【今週の今日の一冊】卒業を迎える子どもたちを応援する絵本

3月3日~3月9日までの絵本「今日の一冊」をご紹介
3月に入りました。今年「卒業」を迎える皆さん、ご卒業おめでとうございます。小学校、中学校、高校、大学…と、どの年代においても「卒業」はひとつの大きな節目ですね。見守るご家族や先生方もお祝いの気持ちとともに、子どもたちのこれからを応援したい気持ちでいっぱいになっているのではないでしょうか。そんな応援の気持ちを絵本に託して手渡してみませんか。
今週は、卒業生の皆さんに贈りたい絵本をお届けします。
3月3日 どんどん行こう。ぼくたちの新しい道!
月曜日は『みち』
まっ白な画面に引かれた力強い一本の線。
それがそのまま、ぼくたちが歩く「みち」となり、「さかみち」となり、「くだりみち」や「でこぼこみち」になり。雪が降っても、太陽に照らされても、「みち」があればどんどん進み。時には「よりみち」したり、「まよいみち」になったり。
近くても遠回りでも、長い道のりであっても、「みち」があれば、進んでいくことができる。でも、「みち」が見えなくなったら……?
「それ!」
線を引くのは、自分自身。どんどん進めば、「みち」はできていくもの。そうだよね。
三浦太郎さんの最新作は、いつもとちょっと雰囲気が違う? シンプルで美しい色面の構成による作品の印象が強いけれど、今回の主役は、思いっきり手で描かれたような力強く太い、味のある線。その道を歩いていく男の子と女の子、登場する家並みや商店街もどこか懐かしく。限られた色彩の中で描かれるのは、とても魅力的で親しみのある日本の風景。さあ、どんどん行こう。ぼくたちの新しい道! 読めば、子どもも大人も元気が出てくる絵本です。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
読者レビューより
深読みしたら人生のような道です。
道にはいろんな道があって、それを自分は歩いていくのですね。
リズムがあるから、歩くことに楽しさがあります。
道が途切れていても、ちゃんとその先に道があるっていう発想も素敵です。
目的地に到着するのかと思ったら、道は裏表紙に続いていて、また表紙につながっていました。
若いうちは道はエンドレスです。
いろいろあるけど、まだまだ歩いていきましょう。
知らず元気をもらえる絵本です。
(ヒラP21さん 70代以上・その他の方)
3月4日 ほんとうのものをみるゆうきがあれば かべはきえる
火曜日は『かべのむこうになにがある?』
大きな赤い壁がありました。どこまでもずうっとつづいていました。
壁の中には動物たちが住んでいますが、壁がどこまでつづいているのか、誰がいつどうやって作ったのか、誰も知りません。気にする者さえいないようでした。
でも、知りたがりの小さいねずみだけはこう思いました。
「ふしぎだな、きになるな。この かべの むこうに なにが あるんだろう?」
ねこやきつねやくまは、「かべはあたしたちを守ってくれるのよ。外にはこわいものがいっぱいあるから」とか、「むずかしいことを考えるのはやめろよ。そうすりゃハッピーになれる」とか、いろいろなことを言います。
くたびれたらいおんは「かべのむこうになんて、なにもない。闇だ。はてしない闇だ」とまで言います。
でもある日、飛んできた空色の鳥といっしょに、壁をとびこえたねずみは……。
この本の作者、ブリッタ・テッケントラップは、ドイツ生まれの絵本作家で、『いのちの木』をはじめ、哲学的で美しい絵本を描いています。
圧倒的な存在感がある赤い壁と、壁を越えたあとのカラフルな世界は、ぜひ見くらべてほしい場面です。
「ほんとうのものを みる ゆうきが あれば かべは きえる。ぜんぶ きえたあとには きっと すばらしいせかいが あるはずだよ」という言葉が胸にひびきます。
もしかしたら「かべ」があることにさえ気づかずに暮らしているかもしれない私たち。
「かべのむこう」を知りたいと願う、ねずみの勇気と、希望を感じる結末が、心に小さな火を点します。
大人でも子どもでも、手元に置いておいて、ときどき読み返したい絵本です。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
読者レビューより
動物たちを囲っている大きな赤い壁。
誰も、この壁に疑問を感じないけれど、
知りたがりやのねずみだけは、
この壁はなぜできたのか、壁のむこうには何があるのかが知りたくてたまりません。
こういう気持ちって、とても大切だけれど、
くまのおじいさんが言っていたように、
あるのが当たり前だから不思議に思わない。
こんな風に考えてしまう人は多いのではないでしょうか。私もその一人です。
そして、赤い壁は、心の壁でもあるのかな。
勝手に一人で心を閉ざしてしまうことがありますが、自分が勝手に壁を作っているだけなのかもしれません。
いくつになっても、ねずみくんのような、壁のむこうを見てみたいという勇気は必要ですね。
(tori.madamさん 30代・ママ 女の子7歳、女の子4歳)
3月5日 「みらいのちず」って、あるのかな。
水曜日は『ぼくはいったい どこにいるんだ』
おつかいを頼まれたけど、おかあさんの書いた地図じゃ、さっぱりわかんない。みーちゃんのママが書き足してくれたら、すぐに目的地についた。うーん、地図ってすごいな。
地図があれば自分が今どこにいるかわかるし、どうすれば行きたいところにいけるのかがわかる。小さな地図から大きな地図、うちがわの地図もあるし、仕組みがわかる地図だってある。他にもいろんな地図がありそうだ。
誰かにとっては便利の地図でも、他の人にはわからない地図。自分のためだけの地図だってあってもいい。たとえば……。
地図にすると、わからなかったことも見えてくる!? 今年、絵本作家デビュー10周年を迎えるヨシタケシンスケさんによる「発想えほん」シリーズ第5作目のテーマは「地図」。自分がいるのは、今どこなの? 何をめざして進めばいいの? いや、わからないままだっていいんじゃない? 想像をふくらませながら、「地図」についてあらゆる視点から考察し、整理していくまったく新しい「地図絵本」。
地図を見るのが好きな人も、地図を書くのが下手な人も。さあ一緒にあたらしい地図を考えて、世界と自分をつかまえにいこう!
