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季節のおすすめ読み物

春に読むならどんな本? 小学5年生、6年生におすすめのお話10選

新しい学年を迎える春、新学期。小学5年生は、高学年の始まり、小学6年生は学校の最高学年としての1年間の始まりですね。勉強も忙しくなったり、友達との関係も深くなる一方で複雑になってきたり‥‥‥。とくに変化の大きい春は、さまざまな気持ちに揺れることも多いのではないでしょうか。

そんな小学5、6年生の春の新生活のおともに、主人公に共感しながら元気をもらったり、心地良く気分転換できるようなお話を集めてみました。3つのテーマに分けてご紹介します。
 

春に読むならどんな本?

春に出会う、さまざまな友達・新たな友情

新しい友達と出会ったり、ただのクラスメートだった誰かとの仲が深まるきっかけに恵まれる新学期。それまで知らなかった友達の良いところや性格を発見する物語は、そのまま周りにいる誰かのことをじっくり考えるきっかけにもなりそう。そして何といっても、新しく誰かと仲良くなっていく過程はワクワクするものですよね。

人気者×転校生×平凡なぼくが過ごす、かけがえのない1学期の物語

ぼくたちのリアル

学年で一番の人気者、「秋山リアル」。
スポーツも勉強も完璧で、ムードメーカー、おまけにイケメンで、だからとうぜん女子からもモテる。
そしてリアルは、ぼくの幼なじみでもある。

リアルと一緒にいるところを見られると、みんなの顔に「?」が浮かぶんだ。
なんだか、リアルの友だちとしてふさわしくないって思い知らされているみたいで、すごくみじめな気持ちになる。

なのに、5年生になってリアルと同じクラスになってしまったものだから、思わず「ゲッ!」

そこへ、リアルのことにやたらと首をつっこみたがる転校生まで加わって、なんだかこの夏はさわがしくなりそう……。

第56回講談社児童文学新人賞、第46回日本児童文芸家協会児童文芸新人賞受賞作。
誰もが認める学年一のスター、リアルを中心にした、三人の少年の友情と恋、そして死にまつわる物語です。

「ぼくたちのリアル」というこの作品のタイトル。
リアルとはもちろん、主人公のひとりであるリアルのことでしょう。
しかし同時に、このリアルは「現実」を意味しているのかもしれません。
悲しくても、怖くても、妬ましくても、向き合わざるを得ない「ぼくたちの現実」を。

完璧すぎる幼なじみのリアルを、いつのころからか避けていた「ぼく」ことアスカ。
幼いころのあだ名で呼ぶのはやめろと求める一方で、リアルにあだ名で呼ばれると、自分までがすごいやつになったような気がするといいます。

「リアルのことはそりゃ、好きだけどさ。きらいだったら、ほっとけばいいじゃん。好きだから、いろいろやっかいなんだよ」

そんなアスカを巻き込んでは、なぜかリアルのあとをついて回る、転校生の「川上サジ」。
日本人離れした美しい顔立ちのサジは、一見恥ずかしがり屋の引っ込み思案。
でも、転校二日目にして、クラスのカリスマであるリアルを家に誘う度胸の持ち主でもある、不思議な男子です。
実は、クラスの中でただリアルだけが知らない、ある秘密を持っていて──。

そして、すべての中心にいるリアルにもまた、根の深い秘密をがあったのです。
なぜ、リアルは不自然なほどに完璧でいるのか?
なぜ、おとなたちは完璧であるはずのリアルを心配するのか?

「いまから思えば、ぼくとリアルの前にサジが現れたのは、ちょっとした運命だったのかもしれない」

5年生の夏。
三人の少年は出会い、リアルを中心にしたそれぞれの想いが、彼らを少し大人に変える──。
(堀井拓馬  小説家)

読者の声より

テンポよく楽しく読めると同時に、読み応えがありました。

 リアルとは、璃在(りある)くん。スポーツも勉強もできて みんなの人気者で、人の気持ちを十分に思いやることもできるスゴイやつ。そんなリアルと幼なじみの地味キャラのぼく。そして、目立つくらいきれいな顔をして女の子っぽい転校生のサジ。彼ら小学校5年生男子の友情物語です。

