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絵本で伸ばそう!これからの子どもに求められる力

トントンカキカキ 手先をつかって「図工の力」!

絵本には、子どもに働きかける様々な力が備わっています。絵本がきっかけで、新しいことにチャレンジする気持ちを持てたり、苦手なことに取り組もうと思えたりもします。子どもたちの世界を楽しく広げてくれる絵本は、子育て中のパパママにとっても、大きな味方になってくれること間違いなしです!

この連載では、とくに「これからの時代に必要とされる力」にフォーカスして、それぞれの力について「絵本でこんなふうにアプローチしてみては?」というご提案をしていきたいと思います。

退屈な時間や身近な素材からアイデアがあふれ出す!

夏休みももう終盤。長いお休みの間に子どもたちは宿題だったりお出かけだったりいろいろなことをしていると思います。

いつもよりゆっくり遊ぶ時間もあるので、思い思いに楽しいことに没頭しているかなとも思いますが、最近の子どもの遊びはけっこう「脳」を使った遊びが多くありませんか?

ゲームや謎解きも楽しいのですが、やりすぎると「なんだか遊んでいるのに疲れたな」という気持ちにもなりそうです。

そんなときには目的も作るものも特に定めず、なーんとなく手先のおもむくままに遊んでいく「図工」あそびはいかがでしょうか。

 

図工とは図画工作の略称で、脳ではなく体全部を使って自由に自分を表現していくことができます。手先を使っているうちに最初考えていたものとは全然違ったものが生み出されて、「あれ? 自分はこんなものを作りたかったんだな、やりたかったんだな」と気づいたり、「ここはどうしよう、どんな形にしよう、どんな色にする?」など自分と対話しながら探っていく貴重な時間にもなります。

せっかくの夏休み、もしかしたら作ったものを自由研究にも使えるし……というよこしまな気持ちもわきますが、普段忙しくて取り組めない図画工作に子どもも大人もちょっとチャレンジしてみてはいかがでしょうか?

今回は、図工に取り組むヒントや、ものを生み出す根底の気持ちなどを描いた絵本などをご紹介しようと思います。「図工、やってみたーい!」と思ってもらえるとうれしいです。

ものづくりのきっかけって?

何かを作ろうと思うときには、大なり小なりきっかけがありますよね? ぼやーっとしているうちはなかなか手を動かす気持ちにはなりませんが、「この人のために」と思うことが一つのきっかけに。そんなものづくりのきっかけを描いた絵本がこちら。

ものづくりの楽しさを伝える絵本

エルメスのえほん おさんぽステッチ

首輪を作ってくださいと犬がやってきました。りすはかばんを、カンガルーはポケットを。ものづくりの精神が描かれるエルメスの絵本。

おじさんのお店「うまのおみせ エルメス」に犬がやってきました。犬はお店の中に座ると「ぼくに くびわを つくってください」と言いました。馬のお店なので困ってしまいますが、なんだか頼みを聞いてあげたくなって首の周りの長さをはかって「ステッチ、ステッチ」さっと首輪を作ってあげました。首輪をつけた犬はうれしくっておじさんを町へ連れ出すと、今度は小さなリスがたくさんのどんぐりを抱えてしまって木に登ることができません。「どんぐりが はいる かばんが あればなあ」。そこでおじさんは「ステッチ、ステッチ」小さなかばんができました。そのあとも、たくさんの子どもを連れたカンガルーやしまもようになりたいライオンなど困っている動物たちをおじさんは助けてあげるのでした。

表題からおわかりの通り、こちらはあの高級ブランド“エルメス”が、ものづくりの精神や喜びを伝えるために作った絵本です。エルメスはもともとパリの小さな馬具工房でしたが、だんだんと皮革製品の製造を行うようになり現在の世界的ブランドへ発展していきました。登場人物のおじさんは、たぶん最初に馬具工房をはじめたエルメスおじさんのイメージだと思いますが「必要としている誰かのために」製品を作っていくことが、ものづくりのはじめの一歩だということが伝わります。 絵本の最後には、おじさんに助けてもらった動物たちからのお礼のお手紙というおまけもついていて、誰かのために何かを作ってあげよう、そうして「ありがとう」の気持ちをもらって、さらに「もっとがんばろう」と、ものづくりが発展していくことがわかります。

手先をつかって大胆に

小さな時の図工遊びというと、なんといっても手先を使ったちぎり絵遊びが楽しいですよね。ただ紙をちぎっているだけでも楽しくて、ちぎっているうちに「あんなこともできるかな、こんなこともできるかな」と想像がふくらんでいきます。そんなちぎり絵遊びの絵本です。

読んでも、やってみても楽しい絵本

いろがみびりびりぴったんこ

小さくちぎれた、いろがみたちが、とことこ歩き出して……みんなでぴったんこ!色とりどりの素敵な世界に大変身します。巻末に遊び方を掲載。読んでも、やってみても楽しい絵本。大好評『やさいぺたぺたかくれんぼ』の続刊です。

