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絵本で伸ばそう!これからの子どもに求められる力

前向きにとらえてみよう!「失敗力」

絵本には、子どもに働きかける様々な力が備わっています。絵本がきっかけで、新しいことにチャレンジする気持ちを持てたり、苦手なことに取り組もうと思えたりもします。子どもたちの世界を楽しく広げてくれる絵本は、子育て中のパパママにとっても、大きな味方になってくれること間違いなしです!

この連載では、とくに「これからの時代に必要とされる力」にフォーカスして、それぞれの力について「絵本でこんなふうにアプローチしてみては?」というご提案をしていきたいと思います。

「失敗」が、物語の起点になる!

4月は、それぞれの新生活が始まる時期。そんな新生活の時期は、親も子も3月までと勝手が違って、失敗することが多い時期ではないですか? 子はクラスの場所を間違えて別の教室に座ってしまったり、新しい学年で使うものを用意していなかったり。親も、子どものスケジュールが変わったことに慣れず、習い事をすっぽかしたり!

 

小さな失敗から大きな失敗まで、失敗の確率が上がる時期ですが、失敗するとへこみますよね。また、新しい集団の中でいきなり失敗するのは怖いものです。ただ、失敗にどう向き合うかもケースバイケース。絶対に失敗しないなんてことはないので、へこまず受け流すべきなのかもしれませんが、かといって失敗を受け止めてそこから学ばないことには先に進めません。

それに、「失敗」って物語の起点になりませんか? 絵本を作っていて、話を動かす何かを盛り込みたいとき、「失敗」はとても大事な要素になります。失敗から主人公がどう動いていくかが、物語の盛り上がりの鍵になるのです。 人生も同じです。何事も起こらない平坦な毎日を変えたいとき、「失敗」は考えようによっては大きなチャンスになります。

 

前回は「メンタル力」ということで、メンタルをどう強くするかを考えてみましたが、今回のテーマはさらにその手前。「失敗に出会ったらどうする?」という「失敗力」にフォーカスします。へこみすぎず、怯えすぎず。「失敗って、はたから見ればなんだか笑えてしまうし、大事なのは失敗した後だよ!」と思えるような絵本をご紹介します。

まじめに失敗してみると?

失敗って、当たり前ですけど嫌ですよね。恥ずかしいし、恐縮するし、したくないのは当然なのですが、失敗のない完璧な人生もありえません。 まずは、失敗への心構えから考えていきましょう。

どこの売り場でも失敗ばかり

アリゲール デパートではたらく

アリゲールは、旅するわに。
旅のとちゅう、ひょんなことから100周年記念でにぎわう「ベイントンデパート」で
はたらくことになりました。
アイスクリーム屋さんや、おもちゃ売り場など、
いろいろな売り場でいっしょうけんめい
はたらこうとするのですが……

ワニのアリゲールは、電車の窓から空に浮かぶ不思議なものを見かけます。電車を降りてその正体に向かって歩くと、目の前に大きなデパートがありました。空に浮かんでいたのは、デパートのアドバルーンだったのです。 アリゲールは元気よくデパートに入り、お腹が空いたのでレストランへ。たくさんの料理とデザートをぺろりと平らげますが、お金が足りません。

アリゲールは足りない分、デパートで働くことになりました。アイスクリーム売り場に化粧品売り場、おもちゃ売り場……。アリゲールはどこへ行っても失敗ばかり。最後に屋上ガーデンへ行かされますが、そこでアリゲールは間違えてアドバルーンの紐を解いてしまい、つかまったまま空に舞い上がってしまったのです!

ワニのアリゲールは旅好きなので、性格ももともと自由気まま。行き当たりばったりでデパートにやってきて、一生懸命ながらも失敗ばかり。読んでいくと「その適当さが失敗を呼ぶのでは……?」とは思いますが、悪気はないし、一つひとつの物事には真摯(しんし)に取り組んでいます。なんだか憎めず、まっすぐ取り組んだ先が思ってもみない大成功につながっていく。 「失敗は確かに嫌だけれど、どうせするならこうして真正面から失敗したほうがよいかもね?」と、ちょっと失敗への心理的ハードルが下がる一冊です。

失敗って、なんだかおかしい

失敗は、自分目線で見るといたたまれませんし、自己評価も下がってしまいます。でも、他者視点で見れば、まるでコント番組のように笑えて「しょうがないなあ、もう」とおかしくなってしまうこと、ありますよね? そんな、失敗を「わはは」と笑い飛ばせる絵本がこちら。

なにもかもうまくいかない?!

