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月別児童書ランキングBEST10

【ランキング】2022年の児童書人気ランキング! 部門別に発表します。

2022年児童書売上ランキング【2022/1/1~2022/12/31】

2022年の1年間、絵本ナビで人気のあった児童書はどんな作品だったのでしょう。

ロングセラー読み物部門(総合ランキング)、新刊読み物部門、子ども実用部門、図鑑部門と、部門別に、2022年児童書人気ランキングを発表します!

さて、実際に昨年買われた本や、お気に入りの本はランクインされているでしょうか。また、見逃している本がないかどうかなど、楽しくチェックしてみて下さいね。

ロングセラー読み物部門(総合ランキング)

1位 ふたりはともだち

2022年に最も売れた児童書は‥‥‥?

2020年のランキングから引き続き、3年連続で『ふたりはともだち』! 

 

 

2022年ロングセラー読み物部門の年間第1位は『ふたりはともだち』

ふたりはともだち

仲良しのかえる、がまくんとかえるくん。ふたりの間で繰り広げられるのは、濃くて、可笑しくて、ちょっぴり切ない……様々な愛すべきエピソード。アーノルド・ローベルの「がまくんとかえるくん」シリーズは幼年童話の傑作として、子どもから大人まで、たくさんの人たちに40年以上も愛され続けています。

そのシリーズ第1作目が『ふたりはともだち』、5つのお話が収録されています。

春が来たからと大急ぎでがまくんの家に走っていき、「おきなよ!」と大きな声で呼びたてるかえるくん。お日さまがきらきらして、雪も溶け、新しい一年がはじまったかと思うと、いてもたってもいられないのです。ところが、がまくんは布団の中。もう少し寝ていたいのです。11月から眠っているがまくんは「5月半ば頃にまた起こしてくれたまえよ。」なんて言うのです。そこで、かえるくんは……?

がまくんを外に連れ出して遊ぶためなら頭の回転だって早くなるかえるくんと、カレンダーに合わせて簡単に5月だと思い込んでしまうがまくん。最初のお話「はるがきた」で、幼さと可笑しさがたっぷり詰まったふたりのキャラクターを存分に味わうことができます。

続く「おはなし」と「なくしたボタン」では、それぞれのやり方でお互いを思いやっている様子(大いに巻き込みながらね)を、「すいえい」ではちょっぴりブラックな面をのぞかせつつ、思いっきり笑えるエピソードを披露してくれます。

すっかりふたりの世界観に夢中になった頃、登場するのが最後の「おてがみ」です。

悲しそうな顔で玄関にすわっているがまくん。なんでも「もらったことのないお手紙を待つ時間」なんだと言うのです。それを聞いたかえるくんは、がまくんに内緒でお手紙を書くことにします。ところが、配達を頼んだのがかたつむりくんだったので……。

国語の教科書に採用されたことで、今では多くの子どもたちに知られているのがこのお話。いずれ届くことも、その内容までもわかっているお手紙をじっと待つがまくんとかえるくん。その幸せそうな様子に、「手紙」の持つ力を感じずにはいられませんよね。

シリーズ4冊。がまくんとかえるくんのキャラクターを知れば知るほど、どのお話も読み返したくなる珠玉のエピソードばかり。日本では三木卓さんの翻訳で楽しむことができます。
(磯崎園子  絵本ナビ編集長)

http://www.ehonnavi.net/ehon00.asp?no=373 国語の教科書に載っている「おてがみ」のワンシーンより。
https://www.ehonnavi.net/specialcontents/contents.asp?id=416 訳者・三木卓さんのインタビューはこちら

2位 ぼくはめいたんてい(1) きえた犬のえ(新装版)

2022年ロングセラー読み物部門第2位は、はじめて読む本格探偵物語としてもおすすめ。名探偵ネートと一緒にナゾを解こう!

ぼくはめいたんてい(1) きえた犬のえ(新装版)

9歳のネートは探偵です。
今日もネートの元に1本の電話が入りました。
仲良しの女の子アニーから、なくなった絵を探してほしいとの依頼です。

すぐにアニーのところへ駆けつけるネート。
まず、アニーの話をじっくり聞き、部屋の中をくまなく調べます。
次に、その絵を見た他の人たちー仲良しのロザモンド、弟のハリー、犬のファングについて丁寧に調査していきます。
はたしてネートは、アニーのなくなった絵を発見することができたのでしょうか。

一見、すぐに解けそうと思わせておきながら、意外になかなか解けないナゾの面白さと、ネートのツボを押さえた探偵ぶりに子どもも(大人も!)たちまち心を掴まれてしまいます。
また9歳という年齢でありながら、どんなナゾが来ても常に落ち着き、周りから頼りにされているネート。子どもたちは、自分と同じぐらいの年齢の子の活躍とカッコよさにたちまち憧れてしまうのではないでしょうか。一方でパンケーキが大好物で、気が付けばいつもパンケーキを食べているところには親しみを感じてしまいますね。

こちらは、1982年の発売以来、たくさんの子どもたちに愛され、読み継がれてきた「ぼくはめいたんてい」シリーズの第1巻目。マージョリー・W・シャーマットさんによる全17巻となるこちらのシリーズは、5歳ぐらいから小学校低学年の子どもたちにちょうど良いハラハラさで、子どもたちがはじめて物語の楽しさに出会えるシリーズでもあります。つぎつぎにネートに降りかかるナゾ解きの面白さはもちろんのこと、巻ごとに増えていく個性的な登場人物、ネートからママへの置き手紙の内容など、読めば読むほど多くの楽しみをも発見できるでしょう。

すべての漢字にふりがながついているので、はじめての読み物としてもぴったり。ひとり読みに移る前に、まずは読んであげながら親子で一緒にナゾ解きを楽しんでみるのもいいですね。シーモントさんの温かくユーモアたっぷりの挿絵と、訳者の小宮由さんの柔らかな語り口も、子どもたちの読書をやさしく応援してくれます。お話の最後には「めいたんていのこころえ」もついていて、もし周りでなにかナゾが起きた時の役に立つかも!? さあ、ネートとどんどんナゾを解いて、一緒に名探偵になろう!

(秋山朋恵  絵本ナビ編集部)

http://www.ehonnavi.net/ehon00.asp?no=11928 魅力的な登場人物もいっぱいで楽しい♪
https://www.ehonnavi.net/specialcontents/contents.asp?id=84 「ぼくはめいたんてい」シリーズの魅力とは!?