あかい色紙をちぎって生まれた“あかくん”。「びりびり びりびり」とちぎっていくうちに、たくさんのあかくんができました。みんなでとことこ歩いていって、何かの形にぴったんこ!と貼りついたら、おいしそうな赤いりんごに。そしてお花畑につくと、いろいろな色の、びりびりちぎれたお友だちも呼んでぴったんこ!と貼りついたら色とりどりのきれいなお花になりました。この後も、さまざまなものにぴったんこしては、唯一無二のカラフルさに変化して楽しんでいくのでした。

絵本作家の松田奈那子さんは造形教室の主宰もされているので、こうした造形遊びはお手の物。絵本を読んだ後は「こんな風にちぎり絵で遊べるよ」とアドバイスもあるので親子で一緒にビリビリタイムも楽しそうです。こうした手先をつかった遊びは始めた直後はひたすら手先を動かすことに集中しますが、そうしているうちに脳内から「ああしたら楽しいかも、こうしたらすごいかも!」みたいなものがドバドバーっと出てきて、気づいたら「自分ってこんなものが頭の中にあったんだ!」というような造形物が目の前にできあがっていたりしませんか? 頭の中でぼんやりしていたものが、手先を動かしているうちに具現化していく、それが手先を動かす遊びの醍醐味ですね。

創造は、日常の遊びから

特になにかを作ろうと思うまでもなく、暇なときになんとなく手すさびでも〜とやってみたところ、とめどもなく楽しくなってしまった、ということはありませんか? 「創作って、こういうのでいいんだよ」と、「孤独のグルメ」ばりにつぶやきたくなってしまう絵本がこちら。

はんこ遊びでアート!

けしごむぽん いぬがわん

ものさし、ふた、フォーク、積み木、かなづち、テープ、ねじくぎ……。使っているのは身近なものばかり。はんこ遊びでこんなアートができるなんて! 『はんこ遊び×アートのたのしさ』おうち遊びのきっかけにも最適。イマジネーションがゆたかに広がる絵本です。

四角いけしごむに色をつけて、ぽんと押すと何になるでしょうか? けしごむの茶色い四角に顔と足としっぽをつければ、わんわんわんと犬になって歩き出しました。ペンのキャップに色をつけて、ぽんぽんぽんと押したら丸いわっかの集まりに。顔と足をつければ、めえめえひつじに! フォークのとげとげに色をつけてぺたぺたぺたと押しつければ野原のできあがり。犬さん、ひつじさんが駆け回ります。そこに積み木をぽんぽんぽんと押すと、おおかみがやってきました! さあ、一体どうなる⁉ 身近なものをスタンプにして巻き起こる大冒険の絵本です。

楽しいスタンプ遊びの絵本ですが、読んでいるとなんだか授業中につい教科書に落書きしてしまったり、けしごむのカスを集めて固めてアンドロイドを作ったり、子どもの頃のひまなときの手すさびを思い出します。手元にある文房具類をなんとなくいじっていただけなのに、いつのまにか一つの創作ができていて、「創作の始まりって仰々しくなくたって、こうして自然にできるものなのかもね」と思える、気軽な思いつきが一番楽しいという絵本です。

手先を動かす達成感!

手先を使って何かを作ることのなにが楽しいかというと「これができあがった!」と実際に形となって見えることだと思います。特に「紙」は書いてもよし、描いてもよし、立体工作をしてもよし、と身近な素材でとっても万能! そんな「紙」を使った工作絵本をご紹介します。

しろいかみの サーカス

 

白い紙を折ったり、切ったり、まるめたり、やぶいたり……。すると、あーら不思議、紙がサーカスをはじめます。誰でもどこでも楽しめる、紙といっしょに遊ぶ絵本です。

白い紙があります。紙を折ってみます1、2、3。折った紙を立ててみます。積み重ねるとおうちができます。切れ目を入れてひっぱると、びよーんと伸びます。丸めて立てると石を載せても大丈夫。一枚の白い紙でいろいろな遊び方を楽しむ1冊です。 白い紙の無限の遊び方に創造力をかき立てられて、オリジナルで作る制作物なので突き詰めれば夏休みの課題にもできます!

ただ、お父様お母様方、今から悪魔のささやきをいたしますが子どもに“自由”に遊んでもらうってけっこう難しくないですか? 一人で無限に遊べる子ってその遊び方にだいぶ慣れた状態なので、慣れるまでは親が貼りついて一個一個の手順ごとにアドバイスしなければいけないって、けっこう面倒じゃないですか?(ひそひそ) そんなときにはこちら! 一人でも簡単にできて手先を使って遊べて、達成感も半端ないのが「ペーパークラフト」シリーズです!

