【2022年版】小学3年生の読書感想文におすすめの本5選!
お出かけに、遊びに、学びに……行動範囲が広がる夏には、子どもたちにたくさんの楽しい体験をしてほしいもの。そのひとつとして、時間がたっぷりある夏休みに体験してほしいのが、お気に入りの本との出会い。
「君だけの一冊にきっと出会える!」2022年の夏はこちらをキーワードに、新刊を中心とした旬のおすすめ本を、学年別にご紹介していきます。読むきっかけが読書感想文をはじめとした宿題のためだとしても、自分で本を探してみること、そして読んでみることにチャレンジしたら、きっと自分だけのお気に入りの一冊に出会えるはず。夏休みの読書、ぜひ楽しんでくださいね。
- こちらで紹介している「読書感想文におすすめの本」の選書のポイントは、
「テーマがはっきりしていて分かりやすいもの」
「読みやすいもの」
「表紙やタイトルで、子どもたちに読んでみたいという気持ちを起こさせるもの」
「読み終えた時に心に残る何かを感じとれるもの」
の4点を重視して選書しています。
- 子どもたちが本を選びやすいように、小学3年生向けとして5冊紹介させていただいていますが、目の前のお子さんが無理なく読めそうなもの、逆に簡単すぎないものを選ぶことが一番大切です。小学3年生向けのおすすめ作品でピンとくるものがなかった時には、小学2年生向けや小学4年生向けなど、前後の学年へのおすすめ作品もチェックされることをおすすめします。
小学3年生の夏の読書と読書感想文におすすめの本
『チイの花たば』(岩崎書店)
「わたしも、大きくなったら、おばあちゃんみたいなお花やさんになりたい!」
チイは、いつもお客さんにぴったりの花たばを作る魔法使いのようなおばあちゃんの姿に憧れています。「それなら、じきに、花にためされる日がくることだろうね」
おばあちゃんが言うには、チイが花やにふさわしい人間かどうかを、花に試されるテストがあるというのです。はたしてそれはどんなテストなのでしょうか。
チイが知恵と心を働かせて考えるその過程と、素敵なアイディアに注目してみてくださいね。
さて、花やにとって大切なこととは? それはさまざまな仕事に通じるものかもしれません。
※89ページの読み物です。花が大きなテーマとなっていることもあり、カラーの挿絵が色彩豊かで美しく、物語を彩っています。さまざまな花の絵を見るのも楽しい一冊です。
【感想を書くヒント・子どもたちへの問いかけ】
- お話の中で、好きな場面はどこだった? それはなぜ?
- おばあちゃんが作る花たばはどうしてお客さんに喜ばれるのだろう?
- お話を通して、花やにとって大切なのはどんなことなのか、分かったことがあったら書いてみよう。
- 主人公のチイのように、将来なりたいと思う仕事があったら、そのことも書いてみよう。
『しゅくだいドッジボール』(PHP研究所)
苦手なことや考えると気が重くなってしまうこと、きっと誰にでもありますよね……。
「しゅくだい」シリーズは、苦手なことに直面して悩みながらも奮闘する、皆さんと同じ三年生の子が主人公となるお話です。
今回紹介する『しゅくだいドッジボール』は「しゅくだい」シリーズの最新刊。運動オンチで中でもドッジボールが特に苦手というひろきですが、クラス対抗ドッジボール大会を前に、必死で練習をします。逃げずに頑張ったのは、大会で勝ちたいがために大会に出ないでくれ、とクラスメイトの池田くんに言われてしまった悔しさから。けれどもその池田くんをも巻き込んで努力するところがこのお話の素敵なところです。
「しゅくだい」シリーズには他にもいろいろな苦手が出てくるので。自分と同じ苦手なものがテーマとなるものや、気になるものから選んでみるのもおすすめです。
※80ページの読み物です。字が大きめで、すべてのページに挿絵が入っているので、読みやすいシリーズです。
【感想を書くヒント・子どもたちへの問いかけ】
- 主人公の気持ちに共感した場面や、すごいと思った場面などあったら、書いてみよう。
- 心に残るセリフがあったら、そのセリフを書き出して、どうして心に残ったかを考えてみよう。
- これまで主人公と同じように苦手なことに立ち向かった体験があったら、思い出して書いてみよう。
ボールにも苦手にも背は向けない
みどころ
ボールをぶつけ合うスポーツなんて、意味がわからない。そんなのがスポーツって、あり?