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)


読者レビューより
ヨシタケシンスケさんの新作絵本ということで、読みたいと思いました。
自分がどこにいるのかを、場所の地図だけでなく、心の地図、時の地図でも表現しようという発想。さすがヨシタケさん!と思いました。
「まよいながらうろうろするのが楽しい」とか、「迷ったとしても大丈夫、必ずなんとかなる」というヨシタケ節もよかったです。
(クッチーナママさん 40代・ママ 女の子19歳、女の子16歳、男の子14歳)
3月6日 ほんとうになるまで、夢をもちつづけよう。
木曜日は『わたしのなかの ちいさな たからもの』
自分のなかの宝ものってなに? どうすれば見つかるの?
誰もがみんな、希望、しあわせ、想像力を心のなかにあふれるほどもって生まれてきます。それは、わたしたちが愛情を感じたり、なにかを目指してがんばったり、夢を描いたり、創造したり、自分のいのちをせいいっぱい燃やして生きるための宝ものです。けれど、成長して時間がたつと、わたしたちは、責任を問われないようにすることや不安感、疑いや怖れに慣らされてしまいます。そして、そのために、生まれつきあふれるほどもっていた、あの宝ものを見失ってしまうのです。 これは、それをもう一度取り戻すための本です。誕生日・卒業・就職・退職・人生の転機などのお祝いに贈るギフトブックとしてもオススメの1冊です。
あらすじ:愛らしいアヒルの子が、知恵と勇気をもって生きること、深く思いやること、そして一瞬一瞬を大切にする気持ちを胸に、豊かな人生を歩こうとする冒険が描かれています。
読者の声より
表紙絵の小さなアヒルの子が主人公。
おやおや、どうやら生まれたばかり。
そんなアヒルの子と一緒に、子どもの頃持っていた希望、幸せ、想像力を再発見する、でしょうか。
この主人公だからこそ感じる、夢を持ち続けることの大切さ、チャレンジ精神。
もちろん、自分も大切に。
表紙絵になっている馬との関係性もポイント。
他の人の喜びは、自分の喜びにもなる。
珠玉の文章は、何かの節目に心に響くのではないでしょうか。
小学校高学年くらいから大人まで、じっくりと味わってほしいです。
(レイラさん 50代・ママ)
合わせておすすめ。
3月7日 きみは たいせつだよ。なぜかっていうとね……
金曜日は『きみはたいせつ』
自分がどうしようもなく小さく思える。
誰にも気にされていないんじゃないかと感じる。
そんなきみにこそ、伝えてあげたいのは。
「きみは たいせつだよ」
ってこと。なぜかっていうとね……。
気づかれないほど小さな微生物も、やっかいものだと思われてる生き物も、足並みを揃えることのできない子や、助けを求めても気が付いてもらえない子も。
たとえ、きみが抱えきれないほど大変なことが起きたとしても、大切な人と信じられないほど遠く離れていたとしても、たまらなくさびしくなったとしても。
みんなひとりじゃない。この宇宙の中で、生命の進化の中で、そのすべてのつながりの中で生きているきみの存在には、意味がある。
素朴な可愛らしい絵で優しく語りかけてくれるのは、『おばあちゃんとバスにのって』(鈴木出版)でコールデコット賞オナーブックに選ばれ世界で注目されている絵本作家クリスチャン・ロビンソン。『きみはたいせつ』も世界8か国、6万部以上も出版されているそう。原書はYou MatterというBlack lives matterにも呼応するタイトルで、子どもたちも含め、誰も排除されない社会への願いがこめられています。
「どんなきみだって、たいせつ」
ゆっくりと、そして、くり返し。一緒に読み続けてあげてくださいね。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
3月8日 きょうもあしたも あたらしいきみのはじまりの日
読者レビューより
下の娘が通う小学校で読み聞かせをしています。
毎回違う学年の読み聞かせをしていますが、今日は娘の学年6年生を担当しました。
6年生に読むのは、今年度最後なので、何かこれから前に進むためのメッセージ的な本がいいなと思い、この本を選びました。
力強くて、説得力があって、とってもいいと思います。
みんな、静かに聴いてくれました。
伝わったかな?これから夢に向かってどんどん進んで欲しいと思います。
(みまりさん 40代・ママ 女の子15歳、女の子12歳)
3月9日 新しい道を歩き出す人へ
読者レビューより
卒業式の日。感謝の気持ちが溢れます。空、花、お母さん…そして、私を私にしている私にも。短い当たり前のような言葉ですが、詩人、谷川俊太郎さんの言葉には、その短さのなかに凝縮された大きなものへとイメージが広がるように感じます。
(ピンピンさん 30代・ママ 男の子2歳)
合わせて読みたい関連記事
- 2024.03.04【今週の今日の一冊】卒業生に贈る絵本
明るい未来へ飛びだっていく子どもたちの背中を押してくれるようなメッセージが、ひとりひとりの心に届きますように。
選書・文:秋山朋恵(絵本ナビ副編集長)
![]() |
この記事が気に入ったらいいね!しよう ※最近の情報をお届けします |