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未来の今日の一冊 ~今週はどんな1週間?~

【今週の今日の一冊】戦後80年、今 ヒロシマ・ナガサキを考え、受け継ぐ本

2025年は戦後80年という節目の年。80年前、日本は大きな戦争を経験しました。その中でも、8月6日のヒロシマ、8月9日のナガサキに落とされた原子爆弾は、数えきれない命を奪い、生き残った人々にも心と体に深い傷を残しました。その苦しみと悲しみは、今も消えることはありません。今週は、ヒロシマ・ナガサキで被爆された方々一人ひとりの、かけがえのない命の物語を知り、考えるための本をご紹介します。

原子爆弾がどのように大切な日常を奪ったのか……歴史の事実や記録の向こう側にある、生身の人間が歩んだ道のりを伝える、詩、絵本、物語に、ぜひ触れてみてください。

https://www.ehonnavi.net/pages/war-and-peace 今 子どもたちに伝えたい絵本と児童書約500冊を、年齢、舞台となった地域・戦争、テーマ別に紹介

2025年8月4日から8月10日までの絵本「今日の一冊」をご紹介

8月4日 子どもたちが書き残した言葉を、いまを生きる人へ

日本で初めて戦争をテーマに、青少年の子どもたちに向けてつくられた絵本『わたしがちいさかったときに』(童心社)の刊行から58年。原爆を体験した子どもたちの言葉をいまに繋ぐ一冊。

月曜日は『1945年8月6日 あさ8時15分、わたしは』(2025年7月刊)

1945年8月6日 あさ8時15分、わたしは

1945年8月6日、あさ8時15分。当時の子どもたちが書き残した言葉を、いまを生きるすべての人へ。
日本で初めて戦争をテーマに、青少年の子どもたちに向けてつくられた絵本『わたしがちいさかったときに』(童心社)の刊行から58年。この本に収録された、原爆を体験した子どもたちの言葉をいまにつないでくれるのは、児童文学作家のあまんきみこ、詩人のアーサー・ビナード、当時の執筆者の小川俊子が語る言葉と、いわさきちひろが描いた絵。とどまることのない時間の流れのなかで、時をこえて当時の子どもたちと出会い、わたしたちは今日を、明日をどう生きるのかをともに考える絵本です。

https://www.ehonnavi.net/ehon00.asp?no=272673
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8月5日 80年前の絵日記が伝えてくるもの

二年生のみなみちゃんがひいおばあちゃんのふみこさんの家で見つけたのは、みなみちゃんと同じ二年生のころに、ふみこさんの妹・まさこさん(まあちゃん)が書いていた、戦時中の「絵日記」でした。2022年に刊行された『ひろしまの満月』(第70回産経児童出版文化賞産経新聞社賞)の中澤晶子さんとささめやゆきさんが描く、原爆と戦争による大きな悲しみを伝える幼年童話。

火曜日は『ひろしま絵日記』(2025年6月刊)

ひろしま絵日記

 

小学二年生のみなみちゃんは、夏休みの観察日記に気が進まない様子。そんな夏のある日、ひいおばあちゃんの「ふみこさん」の家にひとりでお泊まりすることになります。はじめは気持ちが乗らないみなみちゃんでしたが、ふみこさんの住んでいる「みどりが丘」は自然豊かな気持ちのいいところでした。

ふみこさんの家にお泊まりした三日目の朝、みなみちゃんは、押し入れの奥にしまわれた一冊のぶあついノートを見つけます。全体に茶色くなって、ふちがよれていて、だいぶ古いようです。それは、みなみちゃんと同じ二年生のころに、ふみこさんの妹・まさこさん(まあちゃん)が書いていた、戦時中の「絵日記」でした。

みなみちゃんは、ふみこさんと一緒に、絵日記を読んでいきます。
戦争のためにひなまつりを我慢したこと、戦時中、食べ物が不足していたこと、お姉ちゃんが疎開に行って寂しいこと、防空壕に逃げたこと……。そこにはみなみちゃんが初めて知ることがたくさん書かれていて、その絵日記の内容を補足するように、ふみこさんがいろいろな話をしてくれるのでした。