運動オンチのひろきは、ドッジボールが特に苦手。それなのに、来月には2組とのクラス対抗ドッジボール大会が迫っているものだから、気分はどんより。どうしても大会で2組に勝ちたいと思っているクラスのエース池田くんには、大会に出ないでくれとまで言われるしまつ。
そんなの、くやしい!
ぜったいに大会に出てやると決意したひろきは、お兄ちゃんと一緒にジョギングを始めることにします。お兄ちゃんは、ドッジボールの練習もてつだってくれると言ってくれるのですが、さらにこんな提案が‥‥‥
「おれも てつだうけれど、
学校でも 教えてもらった方が いいぞ」
「学校で? ……だれに?」
ひろきの質問にお兄ちゃんがあげた名前は、なんと! 大会を休めといってきた、あの池田くん!?
がんばって苦手をこくふくする子どもたちの努力と成長を描いた、「しゅくだいシリーズ」第8弾。こんどの苦手は、ドッジボールです。水泳も、剣道も、サッカーも、野球も。チャレンジはしたけど、けっきょく長続きしなかったひろきは、根っからの運動嫌い。それでも、勝つために試合に出るなとまでいわれたら、黙ってるわけにはいかない。しかも、自分にくやしい思いをさせた相手にまで、練習につきあってほしいと頭を下げにいく覚悟! ひろき……かっこいいぜ。
一転、試合のシーンは手に汗握る迫力です。
くるくるとコートをめぐるパス回し。いつアタックがくるかわからない緊張感。ひろきにとって特別な意味のある試合だとわかっているからこそ、「たかがドッジボール」だなんてとてもいえない、真剣勝負の白熱があります。勝つのは1組か、2組か。しかし、大会の直前におこなわれた練習試合では、ひろきたちはボロボロに負けてしまいます。あれだけ特訓したのに、一度だけボールをよけてすぐに当てられてしまった、ひろき。池田くんに、こんどはなにをいわれることか……。ところが試合後、みんなの前にひろきを立たせて池田くんがいったのは、クラスのみんなを熱くさせるおどろきの言葉だったのです。
自分めがけて飛んでくるボールにも、何度やってもダメだった苦手にも、目を背けずに正面から向き合う! くやしさを力に変えて なりふりかまわず強くなろうとするひろきの姿に、熱い勇気をもらえる一冊です。
(堀井拓馬 小説家)
苦手なことを努力によって克服していく姿を描いたシリーズ。
『はっぴょう会への道』(PHP研究所)
三年生のひなこは、大きな声を出すのが苦手。はっぴょう会の劇で「三まいのおふだ」をやることになり、せりふの少ない「川の水5」をやりたかったけれど、じゃんけんに負け続け、やまんば三姉妹の一人、せりふの多い「がりんば3」になってしまいます。練習では先生に注意されてばかりで、一緒に「がりんば」の役をやるりほちゃんとなっちゃんからも怒られてしまいます。やっぱり役を変えてもらうしかない、と思うひなこでしたが、クラスメイトからの言葉によって、気持ちが変わっていき‥‥‥。
※79ページの読み物です。ひなこの気持ちの変化に注目しながら、自分だったらどうするかを考えてみたり、またひなこ以外のクラスメイトに共感するところがあれば、周りの立場から書いてみたり、身近に体験したことのありそうなお話なので、感想文も膨らみやすいのではないでしょうか。
【感想を書くヒント・子どもたちへの問いかけ】
- もし、はっぴょう会の劇で苦手な役になってしまったら、どうする?
- おとなしいゆみちゃん、いつも元気なげんちゃん、同じやまんば役のりほちゃんとなっちゃん、クラスメイトとのやりとりで心に残ったのはどんな場面?
