【2022年版】小学4年生の読書感想文におすすめの本5選!
お出かけに、遊びに、学びに……行動範囲が広がる夏には、子どもたちにたくさんの楽しい体験をしてほしいもの。そのひとつとして、時間がたっぷりある夏休みに体験してほしいのが、お気に入りの本との出会い。
「君だけの一冊にきっと出会える!」2022年の夏はこちらをキーワードに、新刊を中心とした旬のおすすめ本を、学年別にご紹介していきます。読むきっかけが読書感想文をはじめとした宿題のためだとしても、自分で本を探してみること、そして読んでみることにチャレンジしたら、きっと自分だけのお気に入りの一冊に出会えるはず。夏休みの読書、ぜひ楽しんでくださいね。
- こちらで紹介している「読書感想文におすすめの本」の選書のポイントは、
「テーマがはっきりしていて分かりやすいもの」
「読みやすいもの」
「表紙やタイトルで、子どもたちに読んでみたいという気持ちを起こさせるもの」
「読み終えた時に心に残る何かを感じとれるもの」
の4点を重視して選書しています。
- 子どもたちが本を選びやすいように、小学4年生向けとして5冊紹介させていただいていますが、目の前のお子さんが無理なく読めそうなもの、逆に簡単すぎないものを選ぶことが一番大切です。小学4年生向けのおすすめ作品でピンとくるものがなかった時には、小学3年生向けや小学5年生向けなど、前後の学年へのおすすめ作品もチェックされることをおすすめします。
小学4年生の夏の読書と読書感想文におすすめの本
『あっちもこっちもこの世はもれなく』(PHP研究所)
なにか自分の外見のことや性格のことで悩んでいることはありますか?
四年生の公太は背が低いのが大きな悩み。一方、仲良しの希来良(きらり)は背が高く、手も足も長くて、公太にとってうらやましい存在です。また、視力が悪いことで悩んでいるクラスメイトの筑井(ちい)さんは、ゲームやスマホなどをし放題なのに視力がいいお兄ちゃんを「不公平だ」と言います。そして、希来良(きらり)は希来良で、実は公太のことをうらやましいと思っていることが判明して‥‥‥。
悩みや劣等感を持っているのは自分だけではないこと、悩みや劣等感は人それぞれ何を大事に考えているかによって違うこと、劣等感があっても跳ねのけている人もいること、など、「不公平」についてさまざま気づきを与えてくれるお話です。
※127ページの読み物です。1ページに文字が詰まっていないので、とても読みやすくすらすら読み進められるでしょう。
【感想を書くヒント・子どもたちへの問いかけ】
- お話の中で登場人物に共感したところはあった? 共感したところがあったらそれはどうしてかを含めて書いてみよう。
- 登場人物のセリフの中で、心に残ったことばがあったら、その理由とともに書いてみよう。
- 誰かと自分をくらべて、不公平だと思ったことはある? それはどんなこと?
- 不公平だと思っていることや、悩みについて、読む前と読んだ後で、はじめて気づいたことや、これまでと考えが変わったところはあった? あれば、そのあたりを具体的に書いてみよう。
不公平さはだれにでも公平にあるの?
背が高い、低い、視力がいい、悪いなど体のこと、または外見的な容姿のこと‥‥‥自分にはどうすることもできない、努力だけではなかなか変えるのが難しいような悩みはありますか?
四年生の公太は背が低いのが大きな悩み。並ぶ時にはいつも一番前。「前ならえ」では両手をこしにあてるポーズしかしたことがありません。仲良しの希来良(きらり)は背が高く、手も足も長くて、公太にとってうらやましい存在です。一緒に入会申し込みへ行ったジュニアのバレーボールクラブでも、監督は希来良にばかり注目して、公太は嫉妬してしまいます。一方、同じクラスの筑井(ちい)さんは、視力が悪いのが悩み。メガネをかけたくなくて目に良いことをいろいろしているのに、視力が下がってしまい悩んでいます。そしてゲームやスマホなどし放題なのに視力のいいお兄ちゃんのことを考えて「不公平だよ」とつぶやきます。そんな筑井さんに、視力の悩みなんて背の悩みと比べたらたいしたことじゃない、視力と背では不公平のレベルが違う! と思ってしまう公太。その後、筑井さんがどれほど悩んでいるかを聞いたり、保健室の先生や、バレーボールのコーチ、お母さんの話を聞いて、人それぞれに違った悩みや劣等感があることを知っていきます。さらに、劣等感なんて持ったことがないと思っていた希来良から「公平がうらやましい」なんて言葉が飛び出して。いったいどういうこと!?