3位 エルマーのぼうけん

2022年ロングセラー読み物部門第3位は、幼年童話の最高峰ともいわれる冒険物語!

エルマーのぼうけん

さあ、リュックサックに道具をつめて、エルマーと一緒に冒険の旅に出発しよう!

これは僕の父さん、エルマーが小さかった頃のある冒険のお話です。ある雨の夜、エルマーは、年取ったのらねこから、「どうぶつ島」に捕らえられているかわいそうなりゅうの話を聞きます。りゅうは、空の低いところに浮いていた雲から落っこちてきたちっちゃな子どものりゅうで、ジャングルの猛獣たちに捕まえられて、川を渡るために働かされているというのです。

エルマーは、すぐに助けに行こうと決心します。早速ねこにどうぶつ島のことや、持っていくものを教えてもらい、旅の準備に取り掛かります。エルマーがリュックサックにつめたのは、「チューインガム、ももいろのぼうつきキャンデー二ダース、わゴム一はこ、くろいゴムながぐつ、じしゃくが一つ、はブラシとチューブいりはみがき‥‥‥」などなどたくさんの道具。そして「どうぶつ島」へと繋がる「みかん島」行きの船に忍び込んだエルマーは、六日六晩たってようやく「みかん島」へ。ここで食料のみかんをリュックいっぱいに詰め込んで、夜の間に「どうぶつ島」へと渡ります。

「どうぶつ島」へ着くと、早速りゅうがつながれている川を探しに、気味の悪いジャングルの中を歩いていくエルマー。ジャングルでは、おかしな喋り方をするねずみや、うわさ好きのいのししに出くわしたり、とら、さい、ライオンなど恐ろしい猛獣たちにつぎつぎと出くわします。猛獣たちはたいていお腹をすかせていて、食べられそうになることもしばしば。さてエルマーは、どんな風に猛獣たちの危険をくぐり抜け、どうやってりゅうを助け出すのでしょうか?

特に注目したいのは、リュックサックに詰めた道具たちの活躍と、見返しに描かれた「みかん島とどうぶつ島のちず」。道具は、はじめはこんなものが何の役にたつのだろう? と思ってしまいそうなアイテムばかりなのですが、エルマーの知恵も合わさって、驚くほどぴったりはまって役に立つ様子にワクワクさせられます。道具を介した猛獣たちとのやりとりもユーモアたっぷり。何回読んでも繰り返し楽しませてくれる場面がいっぱいです。
「みかん島とどうぶつ島のちず」には、エルマーが冒険した場所や、エルマーの足取りが細かく描かれています。地図を見ながらお話を読み進めていくと、よりエルマーと一緒に冒険しているような臨場感が味わえるでしょう。お話の途中で、また一章ごとに、お話を読み終えた後になど、ぜひ地図をたっぷり眺めながら読んでみて下さいね。

日本では、1963年の刊行から50年以上も読み継がれ、幼年童話の最高峰とも呼ばれる本書。作者は、ニューヨーク生まれのルース・スタイルス・ガレットさんという女性で、このお話でニューベリー賞(アメリカで毎年最もすぐれた児童文学作品に与えられる)を受賞しています。さし絵は、お継母さんのルース・クリスマン・ガネットさんによるもの。細かいところまで丁寧に描かれながらも、ユーモアあふれる魅力的なエルマーやりゅう、猛獣たちのさし絵が、物語を一層楽しく盛り上げます。さらに英語版の文字の大きさや書体を決めたのは旦那様のピーターさんだそうで、刊行時は、家族総出でこの本を作るのに取り組まれていたそうです。

この後も、『エルマーとりゅう』『エルマーと16ぴきのりゅう』と続いていく、エルマーとりゅうのとびきりの冒険と友情の物語。内容は5才ぐらいから楽しめるかと思いますが、子どもがひとりで読むのは小学2年生ぐらいまでは難しいのではということと、なかなかのハラハラドキドキの冒険となりますので、はじめはぜひ大人が読んで聞かせてあげて下さいね。
(秋山朋恵  絵本ナビ編集部)

http://www.ehonnavi.net/ehon00.asp?no=534 エルマーはどうぶつ島でつぎつぎにおそろしい!?動物たちと出会います。

2022年ロングセラー読み物部門第4位 なぞなぞのすきな女の子

昨年の7位から急上昇! なぞなぞ遊びの楽しさがたっぷり詰まったお話は、毎月人気の1冊です。

なぞなぞ遊びは好きですか? 答えるのも楽しいけれど、なぞなぞを出すのも楽しいですよね。特に答えられないような、なぞなぞが出せたら!

この本は、そんな、なぞなぞが大好きな女の子が主人公のお話です。女の子は、一緒に遊べるお友達を探しに森に出かけ、はらぺこオオカミと出会います。お母さんとなぞなぞ遊びをいつもしている女の子は、オオカミにぴったりの、何やら長いなぞなぞを出しました。オオカミは一生懸命考えるのですが、長いなぞなぞに、答えがいっぱい出て来てしまい…あらら? なぞなぞの答えは一つ、ですよね。さあ、オオカミは答えられるでしょうか? 

いい考えを出すには、手を頭にあてて目をつぶって考えるといいのよと、アドバイスする女の子。オオカミが目をつぶって考えているうちに、逃げてきてしまうなんて、何て頭がいいんでしょう! 間が抜けたオオカミとおりこうな女の子の楽しいお話が2話入っています。オオカミの表情がユーモラスで、くすくす笑ってしまいそうですね。(そうそう、女の子のお母さんのなぞなぞの出し方もとてもすてきなので、こちらにも注目下さいね。)

本の見返しにも、楽しいなぞなぞがたくさんのっているので、ぜひお子さんと挑戦してみてくださいね。このお話はもともと、作者の松岡享子さんが、人形劇のために作ったそうですよ。手袋や布でオオカミ、女の子、うさぎなどを作って演じてみても、楽しそうですね。
(長安さほ  編集者・ライター)

http://www.ehonnavi.net/ehon00.asp?no=1248

2022年ロングセラー読み物部門第5位 おおきなおおきなおいも

毎年人気の作品ですが、2021年の11位より急上昇でベスト10入りです。

おおきなおおきな おいも

いよいよ明日はいもほり遠足。あおぞらようちえんの子ども達は、それはそれは楽しみにしています。ところが…当日は雨。いもほり遠足は一週間延期です。先生は仕方ありませんねって言うけれど。