すしねずみ

すしネタを盗もうと、こっそりすし屋に忍びこむ「すしねずみ」達。ですが、すしネタが強すぎて……! なにもかもうまくいかないねずみ達の姿に思わずクスっと笑ってしまう! 読み聞かせで盛り上がること間違いなしの1冊です。手掛けたのは大人気の絵本ユニット・はらぺこめがね。おいしそうな食べ物とチャーミングなキャラクターにもご注目ください。

すしねずみはお寿司が大好きで、着ている服も寿司ネタそっくり。本物の寿司ネタを盗みにお寿司屋さんへ忍び込みました。しかし、タコにはむぎゅっと掴まれ、エビやアジにはぴちっと蹴られ、イカにはお決まりのごとくぷしゅっと墨を吐かれてさんざんな目に。泥棒に来たのに失敗ばかりのすしねずみたち。果たして寿司ネタにありつけるのでしょうか?

「すし+ねずみ」という不思議なフュージョンスタイルに、最初からちょっと笑ってしまうのですが、盗みに来たはずの寿司ネタたちにいいようにやられて、「思ってたのと違う……」の連続です。それでもめげずにやり続ける姿は、頑張っているにもかかわらず、なんだか滑稽。 失敗すれば本人たちは素直にへこむかもしれませんが、一歩引いて見ればこんな風に笑っちゃう出来事かもしれません。「一回落ち着いて笑い飛ばしてもいいかもね」と思える絵本です。

失敗から、新たな発見!?

はたから見て「あらら、失敗しちゃった!」と思う出来事でも、その後の対処を見ていたら「あれ? あんな一面があったの?」と意外な頼もしさに気づき、評価が変わるきっかけになることってありませんか? まさに「ピンチはチャンス!」。失敗から新たな一面が見つかってしまう絵本です。

そのままだと やばいぞ!

めをさませ

うっとりねてたら・・・・おちました。
なにやらかわいい生きものがどんどんどんどん落ちていきます。
まわりはハラハラ。
おーい めをさませ!そのままだと やばいぞ!
「はっ!」と目を覚ました「ぼく」は気づきます。
なにしろおちるんです。だからこの絵本は縦開き。
みんなも自分に気づくといいね。そんな絵本です。

お月様にもたれてうとうと寝ていたら、落ちてしまいました! 空を真っ逆さまに落ちていきます。ところが、寝たままずーっと落ちていくのです。 みんなが「そのままだとやばいぞ! 死ぬよ!」と声をかけ、ようやく「ん?」と自分が落ちていることに気づきました。「ええと……」とようやく事態を把握した「ぼく」は、一体どうなるのでしょう?

居眠りして落っこちるなんて、うっかり中のうっかり。どんどん落ちていく姿に、周りはあわあわしています。よほどのうっかり者なのだろうと思いきや、目を覚ました後の「あ!」と思われる行動で、無事に地上激突を免れます。 失敗かと思いきや、「なーんだ、心配させんなよ!」と彼の特技が判明する、五味太郎さん流のユーモアあふれる一冊です。

失敗してもあせらない

失敗したときの慰めとして、「これくらいじゃ死なないよ」という言葉をかけられたことはありませんか? 私も自らを鼓舞するために「死ぬわけじゃあるまいし!」と思ったりしますが、大きな迷惑をかけるのでなければ、失敗に対して寛容であってもいいのかもしれません。 そんな、失敗に対してなんだかのんびり構えてしまう絵本をご紹介します。

うっかりすぎる音楽会?!

うっかりくまさんたちの おかしなおんがくかい

待ちに待った音楽会の日。つい、うっかりして肝心の楽器ではないものを持ってきてしまった音楽隊のくまさんたち…。しかたなく、かわりのもので音楽会をはじめることにしたのですが…? ユニークなオノマトペやほんわかした世界がクセになる、心地よいユーモア絵本。気鋭の絵本作家へんみあやか、いよいよ見参!

くまおさんは、音楽会に出演するためにトランペットと間違えて「ねこ」を持ってきました。隣のくまたろうさんは、バイオリンと間違えて「さつまいも」を。その隣のくまごろうさんは、太鼓と間違えて「洗濯機」を持ってきて……。ほかのみんなも、それぞれ楽器と違うものを持ってきてしまいました。一体、音楽会はどうなるのでしょうか?