公太の目線を通して、悩みや劣等感を持っているのは自分だけではないこと、そしてその中身は、人それぞれ何を大事に考えているかによって違うこと、劣等感があっても跳ねのけている人もいること‥‥‥など多くの気づきがあるでしょう。
日本児童文芸家協会賞、野間児童文芸賞受賞等、数々の受賞歴があり、課題図書にも作品が多く選ばれている児童文学作家、いとうみくさんによる子どもたちの思いに寄り添う温かな物語。小学校低学年から中高生まで幅広く子どもたちの気持ちを丁寧に見つめ続けている、いとうみくさんからのエールが感じられます。
「不公平さは、だれにでも公平にある」
自分に劣等感を抱いたり、だれかと比べて不公平だと思ったりする気持ちをなくすことはなかなか難しく、その悩みに大きくとらわれてしまうこともあるでしょう。でも視点を変えたり違う考え方を知ることで、少しずつ前に進むことができる。そんな風に子どもたちの背中をそっと押してくれる心強い物語です。
(秋山朋恵 絵本ナビ編集部)
『体育がある』(文研出版)
主人公の亀山あこは体育がきらい。花園小の四年一組に転校してくるまでは、体育ができなくてもみんな優しく見守ってくれたのに、新しい小学校では体育の先生も厳しいばかりか、家ではママが体育鬼コーチに変身。とび箱、さかあがり、五十メートル走、遠泳、マット運動、運動会‥‥‥と、あこに試練がつぎつぎに襲いかかりますが、それに対するママとの必死の練習が、あこはつらくて仕方がありません。そんな中、泊まりに来てくれたばあばが、ママに、あこの気持ちをもっと考えるように、と叱ってくれて‥‥‥。
体育が苦手な人には、あこの気持ちがとっても分かる場面がたくさんあるでしょう(大人の私でも小学生の頃の気持ちを思い出して、ものすごく共感してしまいました)。あこが苦手な体育に対して自分自身でどう立ち向かっていったのか、またママとの関係の変化にも注目してみてくださいね。
※152ページの読み物です。文章の下のところに可愛くてユーモアたっぷりの線画のイラストが入っているので楽しく読み進められる一冊です。肩の力を抜いて友だちのおしゃべりを聞くような気持ちで読んでみてくださいね。
【感想を書くヒント・子どもたちへの問いかけ】
(あこちゃんと同じように体育が嫌いな人へ)
- あこちゃんの体育が嫌いな様子、気持ちに一番共感したところはどこだった? あればそれを書いてみよう。
- あこちゃんに対して、すごい! と思ったところがあったら書いてみよう。
(体育が好きな人へ)
- お話を読んで、体育が嫌いだったり苦手な子の気持ちではじめて知ったことはあった?
- 体育以外でも苦手なことがあったらそのことに対する気持ちを書いてみよう。苦手に対して頑張れたことや頑張れなかったことを書いてみると感想文が膨らむでしょう。
『ぼくらは少年鑑定団! 発見! 謎の縄文土器』(講談社)
春休みのこと、もうすぐ五年生になる究(きわむ)、究の姉のかおり(もうすぐ六年生)、究の妹の愛(もうすぐ二年生)の兄弟は、隣に引っ越してきた玲子(もうすぐ五年生)、弟の大作(もうすぐ三年生)を連れて町探検に。究の家で飼っているゴールデンリトリバーのトレジャと、究の友だちの博士(通称ハカセ)も加わり、歴史に詳しいかおりの説明を元に「空の青町」の名所を回ります。
その途中で、骨董品や古美術のお店、古珍堂(こちんどう)に立ち寄った子どもたちは、店主の中山さんのアドバイスのもと、お店にあるものの価値を見極める「小学生お宝鑑定大会」に挑戦! さらにお店で縄文土器のかけらを見つけ、鑑定という作業に興味を持ち、「少年鑑定団」を結成することにします。その後、この「少年鑑定団」が発見したものとは‥‥‥!?
「鑑定」とは、知識と経験、調査や研究によって、そのものの価値を見極める作業。「鑑定」の面白さと歴史を紐解く遺物や遺跡を発見し、昔の暮らしを想像する面白さが伝わる物語。お話を読んで、「鑑定」や「歴史」に興味を持ったら、身近にある遺跡などを調べてみませんか。
※143ページの読み物です。字が大きめなので読み進めやすいでしょう。巻末には「縄文時代まめちしき」や「縄文遺跡MAP」がついているので、お話を読んだ後、縄文時代についてさらに知識を深めることができます。
【感想を書くヒント・子どもたちへの問いかけ】
- この本を読んで初めて知ったことはあった? あったら、それを書いてみよう。
- それぞれに個性的な「少年鑑定団」のメンバー。だれのどんな考えや行動がすごいと思った? また自分に近い性格の人は誰だった?
- 縄文時代に関係する遺物や遺跡、自分だったらそこからどんな暮らしや人々の気持ちを想像する?
