【今週の今日の一冊】「元気かな?」からはじまる物語。往復書簡の絵本・読み物特集
立春を迎える今週は、暦の上では春のはじまり。まだまだ空気は冷たく寒さが残る時期ではありますが、少しずつ日が長くなっているのを感じたり、暖かい日があったりすると、ふと誰かのことを思い出したりしませんか。
「あの人はどうしているかな」「今年は会いに行けるかな」「元気で過ごしているかな」
今すぐ届くメールやSNSも便利だけれど、相手の喜ぶ顔を想像しながら文字を綴り、ポストに投函して、ゆっくりと返事を待つ。そんな時差のある「往復書簡」のやりとりもまたワクワクしたり味わいがあるものですよね。
今週は、そんな手紙や往復書簡がテーマの絵本・詩・物語を集めてみました。
2026年2月2日から2月8日までの絵本「今日の一冊」をご紹介
2月2日 春夏秋冬、めぐる季節の中にかくれた素敵な物語
月曜日は『はるとあき』
「はる」が目覚めれば、寒さはだんだん和らいで。
「ふゆ」のところへ行って交代します。
「あら いちねんぶりね はるが きたわ」
何か月かして、日が長くなる頃、今度は「なつ」がやって来る。そうして交代すれば、今度は季節が夏になるのです。
ある時、なつは言います。
「ようし あきが くるまで がんばるぞ」
あき?
はるは気が付きます。
そういえば、私はあきに会ったことがない。
いったいどんな子なのでしょう。
ふゆが言う「あき」と、なつが言う「あき」は全く違うから想像もつかない。
そうだ、手紙を書こう。
そこから始まるはるとあきの往復書簡、いい思いつきです。
顔も知らない、話したこともない相手。
あなただったら、どんなことを書くのでしょうね?
ふたりは少しずつ、自分のことを話します。
話しながら、相手のことを少しずつ知っていきます。
ふたりの想像の世界はどんどん広がります。
なんて素敵なやりとりでしょう。
(続きを読む>>)
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
読者の声より
読み聞かせで初めて出会って以来、一番のお気に入りの絵本です。出会うことができないはるとあき。お互いの手紙やなつとふゆの言葉から相手の姿を想像します。2人はよく似ていて、同じものを、全く別の視点で見ているらしい。
そこが、娘とその友達の姿に重なりました。
季節がはっきりしている日本らしさもよくて、娘とそのお友達の2人にこの本を贈りました。海外に行ってしまうお友達がこの本を読むときに、
日本や娘のことを思い出してくれるといいな。
(ろーれるさん 40代・ママ 女の子6歳)
2月3日 一度読んだら忘れられない、青おにからの手紙
火曜日は『泣いた赤おに』
やさしく素直な、若い赤おにが山に一人で住んでいました。
赤おには、鬼たちのために良いことをしたい、さらに出来ることなら人間たちの仲間になって仲良く暮らしていきたいと思っていました。そこである日赤おには、自分の家の戸口の前に、木のたてふだを立て、人間が遊びに来てくれるように誘いました。
山のふもとの村人たちは、赤おにのたてふだに興味津々ではありましたが、だましてとって喰うつもりでは、と警戒し、誰も遊びに来てくれませんでした。
赤おにの家を訪ねてきた仲間の青おには、話を聞いて赤おにに、自分がふもとの村で暴れるから自分をやっつけろ、そうすれば人間は安心して赤おにと仲良くしてくれるだろう、と提案します。
かくして、人間の家に入り込んで暴れる青おにを赤おにがやっつけ、村人たちは赤おにに心を開くようになるのですが、赤おにはそれとひきかえに、かけがえのないものを失ってしまうのです。
とても有名なおはなしで、他にも絵が違う作品が数多く出ています。
この作品では、絵本化にあたり原文を省略せずに使用しており、実に本格的な絵本に仕上がっています。
愛蔵版として本棚におかれることをおすすめします。
(金柿秀幸 絵本ナビ事務局長)
読者の声より
誰もが知っているお話だけにむしろ手にするのが遅くなった絵本ですが、表紙の赤おにの表情に心ひかれて手にしてみたら…、そこには発見があり、感動がありました。
寂しがり屋で人と仲良くなりたい赤おにと、それを助けた青おにの友情のお話。
あらすじは知っているのですが、この絵本のお話はとても詳細で奥が深く思えました。
浜田廣介さんの作品をそのまま掲載したとのこと。(私が知っていたのは、再話か簡略版だったのでしょう。)
この作品の中では、赤おにの心が繊細に描かれていますし、村人たちの交流もつぶさに描かれていて心に溶け込んでくるような気がします。
