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月別児童書ランキングBEST10

2025年上半期 児童書人気ランキング発表! 話題作&受賞作も

2025年も、あっという間に7月。半年が過ぎ、いよいよ夏が本格的に始まりますね。

そこで今回は、1月から6月までの半年間で絵本ナビで特に注目を集めた児童書の人気ランキングを発表します! さて、どんな作品が読まれていたのでしょうか? その他、話題の作品や栄えある受賞作まで、児童書の「旬」の情報をたっぷりお届けします。

小学生の皆さんは、夏休みまであと少し! 今年の夏の読書に、ぜひこの特集を参考にしてみてくださいね。きっと、心に残る一冊と出会えるはずです。

2025年上半期人気児童書ランキング【2025/1/1~6/30】

2025年上半期児童書人気ランキング 第1位から10位

1位 ふたりはともだち

2025年の1月から6月に絵本ナビで最も人気のあった児童書は……?

2020年のランキングから2024年までずっと1位を保っている名作が、2025年も引き続き多くの方に手に取られています。仲良しのがまくんとかえるくんの間で繰り広げられる、濃くて、可笑しくて、ちょっぴり切ない……愛すべきエピソードの数々。夏のお話もありますので、見つけて楽しんでみてくださいね。

ふたりはともだち

ふたりはともだち

仲良しのかえる、がまくんとかえるくん。ふたりの間で繰り広げられるのは、濃くて、可笑しくて、ちょっぴり切ない……様々な愛すべきエピソード。アーノルド・ローベルの「がまくんとかえるくん」シリーズは幼年童話の傑作として、子どもから大人まで、たくさんの人たちに40年以上も愛され続けています。

そのシリーズ第1作目が『ふたりはともだち』、5つのお話が収録されています。

春が来たからと大急ぎでがまくんの家に走っていき、「おきなよ!」と大きな声で呼びたてるかえるくん。お日さまがきらきらして、雪も溶け、新しい一年がはじまったかと思うと、いてもたってもいられないのです。ところが、がまくんは布団の中。もう少し寝ていたいのです。11月から眠っているがまくんは「5月半ば頃にまた起こしてくれたまえよ。」なんて言うのです。そこで、かえるくんは……?

がまくんを外に連れ出して遊ぶためなら頭の回転だって早くなるかえるくんと、カレンダーに合わせて簡単に5月だと思い込んでしまうがまくん。最初のお話「はるがきた」で、幼さと可笑しさがたっぷり詰まったふたりのキャラクターを存分に味わうことができます。

続く「おはなし」と「なくしたボタン」では、それぞれのやり方でお互いを思いやっている様子(大いに巻き込みながらね)を、「すいえい」ではちょっぴりブラックな面をのぞかせつつ、思いっきり笑えるエピソードを披露してくれます。

すっかりふたりの世界観に夢中になった頃、登場するのが最後の「おてがみ」です。

悲しそうな顔で玄関にすわっているがまくん。なんでも「もらったことのないお手紙を待つ時間」なんだと言うのです。それを聞いたかえるくんは、がまくんに内緒でお手紙を書くことにします。ところが、配達を頼んだのがかたつむりくんだったので……。

国語の教科書に採用されたことで、今では多くの子どもたちに知られているのがこのお話。いずれ届くことも、その内容までもわかっているお手紙をじっと待つがまくんとかえるくん。その幸せそうな様子に、「手紙」の持つ力を感じずにはいられませんよね。

シリーズ4冊。がまくんとかえるくんのキャラクターを知れば知るほど、どのお話も読み返したくなる珠玉のエピソードばかり。日本では三木卓さんの翻訳で楽しむことができます。
(磯崎園子  絵本ナビ編集長)

http://www.ehonnavi.net/ehon00.asp?no=373 国語の教科書に載っている「おてがみ」のワンシーンより。
https://www.ehonnavi.net/specialcontents/contents.asp?id=416 「がまくんとかえるくん」 三木卓さんインタビュー

2位 一年一組せんせいあのね こどものつぶやきセレクション

2025年上半期人気児童書ランキング第2位になったのは、『一年一組せんせいあのね こどものつぶやきセレクション』。「せんせい、あのね」という一文ではじまる日記「あのね帳」は、神戸の小学校で40年以上先生をしていた鹿島和夫さんがはじめた、子どもたちとの交換日記のようなもの。「あのね帳」はやがて全国に広まり、過去には「一年一組せんせいあのね」として全4巻、そして「1ねん1くみ子どもの詩の本」として全10巻発売されました。2023年に、以前出版された作品の中から54編を厳選した『一年一組 せんせいあのね こどものつぶやきセレクション』が完成し、発売以来大きな話題となっています。