2022年に刊行された『ひろしまの満月』(第70回産経児童出版文化賞産経新聞社賞)の中澤晶子さんとささめやゆきさんが描く、原爆と戦争による大きな悲しみを伝える幼年童話。書かれている内容は悲しくつらいものですが、中澤晶子さんのやわらかな文章は、ふみこさんがみなみちゃんを見つめる目のように優しく、読む子どもたちを温かく包み込むようです。
絵日記で綴られる子どもの目から見た戦時下の生活は、今の子どもたちにとって信じがたい状況でありながらも、まあちゃんが感じている気持ちにはすっと共感できるところがあるのではないでしょうか。だからこそ、絵日記を読み進めていった先で分かる事実を、体まるごとで感じるのではないかと思います。何気ない日常が戦争によって奪われることの重みを絵日記のページを通して、子どもたちはもちろん、大人も改めて感じることでしょう。

そして本書は、悲しい事実だけでなく、希望をも見せてくれます。
まあちゃんの絵日記に触れた、今を生きるみなみちゃんの胸の中にはいったいどんな思いが芽生えていったのでしょう。この物語が、世代を超えて多くの方に届くことを願います。

(秋山朋恵  絵本ナビ編集部)

8月6日 けっして忘れないと! 二度とくり返さないと!

反戦平和の詩画人・四國五郎さんが書いた朗読詩「ひろしまの子」。原爆によって故なく命を奪われた子どもたちに、「過ちは繰返さない」と誓ってほしいと訴えた詩です。今も世界中で争いがつづくなか、戦後80年の節目の年に、長谷川義史さんの絵で絵本化されました。

水曜日は『朗読詩 ひろしまの子』(2025年7月刊)

朗読詩 ひろしまの子

「あなたのとなりを見てください 
 ひろしまの子がいませんか」

日本が戦争をしていた1945年8月6日午前8時15分、アメリカ軍によって広島に世界ではじめて原子爆弾が落とされ、多くの尊い命がうばわれました。

詩や絵で表現することを通して反戦平和の活動に取り組んだ四國五郎氏が、1980年8月6日にヒロシマで行われた原水爆禁止世界大会のために作られ、1万人の前で読まれたのが「朗読詩 ひろしまの子」です。

終戦後80年、世界では今も争いが続いています。この節目の年に絵本作家長谷川義史さんが「今を生きる人たちに伝えなければ」と決意し、絵本化。詩の中で繰り返し登場する被爆死した子どもたちを描くために取材やスケッチを繰り返し、完成させた渾身の一冊です。

「ひろしまの子は 丸顔です
 すんだひとみを しています
 あなたを じっと見つめています」

登場するのは、被爆前の子どもたちの笑顔。戦争が始まる前、原爆が投下される前には、それぞれの人の生活があり、子どもたちも日常を生きていたのです。それが一瞬で奪われてしまうのが戦争なのです。

「戦争は絶対にしてはいけない」

私たちは、すぐ隣にいるひろしまの子を思い出し、そのひとみを見返し、約束しなければなりません。あやまちは決して繰り返さないこと、決して許さないこと。絵本だからこそ届く、強い思いというものがあります。広く読まれていくことを願います。

(磯崎園子  絵本ナビ編集長)

8月7日 あの朝と現在とをつなぐ、一人の少女とぼくの物語

国語教科書(小5、光村図書出版)に掲載の「たずねびと」も収録された一冊。巻末に、原爆や平和について深く知ることのできる<ヒロシマへの道しるべ>も掲載され、広島を学ぶときの大きな参考になります。
 

木曜日は『かげふみ』

かげふみ

ぼくはぜったいに忘れないだろう。夏の日に出会ったヒロシマの少女のことを。
1945年8月6日のあの朝と現在とをつなぐ、一人の少女と「ぼく」の物語。

国語教科書(小5、光村図書)に掲載の「たずねびと」も収録。
巻末に、原爆や平和について深く知ることのできる<ヒロシマへの道しるべ>を掲載。

■児童文学作家・あまんきみこさん推薦■
この本は、あなたの前の扉です。
扉をあけて、「澄ちゃん」に出会ってくださいね。
わたしたちひとりひとりの「命」について、考えを深めるきっかけになりますように。