くまさんたちの間違え方はダイナミックです。「トランペットと猫を間違えるなんて、そりゃないだろう」というレベルのとんでもない間違いを全員が犯しています。 ただ、くまさんたちはまったく焦っていません。そのまま音楽会に出演して、「あれれれれ〜」という感じなんです。観客側からすれば「期待していた音楽会と違う!」と激怒案件かもしれませんが、俯瞰(ふかん)してみれば、二度とないプレミアな音楽会かもしれません。動じないくまさんたちに「これはこれでありかも?」と思わされてしまう、のんびり楽しい絵本です。

リカバリーすれば大丈夫!

失敗は、どんなに気をつけていても可能性をゼロにはできません。だからこそ怯えてしまうのですが、よほどのアクシデントでなければ、リカバリーすればOK。最終的に違う方法でどうにかしてしまえば問題ありません。 そんな、失敗を恐れず進んでいく強さを感じる絵本がこちらです。

恐れず、この世界を楽しんで

せんろはつづく

子どもは線路をつなげる遊びが大好き!リズミカルな文章とかわいいイラストで、親子一緒に楽しめる絵本!

子どもたちが野原で線路をつないでいます。どんどんつなげていきますが、行く手に山が現れました。そんなときは山に穴を掘ってトンネルにします。川があったら橋を架けます。道を横断するときは踏切を作ります。 子どもたちは「どうしよう?」と思った瞬間でも、いろいろな方法で線路をつなぎ続けます。線路つなぎ遊びを、広い世界で自由自在に繰り広げる楽しさを描いた絵本です。

この絵本は厳密には「失敗」というより、障害物を工夫して乗り越えていく物語ですが、目の前に立ちはだかる困難を「こうすればいいよ」と軽やかにクリアしていく姿はとても爽快です。 何かが起きたとき、頭を抱えて諦めてしまったらそこで終了ですが、「ああでもない、こうでもない」と工夫してリカバリーし、結果さえ出せばオールOK。

 

作者の竹下文子さんは、2026年3月にお亡くなりになりました。多くの作品を残されましたが、竹下さんの作品には、本作にも貫かれている「世界を楽しもう」というメッセージが詰まっていると感じます。子どもたちの目線に立って描かれた作品からは、「恐れず、この世界を楽しんで」という想いを受け取れる気がします。

さいごに

「失敗をどう捉えるか」は、なかなか難しい問題ですよね。特に子どもに対しては、「失敗を恐れるな」と思いつつも、「でも、反省しないと繰り返すのでは?」という心配もつきまといます。

ただ、最近の子どもたちは昔に比べて不安感が強い子が多いとも言われます。人生始めたての子供が失敗するのは当たり前ですが、社会のルールが細分化し、不寛容さが目立つ時代だからこそ、「失敗してはならない」というプレッシャーが強いのかもしれません。

 

私自身、失敗は多いのにくよくよ悩み、不安から緊張してまた失敗する……というタイプなのですが、システムエンジニアの友人はいつも落ち着いていて余裕があります。その人のモットーは「リカバリーすればいいんだから」。それを聞いて、「そっか、やっぱり理系は言うことが違うな!」(あまり関係ないかもしれませんが)と目から鱗でした。それ以来、「終わりよければすべてよし」と、少しだけ緊張から解放された気がします。

 

人生を物語と考えると、失敗は、淡々と進んでいた日常を大きく変える起爆剤になります。平坦な毎日と、失敗や困難てんこ盛りの人生、どちらが良いかは悩みどころですが、はたから見て面白いのは間違いなく波乱万丈な方ですよね。

失敗が人生につきものならば、そこから学びつつ、最後はうまく着地させれば大丈夫。そんな「リカバリー精神」を持って、失敗が起きたときも「今、物語のクエスト地点に立ったんだ!」と勇者気分で楽しんでみてはいかがでしょうか。これらの絵本が、皆さんの「七転び八起き」の力になれば幸いです。

徳永真紀(とくながまき)


児童書専門出版社にて絵本、読み物、紙芝居などの編集を行う。現在はフリーランスの児童書編集者。児童書制作グループ「らいおん」の一員として“らいおんbooks”という絵本レーベルの活動も行っている。7歳と5歳の男児の母。

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絵本ナビ編集部
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