマジャクシのウズが主人公でございます。縦開き絵本の迫力、魅力をご体験いただくには間違いナッシングなシリーズかと存じます。まだ未体験の方は是非ご体験いただければと存じます。

お次は、「大ピンチずかん」シリーズを始め数多くのヒット作を出されている大人気絵本作家の鈴木のりたけさまの最新刊、『たれてる』(ポプラ社)でございます。ちなみに、「大ピンチずかん」シリーズ2作目である『大ピンチずかん2』は、先日発表になった「第17回MOE絵本屋さん大賞2024」で第1位を獲得しております(1作目の『大ピンチずかん』も2022年の「第15回MOE絵本屋さん大賞2022」で第1位を獲得)。

こちらの『たれている』は、『100かいだてのいえ』と同様、縦開き絵本でございます。

たれ続けるチョコレート、いったいどうなるの!?

たれてる

ドーナツに
チョコレートをかけて…。

あれ、
ちょっとかけすぎじゃない?

も~っ!
たれてる、たれてるって!

たれ続けるチョコレートは、いったいどうなるの!?
ページをめくるたびに驚きと笑いが生まれる、
子どもと大人のツボつくユーモア絵本。

縦開きの絵本の中には、たとえば“穴の中”のように縦長の舞台で展開するため縦開きになっているタイプと、舞台がどんどん上に上がったり下に下がったりするのを表現するために縦開きになっているタイプとございますが、こちらは後者でございます。ちなみに、『100かいだてのいえ』も後者でございます。ドーナツにかけたチョコレートがどんどん下に垂れていくお話でございます。縦開きを活かしたゴイスーに楽しい絵本でございます。絵本という括りの中で、毎回毎回、新しい試みに挑戦している鈴木のりたけさまならでは絵本でございます。パパママも楽しめる斬新な切り口のユニーク絵本でございます。

こちらは、昨年10月に出版されたメキシコの絵本でございます。なかなか、メキシコの絵本に出会う機会はなく、メキシコではどんな絵本が読まれているのかと思いながら読んだ一冊でございます。

縦開きで楽しむメキシコ発の絵本

ワニのクロコ

クロコはワニ。ジャングルの中でワニらしくすごしていた。なのに、あるとき、深い穴に落ちてしまった。へびや、とりや、さるが、それぞれアドバイスするが、どれもうまくいかない。悲しくなったクロコは、とうとう泣き出した。すると……。ユーモアあふれるメキシコの絵本。

作者のアンドレス・ロペスさまは、2022年にボローニャ国際絵本原画展SM出版賞、2023年にはナミコンクール・グリーンアイランド賞を受賞しており、この絵本はアメリカ、フランス、イタリア、韓国、ブラジル、台湾など世界各国で翻訳出版されているユーモア絵本でございます。

お話はジャングルが舞台(ジャングルの絵がゴイスーに魅力的でございます)。深い穴に落ちて出られなくなったワニが、穴から脱出するというストーリーです。どのように脱出(?)したか気になる方は是非、ご自身でお確かめいただけたらと存じます。絵もゴイスーに魅力的で、さらに縦開き絵本の中では珍しい小型タイプなので、バレンタインデー(ホワイトデー)や、誕生日プレゼントなどに、大人から大人にプレゼントするのにもオススメの絵本ではないかと…。

そして、『ワニのクロコ』を読んでいて、「そういえば…」と思い出したのが、次にご紹介する『どうする どうする あなのなか』(福音館書店)でございます。

穴から出る方法は……?

どうするどうするあなのなか

深い穴に落ちてしまった敵同士の野ねずみと山猫は、穴から出る方法を考えます。愉快なストーリーで、たっぷり楽しめる絵です。穴の深さが細長い縦の判型で表現されています。

なんと!こちらも穴におちた動物が穴を脱出する物語でございます。穴と縦開き絵本との相性がよいのでございましょうか……。

文はきむらゆいちさま、絵は高畠純さま、ゴイスーなコンビでございます。

前述の『ワニのクロコ』で、穴に落ちたのはワニでしたが、こちらは野ネズミとそれを追いかけていた山猫でございます。登場人物が、あれやこれやとアイデアを出し合うのは似ていますが、脱出の経緯、オチはまったく違うのでございます。是非、メキシコの縦開き絵本『ワニのクロコ』と日本の縦開き絵本『どうする どうする あなのなか』、読み比べていただきたいのでございます。同時に、メキシコと日本の文化の違いも感じていただければと存じます。

 

また、先日亡くなられた谷川俊太郎さんの絵本にも縦開きの作品、『あな』(福音館書店)がございます。こちらもタイトルの通り“穴”が舞台でございます。ちなみに絵は和田誠さまが担当、ゴイスーなコンビの絵本でございます。

他にも、『きりんのこが せのびをしています』(金の星社)、『ひー』(鈴木出版)など、魅力的な縦開き絵本はたくさんございます。この機会に、是非、チェックしていただければと存じます。

N田N昌

絵本トレンドライター・放送作家・絵本専門士
絵本の最新情報を発信&大人絵本文化、絵本プレゼント文化の普及活動に日々努めております。  

@NtaNmasa

 

(画像は、イラストレーター・作家の網代幸介さんによる著者肖像画)

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