一年一組せんせいあのね こどものつぶやきセレクション

一年一組せんせいあのね

鹿島和夫と担任した小学校一年生たちとの、いわば交換日記であった「あのね帳」からセレクト。笑いをさそうもの、胸をうつもの…こどもたちから生まれた生のことばがヨシタケシンスケの絵とタッグを組み、新たに心をゆさぶる。

https://www.ehonnavi.net/ehon00.asp?no=220864
https://www.ehonnavi.net/specialcontents/essays/serialization.asp?id=162 連載 「せんせいあのね」で育ったワタシとこれから出会うアナタへ

3位 岩波少年文庫 ふたりのロッテ(改訳)

2025年上半期の児童書ランキング第3位は、4月に開催した「2025 絵本ナビ×岩波少年文庫 名作フェア」企画にて、岩波少年文庫からランキング入りです。特製アクリルキーホルダーがもらえるキャンペーンをきっかけに、欲しかった岩波少年文庫を購入された方がたくさんいらっしゃいました。

岩波少年文庫 ふたりのロッテ(改訳)

岩波少年文庫 ふたりのロッテ(改訳)

おたがいを知らずに別々の町で育ったふたごの姉妹ルイーゼとロッテ。ある夏、スイスの林間学校で偶然に出会ったふたりは、別れた両親を仲直りさせるために、大胆な計画をたてるのですが……。待望の新訳。

読者の声より

ふたごちゃんの、どきどきわくわくするような物語です。
読んでいると、子どもだった頃のことを思い出します。
私はふたごではないけれど、それでも、やっぱりふたりのロッテと
おんなじように、たくらみや秘密や冒険が大好きだったもの。
子どもは、できることも限られていて、世界が小さい分、
大人よりも些細なことが冒険になりますよね。

子どもを尊敬していて、きちんと接しているケストナーの本、
娘にもぜひとも読んでもらいたいなあって思います。この先。
普段から子どもを大人の感情や都合で押さえつけようとしている
ママがいかにだめだめかってことがバレてしまいそうで怖くも
ありますが(笑)。
(ぽこさんママさん 40代・ママ 女の子4歳)

2025年上半期児童書人気ランキング第4位 エルマーのぼうけん

エルマーのぼうけん

さあ、リュックサックに道具をつめて、エルマーと一緒に冒険の旅に出発しよう!

これは僕の父さん、エルマーが小さかった頃のある冒険のお話です。ある雨の夜、エルマーは、年取ったのらねこから、「どうぶつ島」に捕らえられているかわいそうなりゅうの話を聞きます。りゅうは、空の低いところに浮いていた雲から落っこちてきたちっちゃな子どものりゅうで、ジャングルの猛獣たちに捕まえられて、川を渡るために働かされているというのです。

エルマーは、すぐに助けに行こうと決心します。早速ねこにどうぶつ島のことや、持っていくものを教えてもらい、旅の準備に取り掛かります。エルマーがリュックサックにつめたのは、「チューインガム、ももいろのぼうつきキャンデー二ダース、わゴム一はこ、くろいゴムながぐつ、じしゃくが一つ、はブラシとチューブいりはみがき‥‥‥」などなどたくさんの道具。そして「どうぶつ島」へと繋がる「みかん島」行きの船に忍び込んだエルマーは、六日六晩たってようやく「みかん島」へ。ここで食料のみかんをリュックいっぱいに詰め込んで、夜の間に「どうぶつ島」へと渡ります。

「どうぶつ島」へ着くと、早速りゅうがつながれている川を探しに、気味の悪いジャングルの中を歩いていくエルマー。ジャングルでは、おかしな喋り方をするねずみや、うわさ好きのいのししに出くわしたり、とら、さい、ライオンなど恐ろしい猛獣たちにつぎつぎと出くわします。猛獣たちはたいていお腹をすかせていて、食べられそうになることもしばしば。さてエルマーは、どんな風に猛獣たちの危険をくぐり抜け、どうやってりゅうを助け出すのでしょうか?

