中学生に贈りたい本 2025~2026
みなさんこんにちは! 学校司書の山下ちどりです。
12月に入り、校庭の木々が赤や黄色に色づいたり、葉が落ちたりして、すっかり冬を感じる季節になりました。中学校は定期試験の山場を越えたら、冬休みですね。中学3年生はいよいよ受験が目前に迫っています。みなさんが全力を尽くせますように!
もうすぐ冬休み、そして新しい年2026年がやってきます。
毎年恒例の「中学生に贈りたい本」特集。今回は長い冬休みにじっくり取り組みたい趣味の本や、クリスマス気分を盛り上げる本、そして2025年を振り返る物語を中心に構成しました。
中学生のみなさんはもちろん、周りの大人の方から中学生への「本の贈り物」としてもおすすめのラインナップです。本の贈り手と贈られた中学生が本を間に過ごす空間や、中学生がページをめくる豊かな時間を想像しながら、本を選んでみませんか?
1. 手芸にチャレンジしたい中学生に~編み物の本~
今年は編み物、特にかぎ針編みが大ブーム! SNSなどで多くの作品や、編み方の動画を見かけます。寒い冬はふかふか、もふもふした毛糸に触れたくなりませんか? 自分で編んだマフラーや小物は、身につけるだけで心が温かくなります。初めてでもこれらの本を読めば大丈夫! この冬、大人気の編み物に挑戦してみませんか。
『あみものはじめ はじめてさんのためのかぎ針編みBOOK』
「編み物で、とびきり可愛い小物が作りたい!」そんな中学生に手渡したい一冊です。 針の持ち方から糸のかけ方まで、「こんなに細かくありがとう~!」というほど丁寧に解説されています。また、どの作品もパステルカラーで可愛らしいので、毛糸の色や素材など糸選びの参考になりますよ。QRコードがついているので、スマホを傍らに置いて動画を見ながら確認できるのも、デジタルネイティブな中学生には嬉しいポイントです。「できた!」という小さな達成感を積み重ねられる、頼もしい先生のような一冊です。
『編み物始めてみました! まんがで手作り入門』
人気のかぎ針編みだけでなく、棒針編みにもチャレンジしたいあなたには、こちらの本はいかがですか。この本の前半はかぎ針編み、後半は棒針編みの解説です。プロローグにはかぎ針、棒針それぞれの特徴と、どんな作品に向いているか、ということが書かれています。ふわふわで暖かいもの、平面や輪にして編むのに向いているのは棒針編みだそうです。イラストと写真の特徴を活かした解説で、わかりやすさはピカイチです。
2. クリスマスを楽しみたい中学生に
街がキラキラと輝き出す12月。紹介する本でクリスマスをもっともっと楽しんでみませんか?
『ハリー・ポッター ホグワーツのクリスマス 』
あの大人気ファンタジー『ハリー・ポッターと賢者の石』の12章に記されている、クリスマスの名シーンが美しい絵本になりました。
ホグワーツ魔法魔術学校の大広間に並ぶ巨大なツリー、温かい談話室、そしてハリーが初めて受け取るクリスマスプレゼント……。「賢者の石」の作品の中でも人気のシーンが一冊の絵本になっています!クリスマスの雰囲気たっぷりの表紙にJ.K.ローリングの文章と、ガオ・ツィイーによる幻想的なイラストで構成されています。本を開けば、魔法の世界のクリスマスへとひとっ飛び。ハリー・ポッターを読んだことがある人も、映画で観たことがある人も、これから読んだり観たりする人も、この一冊を開けばホグワーツの生徒になった気分を味わえます。プレゼントにもおすすめです。
『ドイツのクリスマスマーケット』
最近では日本各地で期間限定の「クリスマスマーケット」が開かれるようになりました。大きなツリーやイルミネーションがシンボル的に飾られたり、クリスマスグッズやクリスマスの料理が屋台で売られたり、とっても楽しいイベントです。行ったことがある人はいますか? クリスマスマーケットに行ってみたいけれど近くにない人や、寒がりさんにおすすめなのが、こちらの本。本場ドイツ各地のクリスマスマーケットに紙上旅行ができますよ。石畳の町並みにきらめくイルミネーション、買ってもらうのを待ち構えているオーナメントたち、屋台に並ぶ美味しそうなソーセージやチーズ。地域ごとに異なるマーケットの特徴が、美しい写真とともに紹介されていて、「ここも、ここも行きたい!」と困るくらいにどこも幻想的で魅力的です。
「一番行ってみたいのはどこかな?」と夢を膨らませたり、部屋の飾り付けの参考にしたり。寒い冬の夜、暖かい部屋で眺めたい、宝箱のような一冊です。
『クリスマス ちいさな本の贈りもの』
白い表紙の真ん中にヒイラギのリースの絵、題字は金色。手のひらに収まるようなかわいらしいサイズの本です。
中には、古くから祝われたクリスマスにまつわるお話と美しいイラストが詰まっています。後半にはなんと、日本にサンタクロースのお話がやってきたエピソードも。何かと忙しい中学生の毎日ですが、ふとした瞬間にこの本を開くと、静かで神聖なクリスマスの心を取り戻せる気がします。クリスマスカードと共に、大切な友達や家族に贈るのにもぴったり。枕元に置いて、眠る前に少しずつ読み進めるのもおすすめです。
『ヴィクトリアン・クリスマス・ステッカーブック』
もう一冊、ギフトにぴったりの本をご紹介しましょう。こちらはクリスマスに関するたくさんのシールとクリスマスのエピソードが紹介されたシールブックです。
クリスマスギフトや、クリスマスのたべもの、クリスマスを楽しむ子どもたちなど、クラシカルなイラストがたくさんシールになっています。「か、かわいい……」とテンションが上がること間違いなし!