 三人それぞれの気持ちや個性がすごく伝わってきました。クラスメイトや周りの大人もいい味をだしています。

 重いテーマも折り込まれていて、それらはもちろん簡単に解決したり乗り越えられるものではありません。悩みつつ、手探りしながら歩んでいくのが、きっと 人生なのでしょう。

 サジの最後の行動力はすごい。リアルのママやパパは頑張ってほしいです。リアルのためにも、自分たちのためにも。そして、題字やしおりひもの濃い青は、意味あるこだわりの色でステキです。第56回講談社児童文学新人賞受賞作品。作者がこれからどんな作品を書いていかれるのか、とっても楽しみです。
(なみ@えほんさん 50代・その他の方)

新学期に読みたい、登場人物の姿に勇気をもらえる1冊

ユウキ

“転勤都市”札幌の郊外に住むサッカー少年、ケイタ。小学校入学以来、彼の前には「ユウキ」という名の転校生が三度現れ、たくさんの思い出と痛みとを残してまた去っていった。六年生の新学期にやってきた四人目のユウキは、長い髪の女の子。彼女は不思議少女とあだ名され、いろいろな“奇跡”を起こして話題をさらうが、それがやがて彼女を孤立させることになっていく……。多感な子どもたちの心模様を生き生きと描ききった力作。

読者の声より

福音館から出ている『福音館創作童話シリーズ』の1冊で、
出版社からのおすすめ年齢は小学校上級以上となっています。

主人公のカズヤが小学校の6年生になった春から物語が始まります。
「ユウキ」というタイトル通り、主人公の周りにはいつも《ユウキ》という中のいい友達がいますが、
カズヤの通う学校は転校生が多く、カズヤの仲の良かった「ユウキ」は転校していっては、別の「ユウキ」が現われるという不思議な巡り合わせを持っています。
ところが、5年生の最後に去って行った「ユウキ」の代わりに6年生になってやってきた「ユウキ」は、それまでと違って女の子でした。

出だしはとても不思議な感じで始まりますが、実はものすごく思春期に入り始めた子供たちを等身大に描いていて、大きな事件があるわけではないのですが、同じ年頃の子どもたちにとって、とても身近なイメージを持つことができるのではないでしょうか?

ちなみに、私自身似たような面白い経験がありまして……。
学生時代から今まで、なぜか必ず周囲に≪ヒロミ≫という友だちがいますね~。(世代的に割とよくある名前ですけどね!)
そんなこともあり、私はこの物語にぐんぐんひきつけられました。

主人公はサッカー少年なので、サッカーの好きな男の子などは特に主人公の気持ちがわかるかも!?
(てんぐざるさん 40代・ママ 女の子16歳、女の子11歳)

正反対なふたりがお互いを理解するまでの、最低で最高な一週間

明日のランチはきみと

インドから転校してきた自信家のラビと、自信がなく消極的なジョー。同じクラスの1週間の出来事を、対極的な2人の少年の視点から綴ります。障害や人種などのマイノリティ立場による苦労や葛藤を描いた成長物語!

本の中に出てくる正反対なふたりの性格は……

ラビ

ぼくは、インドの小学校ではクラスで一番の成績だった。英語も大得意。

なのに、アメリカのクラスメイトや先生は、スターだったぼくを「できない生徒」あつかいするんだ。まったく、じょうだんじゃない!

ジョー

学校を楽しいと思ったことは一度もない。あ、ランチは特別だよ。

特技は「食べること」。ぼくの脳は騒音に弱いんだ。さわがしいのも、注目されるのもつらいのに、みんなには、そういうことをわかってもらえない…。

 

さまざまな悩みや問いにぶつかった時のヒントに……

心の中にあるさまざまな悩みや問い。うまく言葉にならない思いというのは成長していく過程でどんどん大きくなっていくものなのかもしれません。ひとりで考えているだけでは解決が難しいような事でも、人との関わりや誰かのことばで救われるようなことがある。そんな希望につながるような物語を紹介します。

生き生きとした緑あふれる自然と、人のつながりの温かさに包まれる植物ファンタジー。

ひみつの校庭

葉太たちの学校では、入学したときに「自分の木」が決められる。その観察ノートが終わったとき、秘密の庭への鍵が手渡される。庭には、不思議な植物たちと、不思議な人々が集まる場所だった。人間が成長して別れがあることの意味を、植物たちが教えてくれる。