特に注目したいのは、リュックサックに詰めた道具たちの活躍と、見返しに描かれた「みかん島とどうぶつ島のちず」。

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(秋山朋恵  絵本ナビ編集部)

http://www.ehonnavi.net/ehon00.asp?no=534 エルマーはどうぶつ島でつぎつぎにおそろしい!?動物たちと出会います。

2025年上半期児童書人気ランキング第5位 岩波少年文庫 18 エーミールと探偵たち

岩波少年文庫 18 エーミールと探偵たち

おばあちゃんをたずねる途中の列車で、大切なお金を盗られてしまったエーミール。ベルリンの街を舞台に、少年たちが知恵をあわせて犯人をつかまえる大騒動がくりひろげられます。

読者の声より

懐かしいこの物語、ストーリーの中に入り込んでワクワクハラハラする面白さを息子にも知って欲しくて、毎晩少しづつ読み始めました。

まず冒頭は独特のケストナー節が長い・・!長すぎるっ・・!
登場人物の紹介までで、読む母ヘトヘト。横向くと寝息が・・・あぁ・・。
イラストもあって魅力的なんですけどね・・。

しかし主人公の少年エーミールが独りで電車に乗り、ベルリンの祖母の家に向かい始めると・・そこからはもう物語もスルスルと動き出し、
すっかりエーミール目線でいることに気づきます。
ハプニングあり、出会いあり、冒険あり・・・。
毎晩一章づつ読んでいたのですが、物語が盛り上がってきたところで・・・やられました。息子に。
なんと夜中に殆ど最後まで一気に読んでしまったのです。
そうだよね、この物語は先が気になって、途中で止めることなんてできないよね・・。
それだけのめりこんでくれたことが嬉しくもあり、そのドキドキを共有したかった気持ちもあり。笑

冒頭のケストナー節さえ乗り越えられたら、7歳にも十分楽しめる
お話です。
個性的な少年たちが集まって、困ったエーミールに協力するのがいいですね。大人になって読んでみると、お母さんへの気持ちなどもけなげに思えました。

子供の頃に読んだ名作は、何十年経ってもやはり名作でした。
次は「エーミールと三人のふたご」を読もうかな。
(10月さん 30代・ママ 男の子7歳)

2025年上半期児童書人気ランキング第6位 ぼくはめいたんてい(1) きえた犬のえ(新装版)

ぼくはめいたんてい(1) きえた犬のえ(新装版)

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9歳のネートは探偵です。
今日もネートの元に1本の電話が入りました。
仲良しの女の子アニーから、なくなった絵を探してほしいとの依頼です。

すぐにアニーのところへ駆けつけるネート。
まず、アニーの話をじっくり聞き、部屋の中をくまなく調べます。
次に、その絵を見た他の人たちー仲良しのロザモンド、弟のハリー、犬のファングについて丁寧に調査していきます。
はたしてネートは、アニーのなくなった絵を発見することができたのでしょうか。

一見、すぐに解けそうと思わせておきながら、意外になかなか解けないナゾの面白さと、ネートのツボを押さえた探偵ぶりに子どもも(大人も!)たちまち心を掴まれてしまいます。
また9歳という年齢でありながら、どんなナゾが来ても常に落ち着き、周りから頼りにされているネート。子どもたちは、自分と同じぐらいの年齢の子の活躍とカッコよさにたちまち憧れてしまうのではないでしょうか。一方でパンケーキが大好物で、気が付けばいつもパンケーキを食べているところには親しみを感じてしまいますね。

こちらは、1982年の発売以来、たくさんの子どもたちに愛され、読み継がれてきた「ぼくはめいたんてい」シリーズの第1巻目。マージョリー・W・シャーマットさんによる全17巻となるこちらのシリーズは、5歳ぐらいから小学校低学年の子どもたちにちょうど良いハラハラさで、子どもたちがはじめて物語の楽しさに出会えるシリーズでもあります。つぎつぎにネートに降りかかるナゾ解きの面白さはもちろんのこと、巻ごとに増えていく個性的な登場人物、ネートからママへの置き手紙の内容など、読めば読むほど多くの楽しみをも発見できるでしょう。

すべての漢字にふりがながついているので、はじめての読み物としてもぴったり。ひとり読みに移る前に、まずは読んであげながら親子で一緒にナゾ解きを楽しんでみるのもいいですね。シーモントさんの温かくユーモアたっぷりの挿絵と、訳者の小宮由さんの柔らかな語り口も、子どもたちの読書をやさしく応援してくれます。お話の最後には「めいたんていのこころえ」もついていて、もし周りでなにかナゾが起きた時の役に立つかも!? さあ、ネートとどんどんナゾを解いて、一緒に名探偵になろう!

