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AI時代の“頭のいい子”とは!?わが子に合う「STEAM教育」特集

【STEAM教育特集】第8回:非認知能力を育むには、絵本の読み聞かせが効果的!?

「好奇心をもつ」「目標に向かって工夫する」「失敗しながらも、やりとげる」というような非認知能力は、学びに向かう姿勢の土台となり、STEAM教育を受ける前段階で必要なものということを、過去にもこの特集の中で触れました。

 

ネット検索すると非認知能力の育成には絵本がいい、との情報もありますが、果たして?
今回は、非認知能力を育むために、絵本の読み聞かせがどんな影響をもたらすのかについて、当連載でもおなじみ、非認知能力の第一人者・無藤隆先生にインタビューしてきましたので、ご紹介します。

無藤 隆
白梅学園大学子ども学部名誉教授。発達心理学・教育心理学、幼児教育を研究テーマとする非認知能力の第一人者。『毎日コツコツ役立つ 保育のコツ50』フレーベル館、『子どもの音感受の世界-心の耳を育む音感受教育による保育内容「表現」の探求-』萌文書林など、単著・共著多数。また「ふれあい親子のほん」シリーズ等、絵本から数字や言葉などへの興味が広がる絵本監修も多く手がける。

 

STEAM教育を受ける前に非認知能力を身につけるべき理由

―まずは、おさらいの意味も込めて「非認知能力」について改めて教えてください。

 

非認知能力とは、興味・面白いと感じたことを追究していく姿勢や態度のことです。

 

目標に向かって意欲を持って取り組む、うまくいかない場合はやり方を変えたり、工夫したりする、人と協力しながら物事を進めていくなど、将来の学びの素地となる力のことを指します。どんな教科にも共通した土台となります。

―STEAM教育の導入が進む日本において、非認知能力はどんな意味を持つのでしょうか?

 

STEAM教育とは、教科の垣根を超えた総合的な学びです。例えば、道端に咲いている花を見て「キレイだな」と感じて絵に描こうこうとすると美術になるし、おしべやめしべなど、花のつくりを学ぼうとすると生物になりますね。

花を見て「キレイだな」と感じ、「絵にしたいな。どんなつくりをしているのかな」と興味を持つことを起点に、様々な背景知識がつながり合いながら学びを深めていくのがSTEAM的な学びです。そして、花に対する感性や興味関心を探究につなげる意欲こそが非認知能力なのです。

学習指導要領でも提唱される「非認知能力」の重要性

現在の学習指導要領には、幼児・学校教育を通じて育むべき3つの力のひとつに「学びに向かう力・人間性など」が提唱されていますが、これは非認知能力と言い換えることができます。

学習指導要領とは

 

国が定めた、小・中学校、高等学校等ごとの教科等の目標や大まかな教育内容。約10年ごとに見直されるが、2019年に発表された改訂版は、プログラミング教育や外国語の必修化をはじめとする新しい学びの形が提示され、大きな注目を集めている。

 

知識の理解の質を高め資質・能力を育む「主体的・対話的で深い学び」が必要とされ、そのためにSTEAM教育が導入される。「主体的・対話的で深い学び」において「育成すべき資質・能力の三つの柱」として、下記があげられている。

 

三つの柱

 

  • 学びに向かう力、人間性など:学びたい!やりたい!と思う力 →非認知能力が担う部分
  • 知識および技能:いろんなことを知る、気づく、理解する力 →認知能力が担う部分
  • 思考力、判断力、表現力など:考える、問題解決する力 →認知能力が担う部分

 

IQで表現される認知能力と、やる気や粘り強さなど、学びの素地である非認知能力をバランスよく身につけることが、今、教育界における最大の関心事の一つです。

 

―非認知能力は誰でも身につけることができるのでしょうか?