テーマごとにありとあらゆるペーパークラフトが手軽に作れるシリーズで、乗り物・動物・昆虫・たべもの・恐竜・魚・野菜・くだもの……と、子どもが興味のあるすべてのジャンルのペーパークラフトが網羅されています。 誇張でもなんでもなく我が家はこのシリーズ全制覇しておりまして、動物ペーパークラフトを作ってはダンボールで動物園を作ったり魚で水族館を作ったり、お花屋さん、くだものやさんを建てたり、とことん遊ばせていただきました。図鑑NEOに準拠しているのでできあがりもとてもリアルで大満足。精巧だからこそ、あまりに小さい子だと組み立てが難しいところもありますが、切り抜きだけなら点線にそって簡単に切り抜けるので、切り取りは子ども、組み立ては親と分業してもよいですし、慣れれば子どもだけでも作れます。あとはひたすら没頭してくれるので親としても手先を使った遊びだからいいことをしている気分になりますし、ずらり並んだペーパークラフトを見れば親子で大満足。本当にありがたいシリーズなので、新作お待ちしています!

創造のタネは“たいくつ”から!

夏休みも終盤になりまして、遊びもそこそこやりつくし暇を持て余している子も多いのではないでしょうか? 我が家も暇のつぶし方がパターン化してきております。ただ、暇だからこそふだんやったことのないことにチャレンジしたり「なにかしよう」と動き出したりもできるチャンスです。 暇で暇で退屈しすぎたところからとんでもないチャレンジをしてしまった兄弟のお話です。

「じゃあ、なんかつくろうか」

ああ、たいくつだ!

たいくつでたまらない、ふた子の兄弟。「なにかしなさい!」と、お母さんにしかられ、「じゃあ、なんかつくろうか」。ふたりは納屋でプロペラを見つけ、本とくびっぴきで仕事をはじめた。そして出来あがったのは、なんと、ほんものの空とぶひこうきだった…!

退屈しきってゴロゴロしている双子の兄弟が、見かねたおかあさんに「なにか、しなさいよ!」と家から追い出されました。家の倉庫に入った二人は「なんかつくる?」と話し合い飛行機でも作ることに。動き方を調べ材料を集めます。ですが集める場所は家の中。垣根の木枠を抜きドアの蝶番や窓を外しエンジンをお父さんの車から抜き取り、なんと本当に飛べる飛行機ができてしまいました! 二人が空を飛び回っている間、家ではテレビが映らず電話も車も動かず垣根もバラバラ。空を見上げれば双子が空を飛んでいてびっくり仰天です!

おかあさんの「なにか、しなさいよ!」がまさかこんなことになるとは、で着陸後は案の定、大きな雷が落とされます。退屈さがここまで爆発的な創造につながるとは読者もびっくりです。まだ子どもなので結局全部元に戻されてしまいますが、最後のページではチャレンジは何かのタネを子どもたちに生み出していることが分かりますよ。ありあまる時間こそ創造には大事なものだよな、子どもってびっくりすることをやらかすな、と楽しく笑える絵本です。

さいごに

最近の子の生活は忙しいので「ひまだー!」と思えるのは夏休みなどの長期休みくらいなのかなと思います。ですので、せっかくのんびりできる時間こそ、子ども達が「自分の作ってみたいもの」はなにかな?と深掘りしていってみるとよいのではと思います。

最近は創作ツールも便利なものがたくさんあって、それこそAIが絵も描いてくれますし3Dプリンターが立体まで作ってくれますよね。ただ、それらは作りたいものが明確であればとても便利なのですが「自分が本当に作りたいもの」って最初から決まっていることって実はあまりないのではないでしょうか? 私は試行錯誤して手すさびしてようやく「ああ、これだ!」となっていくことの方が多いです。 ですので、実際自分の手で切ったり貼ったり描いてみたりして作り上げていくことが創作の醍醐味かなと思います。こうして手を動かしていくとふだん気づいていない自分の興味に気づくこともでき、子どもも「自分」というものへの解像度をあげていくことができるのではないでしょうか。 親としても形作られたものから「この子、こんなことができるんだ! こんなものへ興味があるんだ!」と知ることもおもしろいですよね。ちなみに我が子の最初の工作は、トイレットペーパーの芯で作った、亡くなったひいおばあちゃんのロボットでした。「発想の方向性がお茶の水博士!」とちょっと衝撃を受けたのを思い出します……。 というわけで、なんとかまとまった時間が取れる長期休みにのんびーりと工作しながら「うわ、こんなのできた」という思いを親子で楽しんでいただけるとよいなと思っております。

徳永真紀(とくながまき)


児童書専門出版社にて絵本、読み物、紙芝居などの編集を行う。現在はフリーランスの児童書編集者。児童書制作グループ「らいおん」の一員として“らいおんbooks”という絵本レーベルの活動も行っている。7歳と5歳の男児の母。

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