私は、クリスマスカードの封や、クリスマスに渡すプチギフトのラッピングに使いたいと思います。
最近はシールが再びブームになっています。今年らしいギフトとして喜ばれることうけ合いです!
3. イラストや絵が好きな中学生に
「ノートやメモにちょっとかわいいイラストを描いてみたい」「絵がうまくなりたい!」そんな中学生の熱い思いに応える、楽しくて実践的な3冊を選びました。
『描けるようになりたい!なら読んでみて。超かんたん!しんもと流マンガキャラの描き方 』
絵を描くのが苦手だけれど、絵を描いてみたい人。これからマンガやイラストにチャレンジしたい人に、最初の一冊としておすすめなのがこちらの本。
立体的な顔はどうやって描けばいいの? 身体のパーツが不自然になってしまう。そんなあなたに、人物イラストを中心に基本の「き」から教えてくれるのがこちらの本です。マンガ家でYoutuberの著者が、少女マンガで重要なパーツの技法について、具体的に解説しています。例えば、髪の毛の描き方については、前髪は毛束感を意識、髪の動きは折り紙のように、とわかりやすく解説しています。
イラストの基本をマスターしたら、今年出版された続編もぜひ見てください。
続編はこちら
『デフォルメ世界の描き方 キャラクター&背景で創るポップでかわいいイラスト』
本格的なマンガを描くのはハードルが高いけれど、友達や推しを「ちびキャラ」で表現できたら楽しいかも! と思う人はいませんか?
この本は、人物やアイテムをデフォルメ(誇張や簡略化)して描く方法が書かれています。2頭身の人物は見ているだけで「かわいい!」となります。人物は目や口などの重要パーツは、代表的な例がパターンで示されていてマネをするだけで、簡単に描けます。小物は角をとって丸っこく、など「ミニキャラ」「ちびキャラ」ならではの描き方や例、ちょっとしたコツなどが載っています。専門知識がなくても描けるように工夫されているので、初心者さんにおすすめです。
『1本の線からはじめる 絵の描き方教室』
より深く、しっかり絵を学びたい人には、こちらの本を。文字通り1本の線の引き方から始めて、最終的には1枚の絵を完成させるまで、懇切丁寧に教えてくれる奥深い本です。
たくさんのテーマが見開きで展開されていて、目次を見ながらお悩みを解決する方法が探せるので、すでに絵を描いていて、もっと上手くなりたい! という人や、この点についてくわしく知りたい! という人に、特におすすめです。
模写から始めて、自分オリジナルの完成した絵まで、しっかりサポートしてくれます。解説はマンガやイラストが多用されていて、視覚的に理解が進みます。上達した後も長~く使える一冊です。
4. 2025を振り返る物語!
2025年の1年間は、中学生のみなさんにとってどんな年になりましたか?
中1のみなさんは、小学生から中学生へ。とにかく新しいことばかりの1年でしたね。
中2のみなさんは、途中から中心学年となり、責任感や勉強の難易度などがぐっと増した1年になったことでしょう。
中3のみなさんは、部活の引退や将来の進路に向けた準備などでこれまた大忙しの1年だったと思います。
日本全体では、戦後80年を迎え、大阪・関西万博が開かれ、日本初の女性総理大臣が誕生しました。
2026年はどんな年になるでしょうか?
