【保育士がっちょに聞く!】保育園で劇にしやすい絵本~年少・年中児編(3歳、4歳、5歳)~
現役保育士で絵本専門士の大河原悠哉(がっちょ)です。私は公立保育士・幼稚園教諭を計10年経験したのち、現在は株式会社SHUHARIの認可保育園元気キッズにて勤務しています。また、子育て支援のイベントを主催・運営したり、保護者向け・保育士向けの絵本講座をしています。子どもとの絵本エピソードや活用方法についてお話しします。
絵本から「劇遊び」へ
今回は「劇遊び」をテーマにし、絵本の紹介や「劇遊び」のエピソードをお伝えしていきたいと思います。
きっと保育園や幼稚園、こども園さんなどで、発表会やクラスの遊びの中で「劇遊び」が行われているかと思います。私の想いとしては、絵本や紙芝居、生活などを通して、自然と劇遊びになったり、「やりたい」と思えたりしたことを子どもたちと一緒になって楽しんでいければと思って保育をしています。そして、私自身「劇遊び」は好きだけど、発表会となると見栄えを気にしてしまい、どのように教えれば良いのか迷うこともあり、苦手意識がありました。(今は、ありのままを見せられたら良いと思っています)そんなときに助けてもらった子どもとのエピソードや教材をご紹介します。
私の場合、絵本をきっかけに「劇遊び」がスタートすることが多いのですが、以前の記事で1つのお話でも様々な絵本があることをお話ししました。
この絵本と決めず、様々な絵本を読む中で子どもたちのイメージを作ったり、引き出したりしていけるように心掛けています。絵本によっては「よい絵本」と言われる絵本もありますが、子どもからすれば自分の好きな絵本が「よい絵本」なのです。こちらが「よい絵本」と決め付けず、子どもに寄り添いながら、個々に合った絵本をもちいて「劇遊び」に発展していけるようにしたいですね。
【1】気付いたら子どもたちで配役を決めていた『おおきなかぶ』
『おおきなかぶ』は絵本や「劇遊び」でも定番のお話ではないでしょうか?
子どもたちもストーリー展開を把握している子が多く、繰り返しが楽しいお話なので、工作で簡単に作ったかぶ(新聞紙などを白い袋に入れて画用紙などで葉っぱを作って完成)を作れば「劇遊び」になっていきます。絵本によって、かぶを引っ張るときの掛け声が違ったり、かぶの色が違ったりします。色々な『おおきなかぶ』を読んでいくと、世界観が広がって楽しいと感じます。
先日、誕生会がありました。私の園では職員の出し物があります。その際に、誕生児に手伝ってもらって即興劇を披露しました。私の中では、「即興劇だから、登場人物など関係なく楽しめれば良い」と考えていたので、子どもたちには配役などせず、「名前を呼ぶから抜くのを手伝いにきてね。」とだけ伝えました。私がおじいさん役とナレーターを同時に進行しながら「かぶを抜くのを手伝っておくれ!」と話すと「はーい!私が手伝うわ!」とおばあさん役の男の子がでてきました。その後、配役は絵本通りでしたが、登場してくる順番は滅茶苦茶。ですが、それに誰も文句を言わず、見ている子どもたちも職員も大笑い!正直1番びっくりしたのは、私でした。だって配役などしていないのですから。後から話を聞くと、私が進行しているうちに子どもたちだけで配役していたとのことでした。知っている話であれば、面白い即興劇ができるんだな~と子どもが持っている力を感じた瞬間でした。
【2】絵本や劇遊びでも定番『てぶくろ』。子どもの発想力は面白い
大きくなるてぶくろ
雪の上に落ちていた手袋にネズミが住みこみました。そこへ、カエルやウサギやキツネが次つぎやってきて、とうとう手袋ははじけそう……。個性ある動物の表情が特にすばらしい傑作です。
こちらも絵本や「劇遊び」でも定番の1つでしょうか。
『てぶくろ』も繰り返しが楽しいお話です。繰り返しが楽しいお話は、子どもたちだけでも「劇遊び」に発展していくので面白いですね。
福音館書店の『てぶくろ』を読んだ時のことです。自然と『てぶくろ』の「劇遊び」が始まって、楽しそうに遊んでいたのですが、子どもたちが不思議なことをしていました。動物が1匹入るたびに、てぶくろ(てぶくろに見立てた大きな布)に棒状にした新聞紙をつけたり、画用紙を張り付けたり。何をしているのか尋ねてみると、「てぶくろを大きくしているの」と。不思議そうな顔をしていた私を見兼ねて、一人の子どもが絵本を持ってきてくれました。「これだよ!」よく見てみると、動物たちが1匹入るたびにてぶくろが変化しているのです。はしごが付いたり、窓が付いたり。子どもたちはこんな細かいところまで見ているのかと驚かされたのと同時に、絵本の面白さを教えてもらった瞬間でした。子どもの目の付け所とそれを表現しようとする創造力はすごいですね!
【3】『三びきのやぎのがらがらどん』CDを使って劇遊び
山の草をたべて太ろうとする3匹のヤギと、谷川でまちうけるトロル(おに)との対決の物語。物語の構成、リズム、さらに北欧の自然を見事に再現したブラウンの絵、完璧な昔話絵本です。
こちらも「劇遊び」などには定番のお話です。
平均台などを用意すれば、橋を渡るやぎたちがたくさん現れます。「劇遊び」の中で、平均台を渡れるようになったり、渡るのが上手になったりと、身体的な成長が見られるのも保育者としては嬉しいですね。
最近は、このような考え方もできますが、昔は「劇遊び」を行うのに必死な時もありました。そんな時に出会ったのが、「劇遊び」CD。タイトルは少し変わりますが、音楽に合わせて「劇遊び」を行うことができます。「劇遊び」に苦手意識を持っている先生は、こういったCDを使って楽しむのも1つの手ではないでしょうか?私は「劇遊び」CDを使って「劇遊び」をし、少しずつ苦手意識がなくなっていきました。
『3びきのやぎとトロル』「劇遊び」CD
保育者の方へ
「劇遊び」までの流れや保育の仕方は様々です。保育者に苦手意識がある場合は、うまく教材などを使うことも一つの案かと思います。繰り返しのあるお話で劇遊びの楽しさを子どもたちと共有することも良いと思います。
また、子どもの声を聞くことで面白い「劇遊び」に発展していくことが多々ありますので、子どもたちの話をよく聞くことも大切ですね。個人的には、絵本を読んで自然とはじまる「劇遊び」が楽しいと感じます。子どもたちが自分たちで必要なものを作ったり、用意したり。それらを見守ったり手助けしたりしていくことで、子どもたちの世界観溢れる「劇遊び」になっていく気がします。様々な遊び方や実践方法があるかと思いますので、実践して楽しかった事例などありましたら、是非「感想&質問」アンケートでお答えください。お待ちしています。
大河原悠哉(がっちょ)
公立保育士・幼稚園教諭を計10年経験ののち退職。現在は、株式会社SHUHARIの認可保育園元気キッズにて勤務。 平成29年6月に独立行政法人国立青少年教育振興機構による「絵本専門士」を取得。子育て支援センターや図書館、本屋などでおはなし会や保育者・親子向けの絵本講座や研修を行っている。 現在は、保育士・ライター・子育て支援イベントの主催、運営・講師など様々な顔を持つ。 『【絵本専門士】がっちょの絵本ブログ』を運営。
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