- 自分が大切にしているものや、家族や友達が大切にしているものについて考えた時に、ものの価値の違いが分かるエピソードなどがあれば、思い出して書いてみよう。
ものの価値を見極める「鑑定」を知ったり、歴史への興味の入り口に
縄文時代がよくわかる巻末コラムと、全国にある縄文遺跡のMAPつき。「北海道・北東北の縄文遺跡群」が世界遺産に登録されたいま、おはなしを読んで学べる一冊です。
ある朝、究(きわむ)のとなりに、工藤令子(くどうれいこ)一家が引っ越してきた。
令子と弟の大作をつれて空ノ青町を案内することになった、究、かおり、愛のきょうだいと飼い犬のトレジャ。道中、究の友人である博士(ハカセ)に会い、一同は古珍堂(こちんどう)という骨とう品店に寄ることに。店主の中山さんにそそのかされて、お店の中にある骨とう品を眺めるうちに、いろいろなものの中からお宝や「本当に価値のあるもの」を見つけだす「少年鑑定団」をはじめることに!
『本おじさんのまちかど図書館』(フレーベル館)
「ぴったりの日に、ぴったりの人に、ぴったりの本を」
インドの大きな街で小学校に通う9歳の少女ヤズミンの楽しみは、学校帰りに、<まちかど図書館>に通うこと。それは、図書館を開いている本おじさんが、いつもヤズミンにぴったりと思う本を一冊選んでくれるから。そのおかげで図書館に通い始めてからヤズミンが読んだ本は四百冊を超えました。
しかし突然、本おじさんは<まちかど図書館>をつづけられなくなってしまいます。市から通知が来て、高いお金がかかる許可証を市に申請しなければいけなくなったと言うのです。大好きな図書館がなくなってしまうなんて、とショックを受けるヤズミン。
インドの街ではちょうど選挙が行われる時期で、ヤズミンは本おじさんの図書館の問題と選挙を頭の中で結びつけ、<まちかど図書館>を再開させるために、友だちや町の人たちひとりひとりに働きかけます。その行動する力を与えてくれたのは他でもない、本おじさんが教えてくれた一冊の本でした。
インドの学校の様子や、市場の様子、食事やおやつ(おかし)、選挙の仕組みなど、インドの文化を知るのにも楽しいお話。日本との違いを探してみながら読むのも楽しいでしょう。
※152ページの読み物です。31の章立てである日の出来事が短く述べられていくので、読みやすいでしょう。
【感想を書くヒント・子どもたちへの問いかけ】
- お話の中で、これはおかしい(間違っている)! と感じたことはあった? なぜおかしいと思った?
- 印象に残った登場人物や、その人のことばなどがあったら抜き出してみよう。
- お話に出てくるキーワード「選挙のなかみ」というのが、どんなことを指しているか分かったことがあったら、それについて書いてみよう。
- 自分の身近な問題を解決するためにヤズミンが起こした行動について、どう思った?
- ヤズミンに力をくれたハトの物語のように、これまで何かの本で励まされたり、考えが変わったりしたことはある? あればそれを書いてみよう。
9歳の女の子が大切なもののために社会を動かす! 勇気と希望にみちたストーリー
みどころ
ぴったりの日に、ぴったりの人に、ぴったりの本を。それが、本おじさんのモットー。
広いインドのちいさな街角、そこに、本おじさんの「まちかど図書館」はあります。板の上に積まれた本と、寄付のお金を入れるための小さなブリキ缶。そして色あせた看板には、こんな言葉。
「本の貸しだし無料
一さつ返して
一さつ借りよう
読もう 読もう もっともっと読もう!」
本を読むことが大好きな女の子ヤズミンは、まちかど図書館でイチバンの常連さん。八歳になったその時から、本おじさんが勧めてくれる「ぴったりの日のぴったりな本」を一日一冊読み進め、なんとその数四百冊!
「最高!
インドで、このまちかど図書館よりいい図書館なんてある?」
ところが、そんなまちかど図書館が大ピンチに! 市の決定により、許可証をとらなければ図書館をひらけなくなってしまったのです。でも、許可証をとるためのお金はなくて……。
「一日一さつ本を読んできて、四百二日。今日は読む本のないはじめての日になった」
ヤズミンはまちかど図書館を守るために何かできないかと、頭を悩ませます。
町中にあふれる、市長選の選挙ポスター。だれかが市長に宛てて書いたという、まちかど図書館に関する苦情の手紙。そして、本おじさんが選んでくれた、心から離れないインドの童話。悩む少女を取り巻くそれらがひとつに絡み合い、やがて、ヤズミンはおどろきのアイデアを思いつきます。
読もう、読もう、もっともっと読もう! なんて楽しくて、エネルギーにあふれた言葉なんでしょう! 本を心から愛する少女が、自分の正しいと思うことのために立ちあがり、おとなやその社会に堂々と立ち向かう。その姿に心熱くなる一冊です。
なんで、子どもに選挙権がないの? 映画俳優に投票することに、問題なんてある? おとなは、当選したら約束をやぶるの?