「つまんない つまんない」

でも大丈夫。おいもは7つ寝ると、いっぱい大きくなって土の中で待っててくれるんですって! そのおいも、どのくらい大きくなっていると思う? 子ども達は想像しているうちに紙に描いてみたくなりましたよ。大きな大きな紙を用意して、それでも足りないからのりで貼り合わせてもっと大きくして。絵具を筆で「ごし ごし しゅっ しゅっ」「ぴちゃ ぴちゃ しゃっしゃっ」…もっと紙を足して。もっともっと。

ああーーーすごい!!
絵の具で描いたおいもの大きいこと、大きいこと。
先生もびっくり仰天。

「こーんな大きなおいも、どうやって掘り出すの?」

さあさあ、そこから子どもたちの素敵な想像の世界が膨らんでいきます。
綱引きみたいにして引っこ抜いて、ヘリコプターでようちえんまで運び、みんなで洗ったら、プールに浮かべ…!?

発売から40年以上経ってなお読まれ続けているこのお話。実際の園での遊びからヒントを得て作られたのだそう。自分たちの想像を超えたとんでもなく大きなおいも。そのインパクトは一度読んだら忘れることはありません。「いもざうるす」や「おいもパーティ」、印象に残っているシーンは沢山あるけれど、その全てがシンプルな線画。そこに効果的に使われているのが、サツマイモを思わせる紫一色のみというのも驚かされます。それでも子どもたちの生き生きと動き回る様子や、先生の役割、主役であるおいもの桁外れな存在感が伝わってくるからです。

いもほり遠足の前に。雨で退屈になっている子どもたちに。お絵描きやごっこ遊びが大好きな子どもたちに。子ども達の心を存分に刺激してくれる絵童話です。

(磯崎園子  絵本ナビ編集長)

http://www.ehonnavi.net/ehon00.asp?no=241

2022年ロングセラー読み物部門第6位 はれときどきぶた

2020年に40周年を迎えた『はれときどきぶた』。いつ読んでも何歳で読んでも変わらぬ面白さが魅力!

はれときどきぶた

三年三組。畠山則安。あだなは、十円やす。じまんは毎日、日記をつけていること。けれどもある日、大事な日記をお母さんが勝手に読んでいるところを目撃してしまった則安くんは、腹を立て、「あしたの日記」としてへんなことを書き始めます。トイレに大蛇がいた! お母さんが鉛筆を天ぷらに! 金魚が飛び回る、お母さんの首がのびた、そして空からぶたが降る!? はたして日記を書いた後に起きたこととは?

1980年に刊行され、40年近くにわたり読み継がれてきた『はれときどきぶた』。子どもの頃に読んだという大人の方もたくさんいらっしゃることでしょう。大人になって『はれときどきぶた』を思い出した時に頭をよぎったのは、本の中のエピソードの記憶。特に、鉛筆の天ぷらの記憶は五感とともに残っていて、食べたことはないのに口の中で鉛筆の味がしたり、ガリガリと固い感触がしたり、則安くんのお父さんと同じようにお腹が痛い気までしてくるようで、子どもの頃にお話を読んで感じた感覚がそのまま蘇ってくるようでした。さらに、空からぶたが降るのか、降らないのか、という場面では、心配そうに空を眺める則安くんと同じく、この後どうなるのだろうと不安とワクワクが混ざったような気持ちになったことを思い出したりも。そんな風に、子どもの頃に読んだ記憶が心の深いところに残り続けることがこの作品の持つすごい力ではないかと思います。

子どもたちは、とにかく一度手にとってページをめくったら、あとはもうどんどん読めてしまうでしょう。
まずお話の最初の方で、お母さんが勝手に日記を読んでいたことに衝撃を受け、則安くんと一緒に腹を立てるでしょうし、「あしたの日記」にへんなことを書いてお母さんをぎゃふんと言わせてやろうという則安くんの気持ちにたちまち入り込んでしまうのではないでしょうか。

対象年齢は、主人公の則安くんと同じ小学3年生ぐらいからがちょうど良いかと思いますが、5、6年生でも読んだことがない子がいたらおすすめしたいと思います。内容を考えると、ひとりでこっそり読む方が面白いと思うので、読み聞かせには向かないかもしれません。
ひとり読みのはじめの段階に、もしくは、最初の面白い本との出会いの1冊として、声を大にしておすすめしたい作品です。1巻目が気に入ったら、「はれぶた」シリーズとして10巻まで出ていますので、ぜひ続けて読んでみて下さいね。

大人の方が読む場合には、あとがきに書かれている作者のメッセージにもぜひご注目を。たとえ人から「ばかなこと」だと思われるようなことでもいろいろなことを自分の頭で考えることの大切さや、自分の感じたこと、考えたことをちゃんといえるようにならなくちゃいけないというメッセージに、面白おかしいだけではない、『はれときどきぶた』が長く読み継がれる秘密が伝わってきます。
(秋山朋恵  絵本ナビ編集部)

http://www.ehonnavi.net/ehon00.asp?no=12827
https://www.ehonnavi.net/specialcontents/contents.asp?id=462 貴重な矢玉四郎さんインタビューもお楽しみ下さい♪

2022年ロングセラー読み物部門第7位 番ねずみのヤカちゃん

とてつもなく声が大きいヤカちゃん、大活躍!

番ねずみのヤカちゃん

ドドさん夫婦の家の壁と壁のすき間に住む、おかあさんねずみと、四ひきの子ねずみ。そのうち四ひき目は、「やかましやのヤカちゃん」とよばれていました。
どうしてこんな名前がついたかって?

それはね…このヤカちゃん、とてつもなく声が大きかったからなんです。

たとえばこんな風。おかあさんねずみが、ドドさん夫婦に存在を気づかれないよう「けっして音をたててはいけない」と注意している時も「うん、わかったよ、おかあさん」と答える声のなんと大きいこと!他にもおかあさんねずみの注意に対して、全部うんと大きな声で答えるヤカちゃんのお返事の繰り返しが何とも愉快でたまりません。でもお返事のしかたから、ヤカちゃんがとっても素直でまっすぐで良い子だということが伝わってきて、どんどんヤカちゃんを応援したくなってしまいます。けれどもやっぱりその大きな声のせいで、ドドさん夫婦の家にねずみがいることがばれてしまって…。ここからドドさん夫婦のねずみ退治作戦が始まります。ドドさん夫婦とヤカちゃんの対決の結末やいかに…?

