どうしてクリスマスに絵本を贈るの? 絵本があるとどんな時間が過ごせるの?
クリスマスの時期になると、書店の児童書売り場は大賑わい。華やかなクリスマス絵本がずらりと並び、大人になっても胸が躍ります。プレゼントしたくなる絵本がたくさんあります。……でも、ふと思うのです。どうしてクリスマスになると、こんなに絵本が売れるのでしょう。どうしてみんな、クリスマスに絵本を読むのでしょう。
この記事では、理由を一つ一つ考えながら、おすすめしたい絵本も一緒にご紹介していきます。読み終われば、きっとあなたもクリスマス絵本を手に取りたくなるはず! 最後までお楽しみください。
想像を広げて楽しむクリスマスと絵本や物語には親和性があるから
子どもたちの多くは、「クリスマス」という響きに憧れがあるのではないでしょうか。何かが起こりそうなイブの夜、願いごとやプレゼント、サンタクロースの存在。クリスマスの本当の意味を知らなかったとしても、その謎めいた雰囲気やキーワードが、存分に想像の世界を広げていってくれるのです。同じ様に想像を広げながら楽しんでいく絵本や物語の世界と親和性があるのは当然なのかもしれません。
不思議な夜に起こるのは……
クリスマスマーケットでおきた、ちいさな奇蹟
おじいちゃんとはじめて訪れたクリスマスマーケット。そこでヨハンは、ツリーから落ちて困りはてた金色のお星さまに出会います。マーケットの番人であるくるみ割り人形と一緒に、ガラス細工の天使やジンジャークッキーなど、マーケットの仲間たちみんなと協力して、お星さまを元のクリスマスツリーに戻そうとがんばるのですが、いじわるな北風が邪魔をして……。
ドイツで暮らした経験をもとに著者が描く、夜の町にかがやくクリスマスマーケットでおきた、ちいさな奇蹟のお話。
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願い事をかなえてくれるのは?
ぼくがサンタさんのかわりになって
あしたは楽しいクリスマス。
でも、ぼくは心配でねむれない。
だって、サンタさんは「いいこ」にしか来ないんだもん。
ぼくは……
ちょっぴり不安な夜を過ごすぼくのところにやってきたのは、「よるくま」。
夜みたいに黒くて、胸にはお月さまがひかっている、ぼくの可愛いともだち。
だけど、よるくまはサンタさんを知らないって言うのです。
「おかしいな、クマの子にはサンタさん、こないのかな」
そこで、ぼくはよるくまにサンタさんのかわりになることを思いつきます。
クリスマスツリーの飾りの中から、彼が選んだのは、おうちと、ちいさなイエスさま。
それからひこうきも。よるくまに手渡したその瞬間、あたりが真っ暗になり……
サンタクロースに会いたい子どもたちへ
クリスマスに家族で過ごす楽しさを味わえるから
何日も前からみんなでクリスマスツリーを飾りつけ、お料理やケーキの準備をし、サンタさんからのプレゼントを期待しながら寝床に入り、みんなで迎えるクリスマスの日。絵本からも伝わってくる、家族で過ごす時間の楽しさやあたたかさ。そんな物語を読んで幸せを感じるのは、大人も子どもも一緒ですよね。にぎやかなお話から静かに味わうお話まで、クリスマスに絵本を一緒に読むことは、家族のつながりを一層深めていってくれるはず。ぜひ、共通のお気に入りの一冊を見つけてみてくださいね。
待ちに待ったクリスマス!
サンタさん、ちゃんときてくれるかなあ
「まちに まった クリスマス!」
ピヨピヨひよこ5兄弟たちも、絵本を読んだり、ツリーの飾りつけをしたり。
クリスマスの準備に大忙しです。
でも……
「サンタさん、ちゃんと きてくれるかなあ」
なんだか心配です。おかあさんはいい子のところには来てくれるっていうけど。
5匹一緒にサンタさんに呼びかけてみます。
「いいこにしています。どうか こんばん きてください。」
さて、いよいよ夜がやってきて。
サンタさんはちゃんとみんなのところに来てくれたのでしょうか。
アドベントカレンダーが、そのまま絵本に!