なんにでも興味を持ち、するどい観察力でおとなたちと社会とを見つめる、ヤズミン。彼女がいだくおとな社会に対する素朴な疑問は、あどけなさがありながらも、痛烈で、痛快です。そんなヤズミンがときに九歳らしく悩み、怯えながらも、愛するもののために戦う姿を読めば、誰しもいつの間にか、拳に力を入れて彼女のことを応援しているはず。
また、九歳の少女の視点から描かれる、日本とはなにもかもが違うインド文化もみどころです。山盛りの洋服の前、石炭を使ったアイロンでシワを伸ばすアイロン屋。グァバやバナナを山盛りにして売る、果物売り。クラクションを鳴らしまくるスクールバスに、道路をゆきかう三輪タクシー。そして学校のお昼休み、ガジュマルの木の下で食べるお弁当。細かな描写のひとつひとつにも異国情緒があふれ、インドの下町、その雑然としていておおらかな空気が、行間から匂い立つようです。
まちかど図書館を守るために奮闘するヤズミンでしたが、どんな道にも困難はつきもの。そんなヤズミンに力を与えてくれるのは、やっぱり、本おじさんの本でした。
「あのとき、本おじさんは、ぴったりの日にぴったりの本だと教えてくれた。
今日が、その日だ。これが、その本だ。」
社会と自分との関係を見つめ、できることを考えて行動を起こす。そんなヤズミンの姿勢に、これからの時代に大切な生き方についてのメッセージが込められた物語です。
(堀井拓馬 小説家)
『坂の上のパン屋さん』(文研出版)
小学四年生の三月に家族で神戸に引っ越してきた翔太。転校してきて四カ月たった夏休み。遊ぶ友だちもまだできず、みんなが行っているサッカーや学習塾にもやる気がおきない。2歳違いの兄は、引っ越し後も剣道クラブに入っていて忙しそうだ。そんな翔太の一番の興味は、おいしいパンのこと。夏休みの一日目、神戸の町へ散歩に出かけると、『食パントウジロウ』というお店を見つける。そこは美味しい食パンで有名な地元の人気店だった。その日からなんとなく『食パントウジロウ』に足が向くようになった翔太は、ある朝、おじいさんと青年がバスタブの中に大量の粉と液体を入れ、手で揉むような作業をしているのを見かけ、パンづくりに興味が高まる。そのうち、パン作りを手伝わせてもらえることになり‥‥‥。
翔太が、自分の好きなものから、やりたいことを見つけていく物語。その思いを大切に受け取る、パン職人のトウジロウさんや、アルバイトの青年との交流が温かく描かれます。また機械でいくらでも美味しいパンが作れる時代に、あえて手間をかけて手ごねと窯焼きで焼くことにこだわる、トウジロウさんのパン作りへの思いも翔太に大きな影響を与えます。
※ページ数は160ページ。文字量も多めでしっかり読み応えのあるお話です。小学五、六年生にもおすすめしたい作品なので、ちょっと難しいものに挑戦してみようという四年生におすすめです。『食パントウジロウ』で丁寧に作られるパンがとっても美味しそうで、焼き立てのパンの香りが漂ってくるよう♪
【感想を書くヒント・子どもたちへの問いかけ】
- ちょっとした興味から、トウジロウさんからパンづくりを教えてもらえるようになった翔太。 こんな風に行動できる? できない? なにがそんな風に翔太を行動させたのだろう?
- 機械を使わず、手間のかかる手ごねや窯焼きにこだわるトウジロウさんのパンづくりをどう思った?
- 翔太がお店に通ってくれるようになって、トウジロウさんの方はどんな気持ちだったか想像してみよう。
- 自分もこんなことがやってみたい、教えてもらえたらいいな、ということがあったら書いてみよう。
いかがでしたか。
気になった作品を手に、読書を楽しんでみてくださいね。
秋山朋恵(あきやま ともえ)
絵本ナビ 副編集長・児童書主担当
書店の本部児童書仕入れ担当を経て、私立和光小学校の図書室で8年間勤務。現在は絵本ナビ児童書主担当として、ロングセラーから新刊までさまざまな切り口で児童書を紹介。子どもたちが本に苦手意識を持たずに、まず本って楽しい!と感じられるように、子どもたち目線で本を選ぶことを1番大切にしている。著書に「つぎ、なにをよむ?」シリーズ(全3冊)(偕成社)がある。
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