繰り返しの楽しさや、ヤカちゃんの声の大きさ具合、ドドさん夫婦とヤカちゃんとのやりとり、ここぞという時に役に立つおかあさんねずみの歌など、注目したい楽しみ満載のこちらの読み物は、一度読んだら子ども達のお気に入りになるに違いありません。『なぞなぞのすきな女の子』でおなじみの大社玲子さんのさし絵もユーモラスで楽しく、特にころころ変わるヤカちゃんの表情と目の動きはみどころたっぷりです。

アメリカ生まれの詩人・翻訳家であるリチャード・ウィルバーさんによって書かれたこちらのお話は、アメリカでは1963年に出版された後、ストーリーテリングによって多くの子どもたちに親しまれているのだそうです。ぜひ日本でも、さまざまな場所で大人から子ども達へ声に出して読んであげると、一層楽しい世界が増すことでしょう。
さて、ヤカちゃんの大きな声のところはどんな風に読みましょうか。
(秋山朋恵  絵本ナビ編集部)

http://www.ehonnavi.net/ehon00.asp?no=6564

2022年ロングセラー読み物部門第8位 先生、しゅくだいわすれました

想像力を働かせて、先生をうならせるようなウソを考えよう! 読書感想文の時期にもとくに人気のあるお話です。

先生、しゅくだいわすれました

ある朝、宿題を忘れてしまったゆうすけくん。
このままだと、先生に「追加の宿題」をさせられる!
とっさに、おなかが痛くて宿題ができなかったとウソをつきますが、話すうちにどんどんボロが出て、結局バレてしまいました。

「ウソつくなら、すぐばれるようなのはだめだよ。もっと、ばれないようなので、それから、聞いた相手が楽しくなるようなのじゃなくちゃ」

そう言ってニヤリと笑う、えりこ先生。
それなら、よーし、見てろよ!

「先生、しゅくだい忘れました!」

次の日、さっそくはりきってそう報告したゆうすけくん。
理由をきかれて、さあ、待ってました!
ぼくが宿題できなかったのは・・・宇宙人のせいなんです!

「先生、おれ、たぶん明日宿題忘れます」
「ずるい。明日はわたしが忘れようと思ったのに」
「おれも宿題忘れたい」
「じゃあ、順番にしようよ」

そうしておかしなことに、みんなは順番に「宿題を忘れる」ことにしました。
どうして宿題をすることができなかったのか、そのおかしな理由を毎日ひとりずつ話していく、クラスのみんな。

ところが、その日に宿題を忘れてきたのは……なんと、えりこ先生!

「あんまり賢くない宇宙人のせい」や、「野ネズミの恩返しのせい」など、クラスのみんなが話す、「宿題をできなかった理由」がとってもユニークです。
ウソをただウソとかたづけずに、想像力を自由に遊ばせる方法としてとらえ直すその考え方に目からウロコ!
なるほど、ウソのいなし方にはこんな方法もあるのかと、納得させられます。

物語をつむぐ楽しさ、そしてそのむずかしさを描いた、胸躍ることうけ合いの一冊です。

「そりゃあ、プリント作るの忘れてもしかたないね」

クラスのみんなも納得、えりこ先生が宿題を忘れた、その壮大な理由とは?
(堀井拓馬  小説家)

2022年ロングセラー読み物部門第9位 ルドルフとイッパイアッテナ

ノラ猫として生きていくのに大事なこととは?

ルドルフとイッパイアッテナ

ひょんなことから、長距離トラックで東京にきてしまった黒猫ルドルフ。土地のボス猫と出会い、このイッパイアッテナとの愉快なノラ猫生活がはじまった……。

まるごと猫の視点で語られるところが何より面白い1冊! 飼い猫からノラ猫の世界に突然入り込んだルドルフに、ノラ猫として生きていくのに大事なことを教えてくれるイッパイアッテナ。勉強することがなぜ大事なのか、どんな風に役に立つのかということも彼の手にかかれば深く納得できてしまうから不思議です。次第にめばえていくアツい友情にもご注目下さいね。

「ルドルフ」シリーズ

2022年ロングセラー読み物部門第10位 ネコのタクシー

タクシーを走らせるのはエンジンではなく、ネコの足!?

ネコのタクシー

 

ネコ専門動物病院の、キャットドクター!?
異色の経歴を持つ著者が描くのは、タクシードライバーになったネコの物語。

黒くてピカピカのタクシー。
1ポンド硬貨の乗車賃。
ランチのフィッシュ・アンド・チップス。
そう、舞台はイギリス!
主人公のトムは、足の速いのが取り柄のネコ。
港の倉庫で生まれましたが、今ではタクシー運転手であるランスさんの飼いネコです。

ある朝、うっかり階段から落っこちて、ランスさんが足の骨を折ってしまいます。
とてもタクシーを運転することはできません。
そこで、トムはランスさんにこう提案します。

「ぼくにも運転できるタクシーを作ってください。小さなネコのタクシーを。そうすれば、ぼく、仕事をしますから」

ネコにタクシーができるものだろうかと疑いながらも、熱心なトムのために小さなタクシーをこしらえるランスさん。
ハンドルはついていますが、エンジンはありません。
駿足自慢のトムが、足を使って走るのです!

自転車にひかれてしまった子ネコを運んだり、自分の結婚式に遅刻しそうなネコを乗せたり、ときには大変な騒動に巻き込まれながらも、特技を活かしてタクシードライバーをこなすトム。

ところがそんなある日、トムはとんでもない事件の現場に居合わせてしまうのです――

ネコ専門の獣医さんによる、さすがのネコ愛にあふれた、愛らしくてあたたかな物語です。

黒くてピカピカの車体と、クラシックなデザインで有名なロンドンタクシー。
そんなロンドンタクシーが小さくなって、しかもネコが運転しているというのですから、かわいいに決まっています!

捕まえたネズミはテーブルに置いたらダメ?
タクシーに乗せてあげたら、お金をもらわなくちゃいけない?
もともと野良ネコだったトムは、自分とはちがう人間の価値観に戸惑ったり、不思議に思ったり……

ものごしやわらかで、仕事に対してもていねいでまじめ、それでいてときには情熱的!
そんなトムの魅力あふれるキャラクターが、いちばんのみどころ!
小さなネコのタクシーとトムの活躍を、もっともっと読んでいたくなる、ワクワクの一冊です。

(堀井拓馬  小説家)

http://www.ehonnavi.net/ehon00.asp?no=15263

2022年のロングセラー読み物部門売上ランキング 第11位から20位は?