8月8日 一発の原子爆弾で全滅した家族の足跡をたどって

戦前、戦中、戦後の家族や、亡くなった家族、生き残った家族、また今を生きる家族など、「かぞく」をキーワードに、戦争、平和、いのちについて問い続ける著者・指田和さんの活動のノンフィクション作品。

金曜日は『ヒロシマ 消えたかぞくのあしあと』

ヒロシマ 消えたかぞくのあしあと

2019年7月に刊行された絵本『ヒロシマ 消えたかぞく』は、悲惨な戦争を幸せな家族の風景から伝えた新しい切り口として話題を呼びました。刊行後は、シニア世代を中心に多くの反響が寄せられ、あの家族を自分自身に重ねて読む人が多いことが分かりました。本書は1500枚以上あったアルバムの写真から絵本ができるまでを紹介し、戦前、戦中、戦後の家族や、亡くなった家族、生き残った家族、また今を生きる家族など、「かぞく」をキーワードに、戦争、平和、いのちについて問い続ける著者・指田和の活動のノンフィクションです。

8月9日 父さんは、伝えたかったはずだ。長崎で起きたことを

原爆から逃れ、平穏な一生を送ったと思っていた父は、被爆者だった。被爆地で生き抜いてきた父の思いと、隠し続けられたぼくの名前のひみつ。やがて解き明かされる真実にたどり着いたとき、ぼくは……。

土曜日は『Garden 8月9日の父をさがして』(2025年6月刊)

Garden 8月9日の父をさがして

1945年8月9日。一発の原子爆弾が長崎に落とされた日、12歳の父は中学校での試験を終え、疎開先の隣町へ帰る列車に乗れたことで一命をとりとめた。爆心地から800mの場所にあった中学校は全壊し、同級生の3分の1が帰らぬ人となった。
原爆から逃れ、平穏な一生を送ったと思っていた父は、しかし被爆者だった。父の死後、見つかった父の被爆者手帳には、ぼくの知らなかった「あの日」とそこからはじまった父の葛藤の日々が残されていた。
被爆地で生き抜いてきた父の思いと、隠し続けられたぼくの名前のひみつ。
やがて解き明かされる真実にたどり着いたとき、ぼくは……。
長い時を経て、原爆被爆者の言葉にできなかった思いが、今、静かに胸に迫る。

8月10日 長崎の被爆柿の木が見てきた、家族と町

原子爆弾が奪った命と日常の重さ、そして、それを越えてなお生き続ける命の強さを、イタリア人作家が、事実を基に子どものために書き下ろした幼年童話。
 

日曜日は『わたしの町 ナガサキ 原爆を生きのびた柿の木と子どもたち』(2025年7月刊)

わたしの町 ナガサキ 原爆を生きのびた柿の木と子どもたち

945年8月9日、長崎のすべてを奪い去った原爆と奇跡的に生き残った1本の柿の木の物語。
推薦!長濱ねる(元・欅坂46、長崎市出身)、宮島達男(現代美術家)

わたしの町 長崎。穏やかな日々が続いていた。
家族が寄り添い、庭には柿の木、子どもたちはその木の下で笑っていた。
だが、あの日、すべてが一瞬で奪われた。
原子爆弾が奪った命と日常の重さ、そして、それを越えてなお生き続ける命の強さを、イタリア人作家が、事実を基に子どものために書き下ろした幼年童話。

── ずっと見守り続けてくれている。わたしの隣で、わたしたちの街を。 もう二度傷つくことがないよう、力を合わせて。── 長濱ねる
── その根に宿る祈りが、未来の平和を支えていくように ── 宮島達男

https://www.ehonnavi.net/pages/shusen80th 絵本・児童書出版社セレクト「戦後80年 平和を願う絵本」
https://www.ehonnavi.net/pages/war-and-peace 今 子どもたちに伝えたい絵本と児童書約500冊を、年齢、舞台となった地域・戦争、テーマ別に紹介

日本では戦後80年となりますが、世界では今も戦争が続いています。世界中の紛争や核問題について考える時、被爆国である日本が果たす使命は大きなものでしょう。いかなる場合でも決して核を使ってはならない、繰り返してはならないということを、今回ご紹介した様々な作品を通してあらためて胸に刻み、伝え続けていきたいと思います。

選書・文:秋山朋恵(絵本ナビ副編集長)

掲載されている情報は公開当時のものです。
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