ここでは、2025年のニュースを振り返りながら、2025年の象徴的な話題に関する物語を中心にご紹介します。
大阪・関西万博
4月から10月まで大阪夢洲で半年間開催された大阪・関西万博。後半になるにつれて盛り上がりが過熱し、総入場者数は2900万人と大人気で惜しまれつつ閉幕しました。
万博キャラクターのミャクミャクは当初の反応から一転、「かわいい!」と大人気になりましたね。また、万博ではギネス世界記録にも登録された大屋根リングに各国や企業の展示館となったパビリオンの建築たち、と数多くの建築が注目されました。
大阪・関西万博で「ウーマンズ パビリオン」と「ノモの国」の建築を担当し、前回のドバイ万博では日本館の建築を担当した永山祐子さんの建築家としての自叙伝がこちらです。そして永山さんは日経ウーマン「ウーマン・オブ・ザ・イヤー2026」の大賞の受賞者でもある、まさに2025年を代表する女性の1人といえるでしょう。
(https://www.nikkeibp.co.jp/atcl/newsrelease/corp/20251129/)
子ども時代から、中高時代(高校生の頃は冬眠といわれるくらいたくさん寝ていたそうです)、さまざまなことにチャレンジした大学時代、有名建築家の事務所での社会人スタート、そして独立、さまざまな仕事へのチャレンジと出産、と成長しながら活躍している女性建築家のこれまでを新書で知ることができます。
壮大な万博を思い出しながら、働くということを知り、チャレンジする勇気をもらえる一冊です。
戦後80年 戦争が遺した傷跡とは
第二次世界大戦で敗戦した日本は、多くの犠牲者を出し、ボロボロの状態で戦後がスタートしました。この本は戦後翌年、東京新橋にできたヤミ市に集まる少年少女たちを描いた物語です。ヤミ市とは、戦後の激しい食糧難で政府が経済統制を行う中、食べものや日用品を非合法に売り買いする市場のこと。大人たちも生きるのに必死な中、戦争孤児など家族の保護を受けることができない子どもたちも、生きるためにこうした場所に集っていました。
主人公の衛は裕福な家庭に育ち、家族全員が生きのび、家も焼けずに残りました。しかし…家族は崩壊し、衛は生きるために家を捨ててヤミ市にやってきます。戦争が終わったからといって、戦争を生きのびたからといって、平和で幸せな生活がすぐにやってくるほど甘くはない、ということが本書を読むとよく分かります。少しでもよい生活を夢見て少年たちが必死で世の中を渡り歩く姿に、みなさんは何を感じるでしょうか。衛の家が一家離散となった原因は、戦地から帰ってきた父が別人のようになってしまったことです。
近年話題になっている、戦争によるPTSD(心的外傷後ストレス障害)は、ウクライナやガザといった戦いが起こっている現在においても、注目すべき問題となっています。この物語を過去の歴史、と思わずに今の世界と繋げて考えてもらえたら、と思って選びました。
また、絵本ナビスタイルで今年6月に掲載した、「戦後80周年に、中学生におすすめする戦争と平和の本」では、テーマごとに10冊の本をご紹介しています。こちらもご覧いただけたら嬉しいです。
- 2025.06.12戦後80周年に、中学生におすすめする戦争と平和の本

日本初の女性総理大臣誕生
『文庫 総理の夫 First Gentleman 新版』
10月に誕生した第104代内閣総理大臣は、日本の政治史上初の女性総理大臣となりました。
今から12年前に出版されたこの本『総理の夫』(単行本版)は、もしも、日本の総理大臣が女性で、その夫(ファースト・ジェントルマン)が鳥類学者だったら? という仮の設定のもとに書かれた物語ですが、今年ついに実現ということに相成りました。
物語の設定は20XX年に第111代総理大臣として42歳の相馬凛子が総理大臣に選出されていますので、現実には7代早い誕生でした。相馬凛子は野党第3党の党首で、政権交代によって総理大臣になっており、現実との違いを楽しみながら読むのも今ならでは。政治とは縁遠かった学者の夫が、国政に奮闘する妻を観察して記す日記形式のエンタメ小説です。
総理大臣として凛として働く妻の凛子と、彼女を支える少し天然な夫の日和さんのカップルがほのぼのしています。「男らしさ」「女らしさ」といった固定観念を軽やかに飛び越えていく二人は、現実のちょっと先を行っている気がします。すでに読まれたという方は、中学生へのプレゼントを機に、再読すると新たな発見があるかもしれません。
デフリンピック日本開催
2025年秋に東京で「東京2025デフリンピック」が開催されました。デフリンピックは聴覚障害者のためのオリンピックで、パラリンピックより歴史が古く、今年の東京大会は記念すべき100回大会となりました。デフスポーツ(聴覚障害者のためのスポーツ)をテーマにしたのがこの物語です。
小学校時代にバトミントンのダブルスに打ち込んでいた中2の花音は、周囲の音が次第に聞こえづらくなり、感音性難聴と診断されて補聴器を使用しています。授業についていけなくなり、友達とのコミュニケーションもうまくいかず、大好きなバドミントンも中学ではやめてしまいました。中途失聴の現実を受け止められない花音は、ふとしたことからデフバドミントンに出会い、その魅力に取りつかれていきます。
一颯という最高のダブルスパートナーを得た花音でしたが、ペア解散の大きな危機が。現実を受け止めきれない花音が、悩み、苦しみ、もがきながら成長する姿は、障害を持った人にしか分からないこともあるかと思いますが、障害の有無にかかわらず急激な変化を遂げる中学生に共通する普遍のテーマでもあるように感じました。同世代の中学生にぜひ読んでほしい一冊です。
ルッキズムなんてぶっとばせ!