そして、青おにの書きのこしていった手紙。カタカナ文で昔ながらの感じの文体ですが、赤おにに対する思いやりがとても良く伝わってきます。
ここまで書かなくても充分かと思うのですが、ここまで書いているからこそ素晴らしいのだと思いなおしました。(今の子どもたちは絵文字一つで伝えてしまおうとするのですから。)
改めて読んで良かったと思います。
梶山さんの絵も、鬼をここまで人間的に描き、話の詳細を忠実に伝えてくれていながら、梶山さんらしさを忘れない、心温まるものでした。
このお話をすでに知っている人たちに、お薦めします。
(ヒラPさん 50代・パパ 男の子13歳)
2月4日 祖母と孫のあたたかな手紙のやりとり
水曜日は『おてがみであいましょう』
生まれた時からずっと一緒に暮らしていたマルちゃんとおばあちゃん。けれど、引っ越しして今ははなればなれ。そんなマルちゃんの家に届いたのは、おばあちゃんが送ってくれたまっ赤なりんご。おかあさんは、さっそくマルちゃんの大好物のりんごパイをつくってくれます。
「おばあちゃんといっしょに、おしゃべりしながら たべたかったな」
そこでマルちゃんは、おばあちゃんにお手紙を書くことにしました。一緒に食べているところを想像しながら描いたのは、おおきなりんごパイの絵。すると今度は、おばあちゃんからの素敵なお返事。ちぎり絵で描いたりんごパイがひと切れが描かれていたのです! こうして、マルちゃんとおばあちゃんの絵手紙の交換がはじまります。次にマルちゃんが描いたのは……?
(続きを読む>>)
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
読者の声より
引っ越しをして、おばあちゃんと離れてしまったくまのマルちゃん。
おばあちゃんが送ってくれた、りんごのお礼を言いたくて、手紙を書くことにしたマルちゃん。
それから、マルちゃんとおばあちゃんの文通が始まります。
郵便配達のおじさんが来てくれるのを、まだかまだかと待っていた時間。郵便の束の中に、自分宛の手紙を見つけた時の喜び。
子どもの頃のそんな情景を思い出し、私もマルちゃんと一緒に、ワクワクしながら、おばあちゃんからの返事を待ちました。
そのおばあちゃんからの返事のちぎり絵の素敵なことといったら!
返事を書いている時の、おばあちゃんの幸せそうな笑顔を思い浮かべて、こちらまで幸せな気持ちになりました。
心のこもったお手紙をいただくと、ほんとうに、温かく幸せな気持ちになります。
今はメールやラインでのやりとりが主流ですが、やっぱり手紙には、独特の良さがありますね。
時間をかけて紡がれた絵や言葉にのせて、幸せを運んできてくれるお手紙。
寂しかったマルちゃんも笑顔を取り戻し、友達もできました。
これからもずっと、おばあちゃんとの、楽しいお手紙のやりとりが続くことでしょう。
今度はどんな返事が届くのかな?
マルちゃんと一緒に、楽しみに待っています!
(あさみーこさん 50代・その他の方)
2月5日 遠くに引っ越しても手紙で心が繋がって…
木曜日は『あららのはたけ』
横浜から山口に引っ越すことになった、小学4年生のえり。ある日、じいちゃんのすすめで、じぶんだけのちいさな畑をはじめることになりました。
そこで出会ったのは、ふまれても飄々と生きる雑草たちや、ももの木のうえから細かな毛を飛ばしてくる〈もものけむし〉、台風のまえの巣づくりで手ぬきをするクモ……都会から地方にやってきた少女の、みずみずしい視点でとらえた自然のすがたを手紙にして、横浜にくらす親友のエミへ送ります。
畑で見聞きしたこと、あたらしい生活のことに加えて、手紙の内容は、横浜の小学校で不登校になってしまった、ふたりの幼なじみ・けんちゃんのことに。部屋にこもってしまったけんちゃんに、ふたりができることとは……。
ふたりの少女の手紙のやりとりをとおして、自然のふしぎと、いじめをとりまく子どもたちの心の動きを繊細に描いた作品です。
読者の声より
えりとエミの文通が元になったお話。
交互に近況報告の形で書かれている。
内容は、とりとめのないこと、田舎の畑で育てた作物のこと、家族のこと、そしてある1人のクラスメイト、けんちゃんのこと。
語り口はあくまで、四年生の女の子。わかりやすく、時に乱暴で雑に、少し複雑な心模様も伺えます。
個人的には、時々出てくる、エミのおじいちゃんのセリフが大好きです。
どんなことがあっても、大事な作物が動物に荒らされても「そうきたか」と。
