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絵本で伸ばそう!これからの子どもに求められる力

人間っていいな。「なかよし力」

絵本には、子どもに働きかける様々な力が備わっています。絵本がきっかけで、新しいことにチャレンジする気持ちを持てたり、苦手なことに取り組もうと思えたりもします。子どもたちの世界を楽しく広げてくれる絵本は、子育て中のパパママにとっても、大きな味方になってくれること間違いなしです!

この連載では、とくに「これからの時代に必要とされる力」にフォーカスして、それぞれの力について「絵本でこんなふうにアプローチしてみては?」というご提案をしていきたいと思います。

人と人が優しくつながる「多幸感」

春から新しい環境に飛び込んだ子どもたち。そろそろこの時期は、クラスでの人間関係が固まってきたころかなと思います。お友達ができるかどうかは、子どもにとって一番の関心事ですし、パパママも「お友達できた!」と聞いたら「よかったねえ」とほっとしますよね。

 

私は「友達100人できるかな」と歌われた世代であり、友達の「量」を求められるプレッシャーはちょっと辛くも思えたので、子どもには「友達はできればいいけど、できなくてもほどほどのお付き合いさえできれば……」というスタンスですが、それでも子に「なかよし」ができると安心しますし、我が子とは関係のないところでも、なかよくしている子たちを見かけるだけで「いいなあ」と思います。

「陽キャ」「コミュ強」というと、なかよしというより世の中をうまく渡るための手段っぽくてちょっと……とはおもいますが、「なかよし」というものは、なにか人が根源的に求める関係性ではないでしょうか?

 

今回は、「なかよし」っていろいろ捉え方はあるけれど、自分にとっての「なかよし」っていったい何かな? なかよしといると、どんな気持ちになるのかな? など、お友達との関係性についてさまざまに考えられる絵本をご紹介していきたいと思います。

友達ってどういう存在?

友達ってどうやってなるものでしょう? そもそも、どのくらいなかよしだったら友達になるのでしょう? 友達を作ろうと、あっちへ行ってこっちへ行って、紆余曲折しながら探っていく物語がこちらです。

ちょっとだけ ともだち

ともだちづくりに励む一平くん。ある日、カメの展覧会でヒロくんと出会います。一平くんとヒロくんは、カメのことでは話が合いますが、そのほかはずいぶんちがって、いろいろ合わなくて……。でも!
「ちょっとだけ」の関係でも、心の中で輝きつづけるともだちを描く、あたたかな物語。
大好評の『すてきなひとりぼっち』『ぼくは、ういてる。』の一平くんのおはなし第3弾。
 

一平くんは、自分には友達と言える人がいないことに気が付きました。妹にも、お母さん、お父さんにも、おばあちゃんにも友達はたくさんいます。毎日むっつり散歩をして、あとは本を読むかテレビを見ているだけのおじいちゃんだったら友達がいないだろうと安心していましたが、実は過去には親友がいたらしいのです。「ぼくもなんとかしなくちゃ!」と焦った一平くんは、とにかくみんなに話しかけますが、タイミングが悪くてうまくいきません。 そんなとき、大好きなカメの展覧会に行くと、知り合いの早川ヒロくんに会いました。好きなものが一緒なら友達になれるかも、と思っていろいろ聞いてみたけれど、ヒロくんはカメ以外は全然一平くんと興味が合いません。「カメのことだけのともだちで」とヒロくんは去っていき、一平くんは友達を作る難しさに直面してしまいました……。

友達作りにトライしているだけでも一平くんはえらいなあと思いますが、そこから「全部が同じ友達なんていない」「好きなものがたくさんあって、その一つ一つで友達が見つかれば、友達がたくさんできる」と、すばらしい探求心で成長していきます。自分の一部・“ちょっとだけ”の友達であっても、そのちょっとの部分が楽しいし、ちょっとがたくさん集まれば楽しいもたくさん! と、お友達作りへのハードルが下がる優しいお話です。この一平くんのお話はシリーズになっていて、他のお話でも一平くんは友達関係をがんばっているので、ぜひご覧ください。

ちょっとずつ譲り合って、いい関係

友達とは、いきなりなかよくなるわけではないと思います。「なかよくしてー!」とどちらかがゴリゴリ押すだけではかなわないのが、なかよし関係。お次は、そんな関係を作る「基本のキ」となる心構えを伝える絵本をご紹介します。

「いーれーて!」「いーいーよ」

ぎゅぎゅっと くだもの

赤ちゃんのしかけ絵本シリーズで大人気、ひらぎみつえさんの新作! 繰り返しが楽しいケーキにのっかる果物たちの赤ちゃん絵本

・同じ言葉、同じリズムで、繰り返し読むたびに赤ちゃんの笑顔がふえるひらぎみつえさんの赤ちゃん絵本。
・ケーキの上に果物たちが、ぎゅぎゅっと次々に乗っかるかわいらしいお話。