『マッドのイカれた青春』
今年大注目の作家、実石沙枝子さんの青春小説です。並外れた容貌を持つハーフの超絶美人、槙島朱里ダイアナ、あだ名はその頭文字をとって「マッド(狂気)」。さっぱりした性格でちょっと変わったいいやつなのに、超絶美貌ゆえに周囲から勝手なイメージを押し付けられて、勝手にあちこちで問題が頻発します。「ブスでデブで、致命的にトロい」(←本書の中での本人談)学年一の秀才馬淵季子との凸凹コンビを中心とした5編の短編小説集です。
ルッキズム(外見至上主義)や、SNSでの炎上など、現代の中高生のリアルな生活が描かれています。「現代を象徴したような物語」とも言われているこの作品ですが、物語の後半にある、卒業式での季子のスピーチを読んだとき、もしかしたら今も昔も変わらない「普遍的な思春期」を現代的に見事に切り取った物語かも知れない! と震えました。思春期まっただ中の中学生のみなさんと、随分前に思春期を通り過ぎた大人のみなさんとで感想を交わし合いたい一冊です。
おわりに
いかがでしたか。冬休みは2025年を振り返り、2026年に向けてたっぷり充電してくださいね。
2026年がみなさんにとって充実した日々となり、たくさんの素晴らしい本と出会えますように。
来年も図書館で、本と一緒にみなさんを待っています!
中学生に贈りたい本(2021年版~2024年版)も合わせてどうぞ。
2021年から毎年ギフトシーズンにおすすめ本を紹介している「中学生に贈りたい本」。過去の記事もぜひのぞいてみてくださいね。
- 2024.12.10中学生に贈りたい本30選! 2024~2025

- 2023.11.22中学生に贈りたい本! 2023~2024

- 2022.12.22中学生に贈りたい本! 2022~2023

- 2021.12.07中学生に贈りたい本!

前回の記事へのご感想をありがとうございました!
中学生のKさんへ
感想ありがとうございました。
戦後80年を特集した本に心を寄せてくださって、ありがとうございます。短いお話のご希望はKさんに限らず、最近ご要望がとても多いので、これから心がけて探していきますね。ありがとうございました。
中学生のさっちゃんさんへ
図書委員として本の紹介のために、この特集を読んでくださったのですね。とっても嬉しいです!
図書委員会ではどんなことをしているのですか?
よかったら教えてくださいな。
これからも委員会で個人で、たくさんの本を読み、伝えてもらえたら嬉しいです。
ありがとうございました。
中学生の匿名希望さんへ
嬉しいうれしい、ご感想をありがとうございました。
何度も読ませていただきました!
この連載を続けてきてよかった。と思えるご感想で、思い出す度に心がじ~んとします。本は一人で読むものですが、互いに情報交換することで本の世界が広がります。ぜひ今度おすすめの物語を聞かせていただきたいです。ありがとうございました。
追伸:私が好きなおにぎりの具は「ツナマヨ」です。
アンケート募集のお知らせ♪
連載【現役学校司書が本でCheer Up! 中学生に読んでほしいオススメ本】では、読者のみなさんからの感想や質問を募集しております。アンケートよりご意見をお寄せください。
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山下ちどり
現役学校司書。
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