読者の声より

全校生徒に自分担当の植物があるなんて面白いですね。各々の担当植物の観察ノートをつける学校だそうですよ。植物に興味が持てそうです。自分の担当の植物よりも他の植物が良かったーなんてこともたしかにありそうではあるけど。植物の観察は自由なようだけど、(きっと)説明はなかったのだろうし、その自由さに気付く生徒は少ないのでは?
観察ノートが二冊目になったとき、なんと…!
普通の学校のお話かと思いきやちょっとふしぎもある植物ファンタジーなお話でした。
(みちんさんさん 30代・ママ 女の子4歳、女の子2歳)

教科書には書かれていない、ほんとうのこと。ことばや詩と出会い、考えを巡らせよう

ぼくがゆびをぱちんとならして、きみがおとなになるまえの詩集

きみはいつものように、あけっぱなしの玄関から、どんどんぼくの部屋にあがりこみ、ランドセルをおろしながらこういった。「せんせいが、おまえは本を読めっていうんだ。ことばがなってないから」。ぼくは一冊の詩集をきみに手渡す。「ここんとこ、読んでみな」。詩は、おもしろい。そして、詩はことばを自由にし、ことばはわたしたちを自由にする。20篇の詩を通して、詩人斉藤倫と楽しみ、考える、詩のことそしてことばのこと。

読者の声より

長いタイトルに、不思議なシチュエーション。
詩集といいながら、物語?
あちこちの書評で取り上げられていて気になっていました。
表紙の絵も意味深です。
ランドセルの少年がどこかの家に上がり込んでいるようですね。
物語は唐突に始まります。
ぼくの家に上がり込んだきみ。
会話のやり取りから、おじさんと近所の小学生の会話のよう。
カップ麺や焼きそば、枝豆などを食べようとした時にやってくるタイミング自体、
なんだかおもしろいシチュエーション。
会話の中から、二人は、家の中の本の詩を読んでいくのです。
そのラインナップは千差万別。
その中で、詩とは何か、ということがなんとなく感じられる構成なのです。
そしてそれ以上に、だんだんとほどけていく、ぼくときみの関係性。
二人を繋ぐ詩の立ち位置が明らかになります。
不思議な読後感です。
小学校中学年くらいから大人まで、言葉考としても。
(レイラさん 50代・ママ )

願うのはどんなこと? それぞれの心の中にある本当の願いを大切に育てよう

ほんとうの願いがかなうとき

チャーリーは家族からはなれて、たった一人、いなか町のコルビーにやってきました。事件をおこした父親が拘置所にはいって、精神が不安定な母親も子どものめんどうがみられないので、姉さんのジャッキーともはなればなれになって、一度も会ったことのないおばさん夫婦にひきとられたのです。
一番星や、四つ葉のクローバー、雨の中をとぶ鳥など、毎日なにか幸運のしるしをみつけては、願いごとをするチャーリー。
近所で見かける、やせたのら犬に自分と似たものを感じて、なんとかつかまえて飼いたいと思ったチャーリーを、クラスメイトのハワードが手つだってくれるようになります。
家族からひきはなされ、怒りとさびしさから、かたくなに自分にとじこもっていた少女が、その気持ちを理解してくれる人たちの中で少しずつ心をひらいていき、自分のほんとうの願いを知るようになる物語。
児童図書作家画家協会(米国)・クリスタルカイト賞受賞作。

そわそわしたら本の世界へエスケープ!

なんだか落ち着かないなあ、と思ったら、物語と一緒に別の世界へエスケープしてみませんか。

不思議な世界への入り口は身近なところにありそうですよ。

 

毎日忙しくて本なんて読む暇がない! という人にこそ読んでほしいお話

風力鉄道に乗って

ぼくは新宿駅で変な列車に乗ってしまった。つぎつぎ現れる動物の顔の乗客たち……。それは帆に風をうけて走る風力鉄道だった。

読者の声より

渉くんという受験を控えた小学生の男の子が、ある日曜日のこと、
模擬試験に行く途中、電車を乗り違えます。
でだしのあたり、彼が問題集を読みながら駅で電車にのる。
その文章の科見合いが、、映画みたいなんです。
そしてその電車がなんだか変だと気づきます。
それは隣り合わせの異次元にあるらしい国の風力鉄道でした。
渉くんは模擬試験には間に合わず、
風力鉄道の旅を続けるはめになりますが、
この鉄道はかなり面白いです。
おもしろいだけじゃなくて、考えさせられることもあります。
佐々木マキさんの挿絵も楽しいです。
行き逢った人たちというのか、どうぶつたちと言えば良いのか、
だんだん仲良くなって、最後別れるときは悲しかったです。
でも、また行けるのです。春休みになったら。楽しみです。
(capellaさん 60代・じいじ・ばあば )