白いクリームのケーキの上に、ぶどうちゃんがちょこんと座っていると、いちごがちゃんがやってきて「ぼくもいーれーて」。次々に果物たちがやってきて、ケーキの上はぎゅうぎゅうです。すると、さあ大変!とうとう、ケーキの上から落ちてしまって…。カラフルな果物たちの登場が楽しい絵本。リズミカルな言葉の繰り返しが、赤ちゃんの自然な発語にもつながります。

とあるケーキの上に、ぶどうちゃんがちょこんと座っています。そこへ「ぼくも いーれーて!」といちごちゃんがやってきました。ぶどうちゃんが「いーいーよ」と言うと、いちごちゃんもケーキの上に。そのあと、バナナちゃん、みかんちゃんも「いーれーて」とケーキの上にすとん。しかし、りんごちゃんが座ろうとしてみんなを押したら、ぽてん、ころころ……と、ぶどうちゃんが落っこちてしまいました。みんなで座るためにはどうしたらいいのでしょうか?

「いーれーて」「いーいーよ」のかけ声は、お友達同士で遊ぶため、小さなときから教わる合図です。でもみんなで遊ぶためには「自分が自分が」ではまとまりませんよね。この絵本でも、限られたケーキの上に乗るためには、みんなちょっとずつちょっとずつ譲り合うことが必要でした。こちらは0歳から楽しめる乳幼児向けの絵本なのですが、「みんなでなかよくするためには協力しなきゃ」ということが、小さな子にもわかりやすく描かれています。

最近の脳科学の実験において、生後半年くらいの赤ちゃんでも他人の行動の善し悪しを判断することができ、人を助ける行動を取ろうとすることが判明したそうです。子どもたちにはそうした「善性」がもともと備わっており、相手を思いやる行動がこうしたなかよし関係を作り出すんですね。

なかよし同士の「あうん」の呼吸

なかよしって、相手の気持ちにすぐ気づく、相手のしてほしいことがすぐわかる、なーんて関係だと思っていませんか? その域に達するには何が必要か? ということをじんわり考えられる絵本を紹介します。

たぬきのなかよし二人組のお弁当屋さん

くるりがもりのおべんとうやさん

たぬきの やまぶきさんとやぐるまさんは おべんとうやさん。
こどものころから、きのみや はっぱで、ままごとあそびを していた ふたりが、
いまも そのまま、まいにち せっせと おべんとうを つくっています。
ふわりと かおる まぜごはんが、やまぶきさんの とくいりょうり。
カラリと あがる てんぷらが、やぐるまさんの とくいりょうり。
ちがうようで、にている ふたり。
「おいしいねえ」と おきゃくさんにわらってもらうために、きょうも じっくり りょうりに てを かけます。
さて、きょうの おべんとうには、なにが つまっているのでしょう?

くるりがもりを舞台にした物語。春のおはなしです。
なんでもない毎日のちいさなしあわせを描きました。

くるりがもりに住む、たぬきのやまぶきさんとやぐるまさんは、お弁当屋さん。たくさんのおいしい食材を集めては、息もぴったりにお客さんに合わせたたくさんのおかずを作ります。体を使う大工のおさるさんたちには疲れが取れる甘酸っぱい菜の花ずしを、大忙しの医者と薬剤師のうさぎさんたちには、さっと食べられる野菜たっぷりサンドウィッチ。真っ赤に焼けた鉄を扱ういのししさんたちは汗をかくので塩味をしっかりめに。お客さんのためを考えて作ったお弁当は、みんなを元気にしていきます。

こんなお弁当屋さんが近くにあったら素敵だな~と読むたびに思います。ですが、お客さんの事情を考えてこんなにぴったりのお弁当を作ることができるのは、やまぶきさんとやぐるまさんがお客さんたちのことを考えながらも、互いのことにも目を配って思いやっているからではないでしょうか? 最高のコンビは、互いの思いやりから生まれることがうかがえる優しい絵本です。

なかよしって似た者同士

自他ともに認めるなかよし同士は、実はそうなるまではものすごくバチバチで仲が悪かった、なんてことを見かけたりしたことはありませんか? そんなことをほうふつとさせるお話です。

似ているからこそ

うごいちゃ だめ!