(秋山朋恵  絵本ナビ編集部)

http://www.ehonnavi.net/ehon00.asp?no=11928 楽しく個性的な登場人物にも魅力がいっぱい♪
https://www.ehonnavi.net/specialcontents/contents.asp?id=84 「ぼくはめいたんてい」シリーズの魅力とは!?

2025年上半期児童書人気ランキング第7位 番ねずみのヤカちゃん

番ねずみのヤカちゃん

番ねずみのヤカちゃん

ドドさん夫婦の家の壁と壁のすき間に住む、おかあさんねずみと、四ひきの子ねずみ。そのうち四ひき目は、「やかましやのヤカちゃん」とよばれていました。
どうしてこんな名前がついたかって?

それはね…このヤカちゃん、とてつもなく声が大きかったからなんです。

たとえばこんな風。おかあさんねずみが、ドドさん夫婦に存在を気づかれないよう「けっして音をたててはいけない」と注意している時も「うん、わかったよ、おかあさん」と答える声のなんと大きいこと!他にもおかあさんねずみの注意に対して、全部うんと大きな声で答えるヤカちゃんのお返事の繰り返しが何とも愉快でたまりません。でもお返事のしかたから、ヤカちゃんがとっても素直でまっすぐで良い子だということが伝わってきて、どんどんヤカちゃんを応援したくなってしまいます。けれどもやっぱりその大きな声のせいで、ドドさん夫婦の家にねずみがいることがばれてしまって…。

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(秋山朋恵  絵本ナビ編集部)

http://www.ehonnavi.net/ehon00.asp?no=6564

2025年上半期児童書人気ランキング第8位 岩波少年文庫 127 モモ

岩波少年文庫 127 モモ

岩波少年文庫 127 モモ

時間どろぼうと、ぬすまれた時間を人間にとりかえしてくれた女の子モモのふしぎな物語。人間本来の生き方を忘れてしまっている現代の人々に〈時間〉の真の意味を問う、エンデの名作。

読者の声より

小さなころ映画になっているのを見に行ったのですが
灰色の男たちがとても怖かったことしか覚えてなくて
ずっと敬遠してました。

今になって読んでみるとなんと見事な物語であることか

無限の想像力で遊ぶ子供たち
そこに目の前にいる人を何より大切にするモモ

時間は切り詰めて消費するものではなく
瞬間瞬間を心から楽しんで愛しんでいくことこそが
ほんとに生きていくということで

いつでもそういう生き方をしていきたいと思えます。

子供たちも決まった遊び方しかできないおもちゃではなく
どうやってでも遊べるもので遊び
毎日毎日を自分たちの物語でいっぱいにしていってほしいと思いました。

いまさらだけど私もモモになりたい。
いっぱい力が湧いてくる大事な一冊になりました。
(ミルキーミルキーさん 20代・ママ 女の子2歳、女の子0歳)

2025年上半期児童書人気ランキング第9位 はれときどきぶた

はれときどきぶた

三年三組。畠山則安。あだなは、十円やす。じまんは毎日、日記をつけていること。けれどもある日、大事な日記をお母さんが勝手に読んでいるところを目撃してしまった則安くんは、腹を立て、「あしたの日記」としてへんなことを書き始めます。トイレに大蛇がいた! お母さんが鉛筆を天ぷらに! 金魚が飛び回る、お母さんの首がのびた、そして空からぶたが降る!? はたして日記を書いた後に起きたこととは?

1980年に刊行され、40年近くにわたり読み継がれてきた『はれときどきぶた』。子どもの頃に読んだという大人の方もたくさんいらっしゃることでしょう。大人になって『はれときどきぶた』を思い出した時に頭をよぎったのは、本の中のエピソードの記憶。特に、鉛筆の天ぷらの記憶は五感とともに残っていて、食べたことはないのに口の中で鉛筆の味がしたり、ガリガリと固い感触がしたり、則安くんのお父さんと同じようにお腹が痛い気までしてくるようで、子どもの頃にお話を読んで感じた感覚がそのまま蘇ってくるようでした。さらに、空からぶたが降るのか、降らないのか、という場面では、心配そうに空を眺める則安くんと同じく、この後どうなるのだろうと不安とワクワクが混ざったような気持ちになったことを思い出したりも。そんな風に、子どもの頃に読んだ記憶が心の深いところに残り続けることがこの作品の持つすごい力ではないかと思います。