そしてもう一つ。雑草は踏まれても踏まれてもまた立ち上がると言われているが、実はそうではなく、ここはダメだと思ったら別の場所で立ち上がるということ。同じ場所で頑張らなくてもいいんだと言うこと。
軽いようでじんわり重い。素敵な一冊でした。
(あさのこさん 30代・ママ 女の子8歳、男の子6歳)
2月6日 手紙がつなぐ、知らない誰かと出会う喜び
金曜日は『ぼくはアフリカにすむキリンといいます』
手紙を出したり受け取ったりする楽しさや、新しい誰かとの出会いの喜びが伝わるお話。キリンがペンギンのことを想像して真似する姿はユーモアたっぷり。地平線のこちらから向こうまでなが―い距離を行き来する手紙のことを想像したり、手紙をやりとりするそれぞれの気持ちを想像しながらゆったりとした気持ちで楽しみたい一冊。
読者の声より
このシリーズをきっかけに、1年生の息子は自分で児童書を読むようになりました。それまでは1人で読むのは絵本ばかり、児童書は私が読み聞かせしていました。とても読みやすく分かり易いです。
退屈なキリンが、地平線の向こうにいる見知らぬ誰かに手紙を出します。お互いに相手の姿を知らぬキリンとペンギンの手紙のやり取りが楽しい。また、ペンギンとクジラ先生、キリンとペリカンのやり取りも面白いです。
一生懸命想像してキリンが真似をしたペンギンの姿に子ども達は大うけでした。
このシリーズは全4作、お友達って良いな、と思えるのが第1作目のこの作品です。お勧めします。
(ぞうちんくまちんさん 30代・ママ 男の子7歳、男の子5歳)
手紙がつなぐ友情物語シリーズ「クジラ海のお話」は、現在7巻まで刊行中!
2月7日 こだまのように響き合う詩の往復書簡
土曜日は『すきが いっぱい』(2025年12月刊)
谷川俊太郎さんと 西 加奈子さんによる詩の往復書簡
・谷川俊太郎さんと西 加奈子さんが交互に書いた26篇の詩
・あとがきと挿画は西 加奈子さんの書きおろし
・子どもも大人も一緒に楽しめる詩集
詩人・谷川俊太郎さんと、作家・西 加奈子さんが交互に詩を贈り合う‥‥‥
保育雑誌PriPriに連載されていた「詩のこだま」が1冊になりました。
言葉に初めて触れる子どもたちが声に出して楽しみ、大人たちの心に響く、ということを
テーマにして2022年5月号より始まり、2024年8月号まで2年以上にわたってやり取りは続きました。
2024年11月にご逝去された谷川さんが子どもに向けて呼びかけた最後の詩「すき」。
そのお返事として「すきが いっぱい」と、西さんがこの本のために書き下ろし、お二人の「すき」が重なって、詩集のタイトルとなりました。
西さんの挿画とともに、ひろがっていく詩の世界をお楽しみください。
2月8日 手紙でつながるふたりの夢と挑戦のゆくえ
北澤平祐さんがイラストと文章を手がけた『ユニコーンレターストーリー』は、令和7年度 第41回坪田譲治文学賞を受賞されました!(2026年1月30日発表)誠におめでとうございます!
日曜日は『ユニコーンレターストーリー』
――――――
海を越え、手紙でつながるふたりの夢と挑戦のゆくえ。
ことばはやさしい嘘をつき、絵は真実を語る……かつてない青春小説!
――――――
おさななじみのハルカとミチオ。
10歳でミチオがアメリカへ引っ越し、ふたりの文通がはじまった。
日米の学校や文化の違い、部活やバンド活動のこと、将来への迷い、友人や家族との問題。
手紙だからこそ伝えられるさまざまな思いを共有しながら、やがてふたりはあるプロジェクトに挑戦することに……。
イラストと文章のスリリングな相互作用。大人気イラストレーターが細部までこだわりぬいた、やさしくて力強い“唯一無二”の物語。
【著者プロフィール】
北澤平祐●きたざわ・へいすけ
イラストレーター。東京都在住。アメリカに 16 年間暮らし、帰国後、イラストレーターとしての活動を開始。書籍装画、広告、商品パッケージなど国内外の幅広い分野でイラストを手がける。著書に『ぼくとねこのすれちがい日記』『ルッコラのちいさなさがしものやさん』『ひげがながすぎるねこ』などがある。
いかがでしたか。
「往復書簡」の温かなやりとりを読みながら、だれかの顔が思い浮かんだら、ペンと紙を手にとって文字を綴ってみませんか。
秋山 朋恵(絵本ナビ副編集長)
|
この記事が気に入ったらいいね!しよう ※最近の情報をお届けします |
絵本・本・よみきかせ 















あそび
グッズ・ギフト