なかよしのふたりの突っ張りあいが、思わぬ危機を呼んでしまう、 手に汗握る展開に、 最後までハラハラ、ドキドキの連続。 幼稚園や小学校の読み語りでも、大人気です。 スクラッチの技法を生かして、表情豊かに描かれている、楽しい絵本です。

ある日、あひるが湖に出かけて「あたしって なんて およぐのが じょうずなのかしら……。」と思っていると、がちょうがやってきて「ぼくの ほうが はやいな」と言いました。そこで競争してみると、あひるが勝ちました。しかし、がちょうは「ぼくの ほうが たかく とべるよ」と言ってまた競争し、今度はがちょうの方が高く飛びました。どちらも負けたくない二羽は、次に「うごいたら まけ」競争をはじめ、何が起きてもかちんこちんに身動きしませんでしたが、そこにきつねがやってきて……。

負けず嫌いの二羽は競争をしては、どちらがチャンピオンか争っていましたが、あひるもがちょうもわりと似ていてスペックも近くて、はたから見れば似た者同士ですよね。このお話では気の強さも似ているので我慢比べになってしまいますが、ピンチのときには協力して、いがみあっていた二羽はあっという間に「ニコイチ」のなかよしに。似ているからこそライバルになってしまうけれど、わかりあえれば大のなかよしになれる、というお話でした。

やっぱり一人よりも……

友達付き合い、人付き合い、人との関わりは楽しいこともありますが、けっこう煩わしいこともあります。自分一人であればすべての時間を自分のタイミングで自由に使える、そんな気ままさも捨てがたいものです。でも、やっぱり誰かに気にかけてもらえる喜びは一人では叶えられません。最後は、そんな思いをしみじみと感じ取ったクマさんのお話です。

おきゃく、おことわり?

森のなかにすむクマは、おきゃくがすきではありません。ところがある日ネズミが1ぴきやってきて、クマの家は大さわぎ!思わず笑いがこみあげる、読み聞かせにも最適絵本。

 

あるところにクマが住んでいました。クマのところには長い間お客が来なかったので、クマもお客なんて好きじゃないと思い、玄関に「おきゃくおことわり」と張り紙を貼りました。 ある朝、ドアをトントンと叩く音がし、ドアを開けると小さなネズミがいました。クマは「おきゃくは、おことわりだよ」とドアを閉めました。そして朝ごはんの支度にとりかかろうと戸棚を開けると、なんと! 先ほどのネズミがいたのです! クマはネズミをつまみ出しドアをバタン。気を取り直して引き出しを開けると、またもやネズミ! 卵を取ろうと冷蔵庫を開けるとまたネズミ! クマは大激怒しますが、ネズミはまったくあきらめません。ついにクマは降参し、二人は一緒にお茶をすることになるのですが……。

お客が嫌いなクマにアタックし続けるネズミは、普通に見れば不法侵入なのでなかなかガッツがあるなと思いますが、心を閉ざしたクマにとってはその強引さくらいがちょうどよかったのかもしれません。そして、相手に気にかけてもらっている、話を聞いてもらえることの心地よさ、楽しさを思い出していくのです。

 

一人でいる方が楽な時ももちろんあります。でも、お互いを気にかけたり楽しいことをわかりあったりすることは一人ではできません。友達はたくさんいる必要はありませんが、「一緒に時を過ごしたい」と思う相手がいると、毎日がとっても楽しくなることを、クマさんの笑顔が伝えてくれます。

さいごに

今回なぜ「なかよし」をテーマにしたかと申しますと、「嵐」の活動休止に言及したかったからなんです! すみません! 私のお世話になっている方に嵐の大ファンの人がおり、その魅力を常々伺っていたのですが、魅力は数多くあれどその方は「とにかくグループ全体で仲がいい! それを見ているだけで幸せ!」と語っていたんですね。そう聞いて見てみると、どこで見てもとても雰囲気がいい。個性はバラバラなのにいい感じに尊重しあって互いの抜けもカバーして、見ていてほっとするんです。

仲の良い相手を見つけたいというのは人間の根源的な願いだと思いますが、仲よし関係を見ているだけでも幸せな気持ちになるのはなぜでしょう? それは、人と人が優しくつながっている、思いやる姿を見て「ああ、本当にそういった感情があるんだ」と人の善性を実感できるからではないでしょうか? そこから「世の中って捨てたものじゃないな」と、世界や先の未来を前向きに捉えていく力にもなるのではないか? と、嵐から感じる多幸感から考えてしまいました。

友達・なかよしは損得だったり世渡り術的に捉えられがちですが、コミュ力とかそういうのでなくても、ただ相手に共鳴したり、「いいな、すごいな」と尊敬したり、気づけばよく一緒にいたり、そういうことに幸せを感じられたらいいと思うのです。友達を作れというわけではなく、「なかよしって素敵だな」と肯定するだけでも、ふっと優しい気持ちになりませんか? そうした多幸感を絵本からも感じ取っていただけたらと思っております。

徳永真紀(とくながまき)


児童書専門出版社にて絵本、読み物、紙芝居などの編集を行う。現在はフリーランスの児童書編集者。児童書制作グループ「らいおん」の一員として“らいおんbooks”という絵本レーベルの活動も行っている。7歳と5歳の男児の母。

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