- これまで苦手なことを頑張った体験があったらそれを書いてみよう。
はっぴょう会の劇で苦手な役にあたってしまったひなこ。どうする!?
出版社からの内容紹介
ひなこはゆううつでした。学習はっぴょう会で「三まいのおふだ」の劇をするのですが、ひなこは、せりふの多い「がりんば」という役になってしまったのです。
ひなこは、目立たない「川の水」の役が第一希望でした。ところが、同じクラスのゆみちゃんが、「ほかの役、できない」と言うので、ひなこは川の水の役をゆずってあげたのです。ところが、ひなこはじゃんけんに負け続けて、やまんば三姉妹のひとり、「がりんば」の役になってしまいました。
練習が始まると、ひなこは大きな声が出せず、先生に怒られてしまいます。そして、やまんば三姉妹の決めポーズの時も、もじもじして上手くできません。すると、やまんば三姉妹の役の二人から、「ほかの役にしてもらえば」と言われてしまいました。
ひなこは、先生に役を変えてもらおうと決心します。ところが、友だちのげんちゃんは、やりたい役ではなかった「べんじょの柱」の役を頑張っていると知って……。
『オポッサムはないていません』(大日本図書)
森に住んでいるオポッサムは、いつもにこにこわらっていて、一番ごきげんで、一番しあわせな動物でした。しかし、ある日四人の人間がピクニックにやってきて、木にぶら下がっているオポッサムを見つけます。そこでオポッサムを下から見上げた人間たちは、にこにこしているオポッサムをかなしんでいると勘違いし、オポッサムをにこにこのしあわせ者にしようと町へ無理やり連れていきます。
町では、オポッサムに映画を見せたり、ディナーショーへ連れて行ったり、自分たちがしあわせだと思うやり方で、オポッサムをにこにこにしようと奮闘するのですが……。
※ページ数は76ページ。1ページごとの文字数が少ないので三年生ぐらいの子どもたちだったら、すぐに読めてしまうでしょう。けれども内容は深く、考えさせられます。読んでどんなことを感じたのか自由に書いてみませんか。大人の方にもおすすめのお話なので、親子でいろいろ感想を交換してみるのも良さそうです。
【感想を書くヒント・子どもたちへの問いかけ】
- お話を読んで、なんだか変だな、と思ったところはあった? それはどうして?
- しあわせだと言っているオポッサムを、しあわせでないと決めつけてにこにこにしようとするにんげんたちの行動をどう思った?
- ようやく森に帰ってきたオポッサムが、悲しい気持ちからなかなか立ち直れなかったのはどうしてだろう。
他、場面ごとのオポッサムの気持ちをいろいろ想像してみよう。
「オポッサム」の幸せと、にんげんが考える幸せの違いとは?
みどころ
これは「オポッサム」というちょっと不思議な生きもののおはなし。
というより「オポッサム」をめぐる人間たちの、奇妙なはなしといっていいかもしれません。
ある森に、一匹のオポッサムが住んでいました。
いつもにこにこ笑っている、ごきげんなオポッサムです。
高い木にのぼると、枝にしっぽをくるくるとしっかり巻きつけて……。
ぷらんとさかさまになり、にこにこしながら何日か過ごします。
オポッサムなら誰でもこうするんだそうですよ。
オポッサムはにこにこ、にこにこしています。
ところがそんなある日、4人の人間がやってきて、にこにこ顔のまま逆さまに木にぶらさがるオポッサムを見ておかしなことをいいはじめるんです。
「かなしそう」「ぜんぜんにこにこしてない」「あいつはきっと、自分がにこにこしていると思ってる、めそめそオポッサムなんだ!」「町へつれて行って、にこにこにしてやろう」
断るオポッサムのいうことも聞かず、とうとう人間たちはオポッサムがぶらさがっている木ごと掘り返し、木といっしょに町へつれて行ってしまうんです……。
さて、このおはなしはいったいどうなるのか?