子どもたちは、とにかく一度手にとってページをめくったら、あとはもうどんどん読めてしまうでしょう。
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(秋山朋恵  絵本ナビ編集部)

http://www.ehonnavi.net/ehon00.asp?no=12827
https://www.ehonnavi.net/specialcontents/contents.asp?id=462 貴重な矢玉四郎さんインタビューもお楽しみ下さい♪

2025年上半期児童書人気ランキング第10位 みどりいろのたね

みどりいろのたね

まあちゃんのクラスでは、畑に種をまくことになりました。
先生からひとり5こずつみどりいろの種をもらいます。まあちゃんはその種となめていたメロンあめを一緒に埋めてしまいました。

さて、ここは土の中。
ちっとも水をやらないなまけもののまあちゃんの種は、暑くてのどが渇いて「ぶつぶつ」「ぶーぶー」。
でもメロンあめだけは水をもらえなくったって平気です。
なんだか様子が変だと気づいた種たちは、メロンあめに向かって、
「へーんなやつ!」
けれどもメロンあめだって負けてはいません。
「ぼ、ぼくはとびきり うまい メロンあめさ!」

種たちとメロンあめは、にらみ合ってにらみ合って、そしてとうとう……!

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(絵本ナビ編集部 秋山朋恵)

 

2025年上半期児童書人気ランキング 第11位から20位は?

2025年上半期児童書ニュース、受賞作・話題作紹介

つづいて2025年上半期の児童書ニュースをお届けします。2025年1月から6月まで、どんな作品が話題となったのでしょうか。

まずは受賞作品からご紹介します。

2025年上半期児童書受賞作

第40回坪田譲治文学賞受賞作品

まずご紹介するのは、2025年1月に第40回坪田譲治文学賞を受賞した『ひみつだけど、話します』。こちらは、ある町の小学三年生たちの放課後の時間を主な舞台に、それぞれの「ひみつ」が触れ合う物語。「おとなもこどもも楽しめる物語」ということで、このたび受賞されました。

ひみつだけど、話します

ひみつだけど、話します

ある町の小学三年生たちの放課後の時間。それぞれの「ひみつ」が少しずつ触れ合って……。

足立くんは学校から帰ると、電車を見るためにふみきりに来ます。走っている電車を目玉を動かしながら見ると止まったように見えて、乗っている人が見えることを最近発見しました。それは足立くんだけの「ひみつ」です。しかし、同じクラスの小川さんに見つかって、小川さんにだけ「ひみつ」を話します。その小川さんは、お母さんに「買いぐいはだめ」っていわれていましたが、下校中にだがし屋さんでひもあめを買います。小川さんにはひもあめを買ったらやってみたいことがあったのです。けれどもだがし屋で同じクラスのうっちゃんこと内海くんに会ってしまいます。その内海くんはおじいちゃんのお見舞いへ行き、おじいちゃんにこっそり「ひみつ」の液体を渡すのですが、その帰りに立ち寄った公園で、あまり学校に来ていない上田さんを見つけます。内海くんは上田さんに好きな給食の献立の時だけ学校に来てみたら?と提案します。

物語では、大切にしておきたい「ひみつ」がそれほど親しくしていなかったクラスメイトに知られてしまいます。でも知られたことで、思わぬ素敵な展開へとつながっていくのです。私がとくに素敵だと感じたのは、子どもたちはそれぞれに「ひみつ」を持っているけれど、だれかの「ひみつ」的なことに触れたときの反応がやさしかったり、ほとんど動じなかったりするところです。そして意識的にか無意識なのか相手にかける言葉もやさしくて、温かな関係が生まれていくところがとても魅力的です。

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(絵本ナビ編集部 秋山朋恵)

第72回産経児童出版文化賞【ニッポン放送賞】

次は、2025年5月に発表された第72回産経児童出版文化賞のニッポン放送賞を受賞した『トクベツキューカ、はじめました!』。舞台は千葉県習志野市の小学校。休む理由を先生にも親にも言う必要がなく、どこでだれと何をするのも自由という「特別休暇」。さて登場人物たちはどんな休暇を取るのでしょう? 子どもたちにとっては(大人にとっても)憧れるお休みの取り方なのではないでしょうか。

トクベツキューカ、はじめました!

トクベツキューカ、はじめました!