第11位は、課題図書の中学年の部に取り上げられ、大人気となったこちらの作品!

いくらチョコレートが大好きでも、口に触れたものすべてがチョコレートになってしまったら!!

チョコレートタッチ

ジョンは勉強も音楽の楽団の活動もがんばる男の子。でもひとつ、こまったことがあります。それはお菓子に目がないこと。特にチョコレートが大好きなのです。

ある日ジョンは、太った男の子の絵と自分の名前と同じ頭文字「J.M.」が書かれた古いコインを拾います。そして、そのコインを使って、初めて見るお菓子屋さんの主人から特別なチョコレートを買いました。すると翌朝から不思議なことが起こります。ジョンの口に触れたものすべてが大好きなチョコレートに変身するのです!

歯磨きもジュースも朝食のベーコンエッグも、みんなチョコレートになりました。はじめは喜んでいたジョンですが、飲み水、給食のおかず、楽団のトランペットまでもがチョコレートになってしまい困惑します。不思議な力「チョコレートタッチ」を手にしたジョンは、お友達には嫌われてしまい、とうとうママまでチョコレート像になってしまって……。

このお話は、ギリシャ神話「ミダスタッチ」をモチーフにして描かれています。触れるものすべてが黄金となる願いをかなえた王さまのお話です。しかし王さまは、自分の強欲さに後悔することになります。このお話の主人公の名前も、実は「ジョン・ミダス」なんですよ!

作者のパトリック・スキーン・キャトリングは子ども向けから大人向けまで多くの本を執筆し、ジャーナリストとしても活躍したイギリス生まれの作家さんです。本作『チョコレートタッチ』が初めてアメリカで出版されたのは1952年。それから現在に至るまで世界中で読み継がれています。70年も前に作られたお話ですが、今の子どもたちも共感すること間違いなし。青少年読書感想文全国コンクール2022年の課題図書(小学校中学年の部)にも選出されています。

(出合聡美  絵本ナビライター)

新刊読み物部門(2022年発売作品よりベスト10)

次は、2022年に発売された児童書の新刊読み物部門の人気ランキングを発表します。

さてどんな新刊がランクインしたのでしょうか。

新刊読み物部門第1位 こどもに聞かせる一日一話 「母の友」特選童話集(2022年9月発売)

昨年(2022年)11月にお亡くなりになられた、福音館書店の相談役であった児童文学者の松居直さんは「母の友」創刊号の編集者でもありました。この本のあとがきには、「母の友」の「子どもに聞かせる一日一話」の企画について、松居さんのお母様との絵本読みの思い出とともに、子どもにお話を読んで聞かせることへの思いが綴られています。

絵本の人気者たちの未単行本化作品も読める贅沢な1冊!

こどもに聞かせる一日一話 「母の友」特選童話集

「こどもに聞かせる一日一話」は、福音館書店の雑誌「母の友」で長く続く人気企画です。短くておもしろい童話を30話一挙に掲載。気軽に読めて、子どもとおとなが一緒に楽しめると毎年好評をいただいています。この本には、21世紀以降、約20年分の「一日一話」から選んだ楽しいお話を中心に『ぐりとぐらのピクニック』や『だるまちゃんとうらしまちゃん』など、過去に「母の友」だけに掲載された、絵本の人気者たちの未単行本化作品を収録しています。

  

http://www.ehonnavi.net/ehon00.asp?no=176624
http://www.ehonnavi.net/ehon00.asp?no=176624

新刊読み物部門第2位 クマのプーさんのむかしむかし すべてがはじまるまえのお話(2022年6月発売)

クマのプーさんのむかしむかし すべてがはじまるまえのお話

クマのプーさんのむかしむかし すべてがはじまるまえのお話

出版社からの内容紹介

1926年に出版した『クマのプーさん』よりも前にあったことを描いた10の物語で、公式の過去編「プリクエル(前日譚)」です。クリストファー・ロビンとプーの、新たな世界へようこそ!

http://www.ehonnavi.net/ehon00.asp?no=176074
http://www.ehonnavi.net/ehon00.asp?no=176074

新刊読み物部門第3位 ふたりはしんゆう がまくんとかえるくん ぜんぶのおはなし(2022年2月発売)

この一冊で『ふたりはともだち』『ふたりはいっしょ』『ふたりはいつも』『ふたりはきょうも』の4冊が読める、贈り物にもおすすめの一冊!

ふたりはしんゆう がまくんとかえるくん ぜんぶのおはなし

出版社からの内容紹介

ふたりきりで すわっている かえるくんと がまくんは、しんゆうでした。― 日本で誕生してから50年。『ふたりはともだち』『ふたりはいっしょ』『ふたりはいつも』『ふたりはきょうも』4冊の大判合本。贈り物に最適な一冊。

http://www.ehonnavi.net/ehon00.asp?no=174166
http://www.ehonnavi.net/ehon00.asp?no=174166

新刊読み物部門第4位 スノーマン クリスマスのお話(2022年10月発売)

世界中で愛される絵本『スノーマン』が、イギリスを代表する児童文学作家マイケル・モーパーゴの手により物語に!

スノーマン クリスマスのお話

ジェームズは、お父さん、お母さん、牧羊犬のバーディと一緒にいなかの農家で暮らす男の子。毎年クリスマスにはおばあちゃんがやってきて、大好きな『スノーマン』の絵本を読んでくれます。クリスマスイブが明日に迫った日、いつものように絵本を読んでもらったジェームズは、ベッドの中で『スノーマン』のお話のことを考え、雪が降って『スノーマン』のお話のようにならないかなあ、と考えます。でもいくら窓の外をながめても雪は見えません。

しかし眠っているうちにいつの間にか雪が降りはじめて、目が覚めた時には、外は真っ白。ほんとうの雪が降ったのです。ジェームズも犬のバーディも、こんなに積もった雪を見るのははじめてでした。雪でたくさん遊んだ後、ジェームズは庭の中で一番好きな「ナラノキ畑」にスノーマンを作りはじめます。はじめは小さかった雪の玉はだんだん大きくなって雪の体となり、頭部分ははしごを使わないと届かないほど大きなスノーマンに。耳にはリンゴ、鼻にはミカン‥‥‥。さらにうれしそうな笑顔になるようにあるものを加えるとスノーマンが完成しました。

「ぼくは、このうれしそうなスノーマンがなによりも大すき!」
そしてその晩ジェームズに起きたある奇跡とは!?