アドベントカレンダーが、そのまま絵本に! クリスマスまで、ねこさん家族と一緒にカウントダウンをしながら、クリスマスの準備を進めていきます。キッチンや街の中、畑、暖炉のある居間など、次々と変わっていく舞台の中で、オーナメントやツリー、プレゼントなどがたくさん登場します。どのページの中にも隠れている144のフラップを開けると、中には新たな絵が登場。探す楽しみと、クリスマスに近づいていくワクワクする気持ちがぎゅっとつまった一冊。
大切なのは、気持ち
60年以上も前から世界中の子どもたちに愛されている、くまのパディントンが迎えるクリスマスまでの日々を描いたこの絵本。大切な家族に特別な贈りものをするために奮闘するパディントンの健気な姿が愛らしいのですが、もう一つの注目点はなんといっても、絵本の中にリアルな封筒のページがあること! 5つの封筒をあけると、そこにはルーシーおばさんから送られてきたアドベントカレンダーが入っていたり、マーマレードのしみがついたパディントンお手製のクリスマスカードが入っていたり。最高にワクワクしますよね。
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クリスマスの事をもっと知るために
クリスマスは大好き。だけど、どうしてクリスマスって、どうしてお祝いするの? サンタクロースってどんな人? ほかの国ではどんなクリスマスを過ごしているの? そんな疑問が浮かぶようになったら、やっぱり絵本が大活躍。親子で一緒に答えを探していく時間もまた、大切な思い出になっていくはずです。年齢に合わせて楽しめる絵本を探してみてくださいね。
クリスマスってなあに?
クリスマスの本当の意味
クリスマスの本当の意味を伝えたい、という作者の思いから生まれた絵本。クリスマスってどうしてお祝いするの?という子どもたちの問いに答えつつ、イエス様だけでなく、望まれて生まれてきたことの幸せを感じさせる絵本。
しかけで楽しむクリスマスの物語
星にみちびかれて、東方の3博士の旅がはじまります。イエス・キリストの誕生の物語を通して、クリスマスのほんとうの意味を、子どもたちにやさしく楽しく伝える絵本です。
サンタクロースの秘密
サンタって本当にいるの?
「サンタって本当にいるの?」子どもの質問に、お宅ではどう答えていますか? ハラハラドキドキ、親子の会話と愉快なイラストで、サンタの本質に迫ります。
目には見えないけれど
子どもの質問に答え、目に見えないもの、心の大切さを語りかけた100年前のアメリカの社説です。
何度読んでも涙が……
何年も前に雑誌や新聞の社説に取り上げられていたのを読んで、もう一度読みたいとずっと思っていたところ、本屋で偶然見つけて急いで買いました。
目には見えなくても愛や思いやりといったものが確かに存在するように、サンタクロースもまた目には見えないけど存在するんだよと、新聞記者が社説の中で小さな女の子に語りかける実話です。
何度読み返しても涙がこみあげてきます。大人はこうやって子どもに夢やロマンを抱くことの素晴らしさ、人を愛し思いやって生きることの大切さを説いていくべきなんだと思います。
私はこの本を読んで以来、サンタの存在に疑問を抱くようになった子どもたちに、「お母さんはサンタさんを見たことはないけど、いるって信じてるよ」と話しています。
(子どもの本棚さん)
世界のクリスマス
チェコのイブのできごと
チェコのクリスマスイブ。小さな男の子フランタが、ひとりで教会へむかいます。イエス様の生まれ故郷ベツレヘムから届いた灯りを、家のランプのろうそくにわけてもらうのです。しかし教会で思わぬ失敗をし、あわてて逃げだすことに。それでも、とちゅうで出あった気のどくなおじいさんを助けるために、知恵と勇気をふりしぼります。小さなフランタのやさしさに、心にぽっと灯がともるようなあたたかい気持ちにさせられます。
世界18か国のクリスマス
クリスマスは、イエスさまのたんじょうびをお祝いする日。そして、世界が平和になることを願い、すべての者が幸せになるように祈る日でもあります。その方法は、国によって地方によって、それぞれ伝統や風習が違うのです。「世界18か国のクリスマス」見てみたいと思いませんか?
この絵本では、まず最初にクリスマスの物語を教えてくれます。その上で、パリ在住の絵本作家市川里美による70点以上の繊細で可憐なイラストによって、私たちは日本にいながら、世界中の子どもたちの特別な時間を味わうことができるのです。その違いに興味を持ち、それぞれの国の美しい光景にどんどん惹きこまれてしまいます。本当に、様々な国の子どもたちが一緒にクリスマスパーティを楽しむことができたら、どんなに楽しいことでしょうね!
クリスマスは、世代や年齢ををこえて楽しめるイベント!
クリスマスが近づいてくると、なんだかソワソワした気持ちになってくるのは、子どもたちだけではないはず。大人になっても変わらずに楽しめるのは、数ある行事の中でもクリスマスが一番なのではないでしょうか。「クリスマス絵本は子どもが読むもの」なんて決めつけないで、大人も負けないようにお気に入りのクリスマス絵本を探してみるのをおすすめします。くすっと笑える絵本、優しい気持ちになれる絵本、美しい絵本、誰かに贈りたくなる絵本……驚くほど豊かな世界が待っているはずです。
笑って楽しむクリスマス
はらぺこサンタは思わずごくり
いよいよ明日はクリスマス。サンタクロースは準備中。ところが時間がなくて大あわて。食事はあきらめ出発です。たくさんのプレゼントをソリに積みこみ、こびとたちに見送られ、トナカイにひかれて夜空に飛びたったのですが……おや? こんなところにシュトーレン!?