続きはぜひ本を読んでほしいのですが、とにかく、個人的には、何ともいえない居心地のわるさと、むずむずした感じが残りました。
森の中で幸せだったのに、勝手な思い込みで、騒々しく、ふきげんな人間だらけの町に連れて来られたオポッサム。
それでもにこにこしているオポッサムを、めそめそオポッサムだと決めつけ、“自分たちの力で”“自分たちが考える”“にこにこオポッサム”にしてやろうと奮闘する人間たち。
しかも人間たちが「あいつは、めそめそオポッサムだ!」と思い込む理由ときたら……。
読んだらきっと笑っちゃいますよ!
「幸せとは何だろう?」という問いが、心の中に湧いてくる、皮肉なユーモアに満ちた寓話。
ぜひ小学生に手にとってほしい絵童話です。
アニメーション制作や脚本、映画監督など、様々な分野で活躍したフランク・タシュリンが、子ども向けに書いた作品は、『ぼくはくまですよ』(大日本図書)と本作のみ。
小宮由さんの訳で、このたび2冊同時に出版されています。
あわせて手にとってみてくださいね。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
『やんちゃ犬 おおさわぎ!』(あかね書房)
「動物あずかりや」って聞いたことありますか? 日本では聞きなれない言葉かもしれませんね。このお話は、「動物あずかりや」を担っている家族の一員である8歳の「カイタ」の物語。「動物あずかりや」というのは、<しあわせしっぽの会>(物語の中での保護団体の名称)が保護した犬が一生くらせる家が見つかるまで、家族として大切に世話をする動物あずかりボランティアのこと。さっそく、大人の黒い犬トルーマンをあずかることになったカイタ一家でしたが、トルーマンのやんちゃぶりにてんやわんや。けれどもトルーマンがどんどん懐いて可愛くなり、幸せな家族を見つけてあげたいと思う反面、さよならするのがつらくなってしまって。
動物への愛情と、「動物あずかりや」としての役割の間で、カイタはどんなことを考え、成長していくのでしょうか。
※71ページの読み物です。ところどころに入っている挿絵は全てカラーで、犬たちと過ごす楽しさが伝わってきます。巻末には、このお話のモデルとなった「カイタ・タカノ」さんという女の子の紹介もあります。こちらはお話を読んだ後のお楽しみページです。
【感想を書くヒント・子どもたちへの問いかけ】
- 「動物あずかりや」という保護動物のあずかりボランティアがあると聞いて、どう思った? やってみたい?
- 「動物あずかりや」にはどんな役割があるのだろう? 気づいたことを書いてみよう。
- トルーマンに家にいてほしい、という思いと、ちゃんと一生の家を見つけてほしいという思いの両方に揺れるカイタの気持ちをどう思った? その後のカイタの気持ちの変化にも注目してみよう。もし自分がカイタだったらどう感じるだろう?
- もし動物をあずかるとしたら、どんな動物をあずかってみたい?
トルーマンがずっと家にいてくれたらいいのに‥‥‥
出版社からの内容紹介
カイタは動物がすきな8歳の女の子。「動物あずかりや」として保護動物を一時的に受け入れることになり、犬のトルーマンがやってきた。やんちゃなトルーマンの世話は思った以上に大変。にぎやかな毎日をおくるうちに、カイタはトルーマンのことが大すきになった。けれど、トルーマンに一生の家が見つかれば、お別れしなければならなくて……。動物のあずかりボランティアをとおして成長する女の子を温かく描いたシリーズ第1弾。
いかがでしたか。
気になった作品から手にとってみて下さいね!
秋山朋恵(あきやま ともえ)
絵本ナビ 副編集長・児童書主担当
書店の本部児童書仕入れ担当を経て、私立和光小学校の図書室で8年間勤務。現在は絵本ナビ児童書主担当として、ロングセラーから新刊までさまざまな切り口で児童書を紹介。子どもたちが本に苦手意識を持たずに、まず本って楽しい!と感じられるように、子どもたち目線で本を選ぶことを1番大切にしている。著書に「つぎ、なにをよむ?」シリーズ(全3冊)(偕成社)がある。
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