子どもにとっての願いや幸せがたくさん詰まっている、やさしくて温かな物語。うまくできたスノーマンを家族が見に来て褒めてくれる場面、『スノーマン』の絵本をいつも読んでくれるおばあちゃんと共有したある体験、クリスマスプレゼントに欲しいものが届くかどうかを心配する気持ち。欲しいものの理由に隠れたジェームズの一番の切なる願い‥‥‥。

1978年に発表されて以来、世界中で愛されているレイモンド・ブリッグズの絵本『スノーマン』が、絵本の雰囲気そのままに、『スノーマン』の世界に憧れる男の子の物語としても誕生しました。お話をつけたのは、イギリスを代表する児童文学作家マイケル・モーパーゴ。さらに、アニメ『スノーマン』を担当したロビン・ショーによるたくさんのイラストが満載の豪華な一冊です。なぜ、文字のない絵本に敢えて物語をつけたのか? について、マイケル・モーパーゴの思いがつづられたあとがきも必見です。さらに巻末には、「世界のクリスマス」を紹介するページや、「かんぺきなスノーマンをつくるには」というスノーマンの作り方が紹介されているとびきり嬉しいページも! このお話を読んだ後、もし雪が降ったら、スノーマンづくりに挑戦してみませんか。

子ども時代に『スノーマン』のお話と出会ったならば、想像の世界が心の中に作られて、大人になっても「スノーマン」と耳にするだけで、きっとその場所のことを思い出せるはず。そんな貴重な場所が作られることを願って、ぜひ小学生に届けたいお話です。

(秋山朋恵  絵本ナビ編集部)

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新刊読み物部門第5位 父さんのゾウ(2022年8月発売)

悲しみにどう立ち向かっていけば良いのか‥‥‥子どもの心の内にある感情を丁寧に描く物語

父さんのゾウ

オリーブは小学生の女の子。オリーブの父さんのとなりには、オリーブだけに見える灰色のゾウがいます。いつからいるのかといえば、オリーブが赤ちゃんだった時にママが亡くなってからずっとです。父さんに影を落とす大きくて灰色のゾウ。ゾウは、父さんの悲しみそのものなのです。

オリーブの身の回りの世話をしてくれるのは、やさしいおじいちゃんです。おじいちゃんは家事を楽しんでやり、毎日手の込んだ美味しいお弁当を作ってくれます。学校のお迎えにも来て、オリーブがワクワクするようなことも考えてくれます。
また、オリーブが悲しい気持ちの時には、小さな灰色の犬のフレディがいつもそばにきてなぐさめてくれます。

ある日、100周年を迎える学校の創立記念パーティに向けて、くらしの中やおうちの中にある古いものについて調べ、発表することになったオリーブ。すぐに、昔ママが使っていた自転車を持って行きたいと考えますが、父さんは自動車整備工でありながらも、なかなか直してくれません。

「オリーブがお父さんを元気にしないと、いつまでたっても自転車を直してくれないよ」そんな親友の言葉に背中を押されて、オリーブは、おじいちゃんや親友の手をかりて父さんのゾウを追い払おうと試みます。はたしてオリーブは、父さんのゾウを追い払うことができるのでしょうか。

対象年齢は小学校中学年ぐらいからですが、大人の方にも読んでほしい一冊です。ページ数は144ページと読み応えがありますが、横書きで進んでいく文章は読みやすく、ところどころに入ったやさしいタッチの挿絵も、子どもたちが無理なく読み進めていく時の助けとなることでしょう。子どもたちが読んだら、オリーブの感性にすっと共感して、オリーブとすぐに友だちになってお話に入っていくのではないかと思いますし、一方大人が読むと、子どもたちが見ている世界の繊細さにハッとさせられるのではないでしょうか。

物語の後半には、父さんのゾウを追い払う行動や、心にずっと閉じ込めていた自分の気持ちを外に出すことを通して、オリーブにも大きな変化が訪れます。その場面には、すっかり理解したつもりでいたオリーブの気持ちをあらたに発見する驚きが隠されていて、最後まで読んだ後には、物語をもう一度最初から読み返したい気持ちに駆られました。

オーストラリアのクイーンズランド文学賞児童書部門の大賞を受賞し、各国で翻訳されているという本書は、子どもの心の内にある感情を丁寧に描く物語。悲しみにどう立ち向かうべきかとまどっている子どもにも、悲しみの中にいる大人にもそっと寄り添ってくれる優しさに満ちています。

 (秋山朋恵  絵本ナビ編集部)

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新刊読み物部門第6位 けんかのたね(2022年2月発売)

けんかのたね

忙しい一日を終えたお父さんが家に帰ると、家の中は大さわぎ! いぬは、ねこをおいまわし、4人のきょうだいは大げんか。「いったい、だれをしかっていいのやら……」と途方にくれるお母さん。

「わたしは、わるくない!」と、いちばん上のおねえちゃんのドラ。
「ちがう! ぼくのせいじゃない」と弟のフランク。
「あたしのせいじゃない」と妹のエミリー。

つぎつぎに自分のせいじゃない! といいわけする子どもたち。
一方、いぬのボンゾーとねこのプッスはいいわけができません。

結局すえっ子のミーナの言い分から、もめごとのはじまりはねこのプッスということに。でも本当は違っていて……。

悪者扱いをされて面白くないプッスが向かったのは、ねずみのところ。「もとはといえば、おまえがわるいんだよ!」とねずみに襲いかかろうとするプッスに対して、ねずみは意外な行動をとって……。ここから流れが一気に変わります!