もし一年に一日だけ、好きな日に好きな理由で学校を休んでいい「トクベツキューカ」があったら?
悩みを抱える主人公の小学生たちが、季節ごとに友情を紡ぐ、5つの感動物語。

第65回日本児童文学者協会賞

つづいて、2025年5月に発表された、第65回日本児童文学者協会賞は、いとうみくさんの『真実の口』。また、小学校5・6年生の選定委員が選ぶ第41回うつのみやこども賞も合わせて受賞された作品です。人の善意について、また、正しい行いとは何なのかを考えさせる読み応えのある一冊です。

真実の口

真実の口

第65回 日本児童文学者協会賞受賞
第41回 うつのみやこども賞受賞
※うつのみやこども賞は、小学校5・6年生の選定委員が年間10回の選定会議を行い,その中から最も“友だちにすすめたい本”を選考する賞です。

夏の読書感想文全国コンクールの課題図書に作品が選ばれる常連であり、野間児童文芸賞、ひろすけ童話賞、河合隼雄物語賞など児童文学の主要な賞を続々受賞した、いとうみくによる書きおろし最新作。

中3の冬、受験を控えた青山湊(あおやま・みなと)、七海未央(ななみ・みお)、周東律希(すとう・りつき)の三人は、
祠の前にしゃがんでいる小さな女の子を見つけた。雪はやんだようだが、気温は下がっている。何もしゃべらず、動こうとしない少女を放っておけば、凍死してしまうかもしれない。三人が下した判断は、この子を交番に連れて行くというものだった。それから四週間後、校長室に呼ばれた三人を迎えたのは、警察官たちだった。適切な判断と思いやりに感謝状が贈られたのだ――。
高校生になった年の夏、三人はファストフードで再会する。七海が「これ見て」と出したスマホの画面には、親による子どもの虐待事件のニュースが映し出された。もちろん、あのときの女の子とは別人のニュースだ。しかし、三人それぞれがあのときの女の子の様子に不審なものを感じていた。名前や住所を尋ねてもけっして口を開こうとしなかったこと、交番に連れて行こうとしたとき暴れて抵抗したこと……。「もしかして、わたしたちすごい誤解をしてたってことはないかな」。警察から感謝状を贈られた三人は、自分たちの行動が間違っていなかったかをたしかめるため、あのときの女の子を探し始める――。

児童文学界のトップランナーが、人の善意とは、正しい行いとは何なのかを模索する高校生たちを描き切る。

第62回野間児童文芸賞受賞

つづいて、2024年11月に第62回野間児童文芸賞受賞を受賞したのが『杉森くんを殺すには』。インパクトのあるタイトルで発売当初から話題となっていた作品ですが、作者の長谷川まりるさんは、「この本は苦しんでいる友だちのまわりにいる人に向けて書いたのです。まわりの人たちが、「こんなときどうしたらいいの? そういえば『杉森くんを殺すには』では、こう対処していたな」と思い出してくれればと思います。」とインタビューで言われています。
(講談社コクリコwebインタビューより
https://cocreco.kodansha.co.jp/cocreco/general/books/juvenileliterature/STwek?page=3) )

 

杉森くんを殺すには

杉森くんを殺すには

――「杉森くんを殺すことにしたの」
 高校1年生のヒロは、一大決心をして兄のミトさんに電話をかけた。ヒロは友人の杉森くんを殺すことにしたのだ。そんなヒロにミトさんは「今のうちにやりのこしたことをやっておくこと、裁判所で理由を話すために、どうして杉森くんを殺すことにしたのか、きちんと言葉にしておくこと」という2つの助言をする。具体的な助言に納得したヒロは、ミトさんからのアドバイスをあますことなく実践していくことにするが……。

傷ついた心を、取りもどす物語

2025年上半期児童書話題作

今年の5月に「世界で一番貧しい大統領」とも呼ばれてきた南米ウルグアイのホセ・ムヒカ元大統領が、89歳で亡くなりました。そのスピーチが収められているのがこちらの本です。「貧乏とは、少ししか持っていないことではなく、かぎりなく多くを必要とし、もっともっとと欲しがることである」など心に残る言葉がたくさん載っています。本当の豊かさとは? 本当の幸せとは? を考える、読み継いでいきたい一冊です。

世界でいちばん貧しい大統領のスピーチ

世界でいちばん貧しい大統領のスピーチ

2012年、ブラジルのリオデジャネイロで開かれた国際会議。南米のウルグアイのムヒカ大統領はのちに世界の人々から絶賛されるスピーチをのこします。この絵本はその全容を紹介するものです