心を遠い場所まで運んでくれる骨董屋の高田さんの冒険譚。美しい挿絵にも注目を。

銀杏堂

「銀杏堂」は、レンちゃんが登校途中で見つけた骨董屋さんの名前です。ある日勇気をふりしぼって、お店に入ると、そこには店主の高田さんというおばあさんがいました。レンちゃんは、高田さんから、お店に並ぶ珍しい骨董品を手に入れるまでの冒険譚を聞きます。

にしきごいのうろこを手に入れた時のにしきごいとの対決、稲妻のかけらを拾った激しい夕立ちの日のこと、ユニコーンの胸につかえていた四つ葉のクローバー入りエメラルド、朝つゆのついたクモの巣のネックレスを見つけたときのこと……それらひとつひとつを手に入れた時のハラハラする冒険や、夢のような不思議な体験。場所も北極からサバンナ、フランスなどはるか遠い異国で起きた出来事だったり、時には、絵のなかに入り込んでしまったことも。

「歴史や思い出こそ、人生の宝になるんだよ」
そう語る高田さんの冒険譚は、最高にワクワクするものでありながら、どこか人生の秘密までもが隠れていて、レンちゃんの心に影響を与えていきます。それは未来へ向けたレンちゃんの夢への手がかりともなるのでした。

挿絵や装丁もとびきり美しい一冊。ひと目で素敵さが伝わる表紙カバーはもちろんのこと、カバーを開いた時に現れる紺と金色が美しい中身、見返し、ところどころに挟まれる贅沢なカラー挿絵など、すみずみまで手が込んでいる造本の素晴らしさは実際に手にとって感じてみてくださいね。

小学4年生ぐらいから大人の方まで。珍しい骨董を手に入れるためなら、どんな苦労もいとわない、かっこいい高田さんのお話に耳を澄ませてみませんか。
(秋山朋恵  絵本ナビ編集部)

読者の声より

小学生のレンちゃんが通いはじめた骨董屋。売られている品物は、不思議なものばかり。しかも、店主の高田さんが自ら集めてきたもののよう。一体、高田さんは何者なんだろう、と興味がわきます。
どの品にまつわるお話も幻想的で魅力的なのですが、なかでも、エメラルドのお話が一番心にのこりました。
挿絵もとっても素敵で、きれいな本でした。
(あんじゅじゅさん 40代・その他の方)

家と学校とどこにも逃げ場がないような窮屈さを感じた時、手に取ってほしい1冊

もうひとつの曲がり角

「知らない道って、こうやってどこまでものびているんだなと思った。この道も先のほうではきっとまた別の知らない道につながっていて、その道もまたどこまでものびて、どこまでもどこまでも道は続いているのだ。」

市の西側から東側に家族と共に引っ越してきた小学五年の朋と、中一の兄。念願だった新しい家を手に入れた母は、これまで以上にてきぱきしていて何に対しても積極的で、朋にも英会話スクールを勧める。「行きたくない」と言っても聞き入れられず、通うことになった英会話スクール。けれども朋は、英会話を好きになれそうになく、違和感を感じます。ある日、英会話スクールが休講となり、ふと、行ったことのない道に行ってみようと、先のT字路にある白い花がちらほら咲いている木が立っている家から別の方向にのびている道へ。昔ながらのお店や、古びた感じの家々を通り過ぎると、女の人の声が聞こえてきて‥‥‥。そこで出会ったのは、木に囲まれた小さな庭でひとり朗読をするオワリさんという小さなおばあさんでした。
「朗読をきいていただいて、どうもありがとう」
「よかったら、またいらっしゃい」
オワリさんの不思議な朗読が聞きたくて、その後も英会話スクールに行くフリをして、たびたびT字路の曲がり角を曲がる朋。けれども、なぜか別の道にたびたび迷い込んでしまい、そこには、みっちゃんという女の子がいるのでした。