ひとつの「たね」からどんどんもめごとが繋がっていくさまと、その逆が起こっていくさまを同時に目のあたりにできるところが、このお話の面白さでしょう。とくにドタバタのケンカ劇が修復していくさまには、しっかりと心に残るメッセージがあります。子どもたちにとっても大人にとってもどこか身に覚えのある身近な日常の光景だからこそ、より心に響いてくるものがありそうです。

『おやすみなさいフランシス』でおなじみのラッセル・ホーバンさんが描く、ユーモラスながらも心に残る温かい家族のお話。小宮由さんの生き生きとした会話で進む語り口は、子どもたちに読んであげるのにもぴったり。登場人物のセリフの口調の違いからそれぞれの性格もよく伝わります。挿絵を描かれているのは、小学校の国語の教科書の表紙画なども手がけられている大野八生さん。けんかというテーマを和らげる、大野さんの明るくコミカルな絵は親しみやすいですね。中でも特にいいなと思った挿絵は、「けんかのたね」がどんどん繋がっていく様子がひと目で分かる表紙と、ねずみが丁寧に暮らしていることが伝わる壁の中のねずみの住まいの様子の絵。ぜひお話と一緒に楽しい挿絵の細部も楽しんでみて下さいね。

小学1年生ぐらいから大人の方まで、幅広い年齢の方におすすめしたい絵童話です。

(秋山朋恵  絵本ナビ編集部)

新刊読み物部門第7位 日々臆測(2022年12月発売)

日々臆測

児童文学総合誌「飛ぶ教室」での人気連載「日々臆測」が単行本化! 絵と文で綴られた 臆測の記録 90話と小さいお話たちを一冊にまとめました。臆測派の方々も、そうじゃない方々も、ぜひ。

「臆測でものを言うな」。大人の世界では、よく言われる言葉です。まったくその通りだと思います。しかし、そんなことがよく言われる必要があるくらい、世の中は臆測で満たされているのかもしれません。かくいう私も、日々、臆測ばかりしています。――――本書「はじめに」より

新刊読み物部門第8位 お月さまになりたい(2022年12月発売)

お月さまになりたい

学校の帰り、へんな犬に出会った「ぼく」。どうの長い、白と茶のぶちの犬です。ぼくはまっ白い犬が好きだから、白い犬だったらかってやるんだけど……と思ったとたん、犬はまっ白に! そのうえ「こうなれば、かってくれますね」なんて口がきけるのです。犬は、「じぶんがなりたいものになれる」といいます。でもぼくがふざけてリクエストしたものはおことわりです。ぼくの考えていることなんてちゃんと見抜いてしまう賢い犬なのです。

そんな犬とやり取りするうちに、すっかりこの犬が好きになったぼくは、一緒に楽しい時間を過ごします。
そして、日暮れが近くなったころ、犬から、なんにでもなれるといったけれど、まだうまくなれないものがあることを打ち明けられます。犬がどうしてもなれないのは「お月さま」。でもぼくには、冷たい岩のかたまりであるお月さまになりたいという犬の気持ちが、どうにもわかりません。けれどもどうしてもあきらめられない犬は真っ白い海鳥になって空をのぼっていき‥‥‥。はたして犬はお月さまになることができたのでしょうか。そして、犬が行ってしまったあとの夜空を見上げるぼくは、いったいどんな気持ちだったのでしょう。

お話の中には、幼い子どもたちが知っているであろう感情があちこちに溢れています。仲良くなりはじめの時に他の存在にやきもちを焼いたり、どうしてもお月さまになりたいと言い始めたらきかない理屈抜きの願いをもつ気持ち、わがままで信念を曲げない犬に反発する気持ち、無茶な挑戦をする犬を心配する気持ち‥‥‥。また、「ひとりぼっちはさびしい」という犬の気持ちや、「ともだちがほしいの?」というぼくの問いかけに「うんうん」と答える犬の孤独や切なさは、ぼくの内面にある気持ちと共鳴していて、犬とぼくは心を通じ合わせていきます。そしてそれはそのまま読者である子どもたちにも共鳴するからこそ、心に深く残るものがあるのでしょう。

このたび、半世紀前の1972年に『おつきさまになりたい』としてあかね書房から刊行された一冊が新たな絵童話として偕成社より蘇りました。当時の絵を手がけたのは。佐野洋子さんでしたが、今回の新版『お月さまになりたい』では100%ORANGEの及川賢治さんが全ページにカラフルでポップなイラストを描かれ、作品のユーモアと可愛らしさを存分に表現されています。中でも、たびたび登場する、左ページに犬の顔、右ページにぼくの顔が並ぶページは、それぞれと目が合って気持ちが伝わってくるようで、友だちのような身近さを感じることができそうです。

作者の三木卓さんは、詩人、小説家として数多くの賞を受賞されており、子どもの本の世界では「がまくんとかえるくん」シリーズの翻訳者として有名ですが、その他自作のユーモアあふれる温かな絵本や童話を手がけられています。本作でも時おりくすっと笑ってしまうようなユーモアがありながらも、いつの時代も変わらない子どもたちの気持ちがしっかり汲まれており、この先も長く読み継がれる一冊となっていくことでしょう。

(秋山朋恵  絵本ナビ編集部)

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新刊読み物部門第10位 特装版 車のいろは空のいろ(2022年11月発売)

特装版 車のいろは空のいろ

1968年に刊行以来、子どもから大人まで幅広い層の読者に世代をこえて愛読され続けてきたロングセラー「車のいろは空のいろ」シリーズの第1、2巻を豪華な特装版のセットでお届けします。
空いろのタクシーの心やさしい運転手、松井さんとふしぎなお客さんたちの織りなす物語は、いつの時代もかわらず読む人の心に寄り添い、安らぎとときめきをおくります。

【セット内容】
・書籍2冊(クロス装・箔押し・化粧箱入り)
『特装版 車のいろは空のいろ 白いぼうし』
『特装版 車のいろは空のいろ 春のお客さん』
・特製アートカード…北田卓史が描いた「車のいろは空のいろ」の名シーンの中から4場面を特製のカードにしました。
・特製リーフレット「思い出すままに」…各巻の収録作について、作者・あまんきみこが思い出すままに綴ったとっておきのお話です。

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子ども実用部門(既刊新刊問わず、総合ランキングをお知らせします)

2022年も、子どもたちにあらゆる知識を伝える実用書が次々に刊行されました。2022年は、絵本から生まれたレシピ本、雑学本、SDGSを学ぶ本などあらゆるテーマの本が人気だったようです。また、日本図書センター刊行の、「おやくそくえほん」「おさほうえほん」「あんしんえほん」「おまもりルールえほん」などもよく動いていました。

子ども実用部門第1位 パンどろぼうのせかいいちおいしいパンレシピ

パンどろぼうのせかいいちおいしいパンレシピ

パンどろぼうが探し求めたおいしいパンを作ろう!
柴田ケイコ原作の絵本に登場する「もりのパンや」に並ぶおいしそうなパンを作ることができるレシピ本。

基本の生地で作るパンどろぼうの食パンから、かわいいしろくまパン、メロンパン生地を使ったかめパンなどの動物パンから
ハード生地のフランスパン、おやつにもおかずにもなるパンなど絵本のパンがいっぱい!