読者の声より

環境についての話し合いをしながら、頭の中では、もっと豊かになって、欲しいものがどんどん手に入る裕福な社会を望んでいる。この事実を、一国の大統領が、国際会議の場で指摘するというのは、とても勇気が必要だったことでしょう。「わたしたちは発展するためにこの世に生まれてきたのではありません。幸せになろうと思って生まれてきたのです。」「水不足や環境の悪化が、いまある危機の原因ではないのです。ほんとうの原因は、わたしたちがめざしてきた幸せの中身にあるのです。見直さなくてはならないのは、わたしたち自身の生き方なのです。」どの言葉も、耳が痛く、だからこそ心に刺さりました。絶えず訪れる物欲や見栄に流されそうになった時、自分を諌めるためにそっと開きたい一冊です。
(miki222さん  40代・ママ 男の子11歳、女の子9歳)

2025年4月からはじまった連続テレビ小説「あんぱん」で、やなせたかしさんの一生を紹介する伝記が話題です。やなせたかしさんに関する本はたくさん出ていますが、小学生が読むならこちらがおすすめ。小学校の教科書にも掲載されている一冊です。

勇気の花がひらくとき やなせたかしとアンパンマンの物語

勇気の花がひらくとき やなせたかしとアンパンマンの物語

「ぼくが生きる意味はなんだろう?」そう自分に問いかけ続けた、アンパンマンの生みの親、やなせたかし先生。幼少期の家族との別れや、戦争体験、人と自分をくらべて落ち込んでしまう気持ちなど、たくさんの辛いことを体験し、いろいろなことを考え続けてきました。そんななかでやなせ先生が強く思ったこが、「みんなを喜ばせたい! みんなを笑顔にしたい!」ということでした。そんな気持ちでたくさんの作品を生みだし、何事にも一生懸命取りくみ続けたやなせ先生一生を紹介する伝記です。

https://www.ehonnavi.net/ehon00.asp?no=110047

読者の声より

娘の感想です。

アンパンマンは子どもがみる番組だと思う人が多いと思います。ですが、アンパンマンはやなせたかしさんが思う「正義」を書いているのです。やなせたかしさんは戦争を経験し、戦争で弟をなくし「この世に正義はないのか。」と思うようになりました。また、「正義とは何だろう」とも思うようになりました。そこで服はぼろぼろだけど笑顔で食べ物を分け合っている子供に出会いました。これを見たやなせたかしは、「本当の正義はたべものをわけてあげることだ」と気づきました。ここまでのことで私はやなせたかしさんに共感しました。理由は、やなせたかしさんの言うとおり戦争は正義ではないからです。そして、食べ物を分け合うも正義だと思うからです。ですが、大人はアンパンマンのことを「顔を食べさせるなんて残刻だ」と思っていました。ただやなせたかしさんはアンパンマンを書くのをあきらめませんでした。そこもやなせたかしさんの良いことだと思いました。

長いですが、勉強になるしアンパンマンの見方も変わるのでぜひ読んでみてください
(maaruさん 40代・ママ 女の子11歳、女の子9歳)

今年「野生の島のロズ」としてアニメ映画化され人気を博した物語の原作がこちら。アメリカの作家ピーター・ブラウンによる児童文学シリーズです。最新刊の第3弾『守れ 野生のロボット』がこの7月に発売となりました。

野生のロボット

野生のロボット

あらしの夜、五つの木箱が無人島に流れついた。中にはどれも新品のロボットが一体ずつ入っていたが、こわれずに無事だったのは一体だけだった。偶然スイッチが入り起動したロボット=ロズは、島で生きぬくために、野生動物たちを観察することでサバイバル術を学んでいく。はじめはロズを怪物よばわりしていた動物たちだったが、ひょんなことからガンの赤ちゃんの母親がわりとなったロズが子育てに孤軍奮闘する姿を見て、しだいに心をひらいていく。すっかり野生のロボットとなったロズのもとに、ある日、不気味な飛行船がやってきた……。

読者の声より

「野生」と「ロボット」という言葉は
あまりにずれていて
どんな話なんだろうと思いながら読みました。

あっという間に読んでしまいました。
続きがあるらしく、一緒に入手しなかったことを後悔・・。
ひとつひとつの章が短めの設定なので
サクサク読めます。

お話は
貨物船の事故で、積み荷として積み込まれていたロボットの一体が、島に流れ着き、偶然に起動されるところから始まります。
もうその始まり方だけでわくわくします。
島で「学習」を続け
どんどん自然環境に順応していくロボット。
がんの子供を育てることを通して
心まで持ってしまったのではないかというほどの成長(?)をとげ、
島の動物たちとも友好的にすごせるようになったのに
ロボット回収のミッションが発動して・・・。