「あの道のことを考えようとすると、どうしても頭の中がごちゃごちゃしてくる。T字路のところをまちがえないように気をつけて曲がったつもりでも、いつのまにか、どこかでちがう道に入りこんでしまってるのだ。あの道と、もう1つの道がどこでどうつながっているのかがわからなかった。」

オワリさんへと続く道と、みっちゃんへと続く道。
なぜ同じ道を曲がっても別の場所についてしまうのか? 朋と一緒に混乱しながらも、次第に解明への糸口が見えてくる過程にドキドキさせられます。

新しい生活へのとまどい、客観的に見えるようになった母や父の姿、英会話スクールに感じる違和感と、違和感なく受け入れているように見えるクラスメートの中での孤独‥‥‥さまざまな思いに揺れる朋の内面に、オワリさんとの交流や、みっちゃんとの交流が、変化をもたらしていきます。それと同時に、オワリさんも朋との交流によって、子どものときの気持ちをさまざま取り戻すのでした。そんな朋とオワリさんがお互いに影響しあう姿がみずみずしく、二人が過ごす時間は朗読の素敵さや庭の自然の豊かさも相まって、きらきら輝いているようです。また中学生の兄の存在も注目どころです。「お兄ちゃんは家を引っ越したからか、知らない子ばかりの中学校に入ったからか、それとも中学生になったからか、まえとはちょっと感じがちがってきた。どこがどう、とはっきりはいえないけれど、なんだかもう子どもでいるのはやめた、というような顔をしている」そう朋が感じる兄もまた大きな成長の過程にいて、朋と抱えているものは違えども、兄の存在が、内面的に孤独になりそうな朋を支えているようにも感じられます。

読む年齢によって、さまざまな感じ方ができる作品ではないかと思うので、小学五年生ぐらいから大人の方まで幅広い年齢の方におすすめしたいと思います。私自身は読みながら、朋の気持ちになったり、朋のお母さんの気持ちになったり、オワリさんの気持ちになったり、いろんな目線になりながら、心がさまざま揺り動かされました。けれどもやっぱり一番は、朋と同じぐらいの年齢の高学年から中学生にこの作品が届いてほしいと願ってやみません。

家と学校とどこにも逃げ場がないような、どこか窮屈さを感じていることがあったら、そんな思いにとらわれていたとしたら・・・・・・。もうひとつの道や世界が存在しているということにこの作品を読むことで気づけた時、どれぐらい気持ちが軽くなることでしょう。

最後に、絵本作家の酒井駒子さんの挿絵は、表紙と裏表紙のみなのですが、この絵の存在感は大きく、お話を読む間、ずっと頭の中にイメージとしてあり続けました。酒井さんの絵もまた、不思議な「もうひとつの曲がり角」の世界への入り口へ心地良く誘ってくれるようです。
(秋山朋恵  絵本ナビ編集部)

どこから読むのも自由な心地良い短編集。イタリアを代表する児童文学作家ロダーリの世界をたっぷりと。

講談社文庫 緑の髪のパオリーノ

ロングセラー作品『パパの電話を待ちながら』に続く、イタリアの巨匠・ロダーリからの贈り物。畑で働くピエトロの家に緑色の髪の毛の赤ん坊が生まれてびっくり。見に来た女の人たちは「サラダのパオリーノ」と言い出して……。タイトルにつながる「パオリーノの木」ほか、シュールだけれど温かい珠玉の短編集!

いかがでしたか。

何か面白い本はないかなあ? と思ったら、ぜひ参考にしてみて下さいね。

これから始まる1年の間に、自分のお気に入りになる本との出会いがたくさんありますように。

秋山朋恵(あきやま ともえ) 

絵本ナビ 副編集長・児童書主担当

書店の本部児童書仕入れ担当を経て、私立和光小学校の図書室で8年間勤務。現在は絵本ナビ児童書主担当として、ロングセラーから新刊までさまざまな切り口で児童書を紹介。子どもたちが本に苦手意識を持たずに、まず本って楽しい!と感じられるように、子どもたち目線で本を選ぶことを1番大切にしている。編著書に「つぎ、なにをよむ?」シリーズ(全3冊)(偕成社)がある。

掲載されている情報は公開当時のものです。
絵本ナビ編集部
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