わかりやすい工程で、子どもから大人まで誰もが楽しめるレシピ本です。

PART1:基本生地でチャレンジ! パンどろぼうの食パン
PART2:好きな生地で作る! 絵本の中のおやつパン
PART3:ココア生地を組み合わせて! かわいい動物パン
PART4:ハード系生地を味わう! 食事パン

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子ども実用部門第2位 おやくそくえほん はじめての「よのなかルールブック」

おやくそくえほん はじめての「よのなかルールブック」

「メシが食える大人」 になるための土台 として
小学校入学前後に身につけたい42の習慣を
「おやくそく」 として紹介!

一生役立つ習慣を、
こどもは楽しく納得しながら身につけられ、
親は怒らず自信をもって教えられる、
そんな本ができました! 

「どんなことを、どう伝えたらいいんだろう?」と
しつけに悩むお父さん・お母さんを応援する1冊です。

子ども実用部門第3位 大人も知らない? ふしぎ現象事典

大人も知らない? ふしぎ現象事典

「勉強しなさい」と言われると
勉強したくなくなる現象には
名前があったんです!

あなたも――
・テストの前の日になると部屋の掃除がしたくなる。
・同じアニメが好きな人とは、すぐに仲良くなれる。
・「期間限定」と書いてあるお菓子をつい買っちゃう。
・お手伝いでもらったお金は大事にするけど、お年玉でもらったお金はすぐ使っちゃう。
・かき氷を一気に食べると頭がキーンとなる。
そんな現象を体験したことはありませんか?
大人でも理由を答えられないような「ふしぎ現象」の名前と由来を
子どもに楽しく伝える雑学本!
大人も子どもも一緒に面白く読める一冊です!

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子ども実用部門の第4位から第10位の作品は下記になります。

図鑑部門(既刊新刊問わず、総合ランキングをお知らせします)

2022年も多くの図鑑が発売されました。ベスト10には、定番やロングセラーの図鑑が多く入っておりましたが、比較的新しい本の中では、2021年発売の『世界でいちばん美しい こども元素ずかん』がランク入りしました。

図鑑部門第1位 さわって学べる算数図鑑 

さわって学べる算数図鑑

足し算、掛け算、分数から、図形や立体まで、算数に関する様々なことを、しかけを通して体感できる図鑑です。説明を読んだり、計算したりするだけではわからなかったことも、いろいろな種類のしかけを使って直感的に理解できます。

算数が大好きになる体感型算数本!

算数って難しい、数や図形だけを見てもよくわからない。そう思ったことはありませんか? そんなときにぴったりなのが、『さわって学べる算数図鑑』です。

算数が得意な子どもは、数や図形を、文字としてではなく、実感できる量や重さで感じています。この本は、動かす・開ける・組み立てるなどの行動を通して、数や図形がどのようなものなのか、実感できる本です。

例えば、立体のページでは、展開図を組み立てるとどんな形になるか、実際にやってみることができます。また、分数のページではどの分数とどの分数が同じ大きさなのかが分かるしかけにより、通分や約分などの計算が、単に計算方法を覚えるのではなく、実感として理解できます。そのほか、かけ算とわり算の関係や、いろいろな形の特徴も、さわって遊びながら学べます。

すべての文字にルビがついているので、小学校1年生でも一人で読めます。親子で読むなら幼児でも楽しめます。親子で一緒にしかけを動かしたりクイズを出しあったりして、算数をおもいっきり楽しんでください。

http://www.ehonnavi.net/ehon00.asp?no=106520

図鑑部門第2位 小学館の図鑑 NEO POCKET -ネオぽけっと-昆虫

小学館の図鑑 NEO POCKET -ネオぽけっと-昆虫

 

図鑑といっしょに遊びにいこう!「NEO POCKET(ネオぽけっと)」は、
「小学館の図鑑NEO」から生まれたより自然と親しみ、いっしょに遊ぶための図鑑です。
美しい標本写真、充実した内容をコンパクトサイズに凝縮しました。
ポケット図鑑としては最大級! 約850種を掲載した決定版。
成虫だけでなく、卵や幼虫、さなぎなどの情報も満載し、
充実した見分けポイントや観察コラムは野外観察に最適です。

【指導・執筆】
小池啓一 (群馬大学 教育学部 教授)
小野展嗣 (国立科学博物館 動物研究部 研究主幹)
町田龍一郎 (筑波大学大学院 生命環境科学研究科 准教授)
田辺 力 (熊本大学 教育学部 理科教育学科 准教授)

図鑑部門第3位 タッチペンで音が聞ける! はじめてずかん1000 英語つき

タッチペンで音が聞ける!はじめてずかん1000 英語つき

大人気「はじめてずかん」のタッチペン版!

大好評の「はじめてずかん」にタッチペンつきが登場!
どのページにも楽しい写真がいっぱいです。

「どうぶつ」「とり」「きょうりゅう」「のりもの」「たべもの」
「パン・おやつ」「おすしやさん」「おもちゃ・ぶんぐ」「「しぜん」
「うちゅう」「スポーツ」「せかいのくに」「はる」「なつ」「あき」「ふゆ」など、
子どもに身近な1000の言葉をペンでタッチしながら楽しく学べる上に、
ゲーム、クイズ、歌など、遊べるページも盛りだくさん。

0歳から小学校入学前まで、長くお使いいただけます。
プレゼントにピッタリです。

図鑑部門の第4位から第10位の作品は下記になります。

2022年、部門別の1年間のランキングいかがでしたか。

今、何を読もうかな。何か面白い本はないかな、と思ったら、参考にしてみてくださいね。

秋山朋恵(あきやま ともえ) 

絵本ナビ 副編集長・児童書主担当

書店の本部児童書仕入れ担当を経て、私立和光小学校の図書室で8年間勤務。現在は絵本ナビ児童書主担当として、ロングセラーから新刊までさまざまな切り口で児童書を紹介。子どもたちが本に苦手意識を持たずに、まず本って楽しい!と感じられるように、子どもたち目線で本を選ぶことを1番大切にしている。著書に「つぎ、なにをよむ?」シリーズ(全3冊)(偕成社)がある。

掲載されている情報は公開当時のものです。
絵本ナビ編集部
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