自然環境や親子問題、ジェンダー問題など
いろいろな問題提起が、さりげなくちりばめられていて
こんなによくできたお話があるだろうかと
久しぶりに感心しながら読みました。

大人が読んでも、十分面白いし
いろんなことを考えさせられた
読み応え十分な一冊です。
(やこちんさん 50代・ママ 女の子18歳)

表紙絵を担当された橋賢亀(はし かつかめ)さんのX投稿で大きな話題となったのが、『魔法使いマーリンの犬』。聖剣をくわえる犬の表情に惹きつけられた方が多くいらっしゃったのではないでしょうか。犬が好きな子どもたちや大人の方におすすめの本格ファンタジー小説です。
 

魔法使いマーリンの犬

魔法使いマーリンの犬

主人公は、アーサー王伝説でおなじみの偉大な魔法使いマーリン……ではなく、その愛犬のハナキキ。こっそり魔法を習い、魔法の石の力で人間の言葉も話せます。ある日、マーリンが謎の集団にさらわれてしまい、ハナキキは愛する家族を救うため、追跡の旅へ! はたしてマーリンを助け出すことができるのか? そして伝説の剣、エクスカリバーをぬくのはいったい……?!

続・魔法使いマーリンの犬

前作『魔法使いマーリンの犬―エクスカリバーをぬくのはだれだ?!―』では、偉大な魔法使いマーリンに助けられた犬が、魔法の石の力を借りて話せるようになり、よくきく鼻をいかして大活躍しました。ハナキキと名づけられたその犬は、謎の集団にさらわれたご主人さまを救出したばかりか、エクスカリバーを抜くという大手柄を立てます。続編では、妖精の女王ニヴィアンを救うため、聖杯探しの旅へ!……アーサー王伝説を下敷きにした痛快な物語。ハナキキのモデルは、作者自身の愛犬バウザーとのこと。

人気シリーズの最新巻もぞくぞく刊行に!

へんてこもりのころがりざか

へんてこもりのころがりざか

『へんてこもりにいこうよ』から始まるへんてこもりシリーズ6作目。今回も、そらいろようちえんの4人組は、ヘンテ・コスタの森にあそびにいき、まるぼや、おなじみの住人たちに会います。きょうは大事なお客さんがくるというので、みんなはおやつの準備中。ところがおやつのまるぼまんじゅうを取りにいく途中の「ころがりざか」で大変なことに! へんてこな言葉に見舞われ、まるぼもピンチにおちいります。言葉の森である「へんてこもり」ならではのお話。この巻には初めて、大事なお客さんとして「へんてこもり」をつくったヘンテ・コスタさんが登場します。

https://www.ehonnavi.net/ehon00.asp?no=261009

わかったさんのチョコレート

わかったさんのチョコレート

新シリーズの第2巻は、チョコレート! 真夏のひざしのなか、わかったさんは車でおとくいさんの元へクリーニングを届けにいきます。ところが一転、知らない場所でチョコレートのお菓子を作ることに!? しみの付いたドレスを着た人形が、わかったさんを不思議へといざないます。今作も、作家・寺村輝夫の世界を受けついで、永井郁子が物語と絵をかきました。懐かしいのに新しいわかったさん。ぜひ、読んで作って味わってください!

「わかったさんのあたらしいおかし」シリーズ、第1弾はスイートポテト

ヤービと氷獣

ヤービと氷獣

マッドガイド・ウォーターの冬。そこで暮らす小さないきものヤービたちは、春まで長い眠りにつきます。それは、彼らのご先祖と、「氷獣」とが交わした契約のためと言い伝えられています。ところがヤービは、友だちのナミハナアブの幼虫のことが気になり、眠れません。同じころ寄宿学校では、幽霊騒動が持ち上がり……。ヤービたちと人間それぞれに伝わる「ふしぎ」が、彼らを冒険へと誘います。「岸辺のヤービ」シリーズ、第三弾。

「岸辺のヤービ」シリーズ、第1弾、第2弾はこちら

過去の児童書人気ランキングもご参考にどうぞ。

秋山朋恵(あきやま ともえ) 

絵本ナビ 副編集長・児童書主担当。書店の児童書担当、小学校の図書室司書を経て、2013年より絵本情報サイト「絵本ナビ」に勤務。子どもたちが本に苦手意識を持たずに、本って楽しい!と感じられるように、子どもたち目線に立って本を選び、さまざまな切り口で紹介している。編著書に「つぎ、なにをよむ?」シリーズ(全3冊)(偕成社)がある。

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絵本ナビ編集部
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