はらぺこサンタは思わずごくり。夜空に浮かびあがっているのは、真っ白な粉砂糖に包まれ、果実や木の実がぎゅっとつまっているシュトーレン、のはずもなく。雪が積もったお山です。しっかりしなくちゃ、サンタさん。ところが、今度は目の前にコンソメスープ、ミートローフにブッシュ・ド・ノエル……なにもかもが食べものに見えてきてしまうのです。こんなはらぺこで、サンタさんは大事な仕事を終えられるのでしょうか。
大きすぎるから……?
大人気のお話が絵本になりました!
ウィロビーさんのおやしきにとどいた大きな大きなツリー。大きすぎて、さきっぽを切りました。そのさきっぽがまた切られ、どんどん小さくなって……森の動物たちも大よろこび! アメリカで長く愛されてきた、かわいらしいクリスマス・ストーリーです。
いろいろな動物が登場するくりかえしの展開は、読み聞かせにぴったりです。
大切にしているものは……
寒くて困っているだろうから、届けてあげなきゃ
さむいさむいクリスマス・イブの夜のこと。町にお使いに出ていた女の子がサンタさんのてぶくろを拾いました。女の子は、サンタさんに届けようとしますが…。イブの夜の心あたたまるお話。
「ほんもののうさぎ」とは?
クリスマスに男の子の家に来たのは、ビロードでできたうさぎのぬいぐるみ。男の子は毎晩うさぎと一緒に寝たり、一緒に遊んだり、それはそれは大事にしてくれたのです。ぼろぼろになってもうさぎは幸せでした。それは「男の子のほんもののうさぎ」になったと感じていたから。ところが別れは突然やってきて……。うさぎの考える「ほんもの」とは? そしてうさぎの身におこった奇跡とは?
古典的名作と言われ、世界中で愛されてきたお話「ビロードうさぎ」が絵本に。酒井駒子さんの描く、つぶらな瞳で今にも動き出しそうなぬいぐるみ、そのぬいぐるみと男の子との愛らしい触れ合いの場面。いつまで眺めていても飽きることはありません。切ないけれど、しっかりと前を向くことのできるこのお話。子どもたちの心にもきっと響くはずです。
誰かに贈りたくなる絵本
マリメッコデザイナーのサンナ・アンヌッカの絵を楽しむ
豊かな森に暮らすモミの木は、早く大きくなって別の世界に行きたいと願うばかり。「今を生きなさい!」と諭すお日さまの声も届かない。やがて森から切り出されたモミの木は、クリスマスに美しく飾り付けられるが……。モミの木を人生に重ね合わせられる作品。
世界中で愛されている、アンデルセン童話の名作『モミの木』がマリメッコのデザイナー、サンナ・アンヌッカのイラストで絵本になりました。物語を広げるアートワークと共に、読後には「今、その時を楽しみなさい」という人生のメッセージが心に届きます。
大切な人へ、自分用に、贈り物として喜ばれる1冊です。
静かで美しいクリスマス
まちにまったクリスマス・イブの夜。あたりはしずかに雪がふっています。「ねむるまえにみんなでしたへいってクリスマス・ツリーにさわっておねがいごとをしよう」。ねむれない子どもたちは、そっとベッドをぬけだして、階下へ冒険にでかけました。そこで子どもたちがみたものは…。『おやすみなさいおつきさま』で有名なマーガレット・ワイズ・ブラウンの遺作に、イタリアの舞台美術家出身のベニ・モントレソールが絵をつけた、静かで美しいクリスマスの絵本。
幸せな出会いが生まれるまでのお話
「ぼく、サンタさんに あの はしごしゃを おねがいするんだ」
くまくんが歩き回って見つけたのは、みどり色の素敵なズボン。サイズもぴったり、よくお似合いです。でも、あれれ。 この子、どこかで見たような?
……そうです、コールテンくんです! このお話は、彼がコールテンくんと名付けられ、あの女の子に出会う直前までが描かれています。そして『くまのコールテンくん』(偕成社)の冒頭シーンへとつながっていくのです。ああ、こうしてあの幸せな出会いが生まれたのだと思うと、胸が熱くなるのです。
誰かと一緒に過ごすクリスマスを楽しむきっかとなったり、親子で共通の思い出をつくることができたり。1冊の絵本が、そんな存在になってくれたら嬉しいですよね。子どもから大人まで。クリスマスのギフトには、ぜひ絵本も一緒に添えてみてくださいね。
選書・文:磯崎 園子(絵本ナビ編集長)
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