 

はい、個人差はありますが、日常生活の様々な経験を通じて、多かれ少なかれ誰にでも備わっていくものです。たとえシャイな性格の子であっても、その子なりの他者との関わり方は、必ずありますよね。大人のサポートを必要としながら、体験的に身につけていくことができます。

 

このような、粘り強さ、ものごとに取り組む際の工夫の仕方、友達との協調性などの非認知能力は、4〜5歳になると急激に成長するといわれています。この時期の家庭教育・幼児教育はとても重要ですが、学校教育に進んだ後も非認知能力を伸ばすチャンスは日常的に存在します。例えば、うまく楽器演奏ができない子の場合、少しずつ練習して上手になるという体験をひとつしておけば、他のことでつまずいた時にも「あの時頑張れたから、この教科も頑張ってみよう」という風に活かされていくのです。

 

非認知能力は絵本の読み聞かせで育まれる!?

―絵本の読み聞かせが非認知能力の育成に良いと聞きますが?

 

絵本に限らず、非認知能力が育まれる環境として必要なことは、以下の通りです。

  • 取り組んでいることに対して、ワクワクドキドキする感情が生まれること
  • 自分なりに考えたり想像したりする必要性に迫られること
  • 簡単なチャレンジから難しいチャレンジまで、幅があること

積み木や砂場あそびなど、子どもが関心を持てるものであればなんでも構いませんが、絵本の読み聞かせも立派な非認知能力を育む時間となります。

 

絵本の良さを3つ挙げるとすると、まず一つ目は、主人公がトライ&エラーする冒険を疑似体験できることですね。例えば、「はじめてのおつかい」は、お母さんに牛乳のお買い物を頼まれた主人公が初めて近所におつかいに出かけるという、大人にとっては何てことのない日常のシーンを子どもの視点で大冒険として描いた人気作品。

はじめてのおつかい

はじめてのおつかい

みいちゃんはママに頼まれて牛乳を買いに出かけます。自転車にベルを鳴らされてどきんとしたり、坂道で転んでしまったり、ひとりで歩く道は緊張の連続です。坂をあがると、お店につきました。お店にはだれもいません。みいちゃんは深呼吸をして、「ぎゅうにゅうください」と言いました。でも、小さな声しかでません。お店の人は、小さいみいちゃんには気がつかないみたい……。小さな女の子の心の動きを鮮やかに描いた絵本です。

途中、主人公が困ったり迷ったりする場面を乗り越えていくのですが、主人公の冒険を絵本で疑似体験して日常生活に戻ると、「あの時主人公は、こうやって頑張っていた!」と真似をしながら、子ども自身が工夫することを学んでいくのです。

同じ林明子さん作の「こんとあき」には、こんがあきを励ますために言う「だいじょうぶ、だいじょうぶ」というフレーズが繰り返し登場します。このはげましのフレーズが頭に入っていれば、子どもが普段の遊びの中で困った時に、自分を励ますフレーズとして使うようになります。自分を励まして奮い立たせる力こそ、非認知能力です。

こんとあき

こんとあき

 

こんは、おばあちゃんが作ったキツネのぬいぐるみ。ある日なかよしのあきとふたりで、おばあちゃんに会いに行くことになりましたが……。幼い子の心をとりこにする魅力あふれる絵本。

二つ目は、多様な空想世界を手軽に体験できることです。実際に行くのが難しい場所のことを想像したり、日常生活では出会えないシーンに出くわしたりも、おうちにいながらできてしまいます。様々なものに触れて世界を広げ、驚きやナゾに出会うことが非認知能力を高める基本となりますから、そういう意味で絵本は効果的ですね。

 

短時間で楽しめるため、一つのことに集中することが難しい小さい子どもから始められますし、絵本を閉じるだけで現実に帰って来られるので、空想の世界へ逃避しっぱなしにならないこともメリットです。興味のあることにのめり込みすぎても、日常生活に支障をきたしてしまうのでよくありません。

最後に、大人が読み聞かせると子どもは穏やかな気持ちになれることも絵本の良さです。大人の膝の上などでスキンシップをとりながら、大人の声にゆったり聞き入る時間は子どもにとって安らぐ時間。安心がベースにあれば、オバケが登場するようなちょっと怖いストーリーも受け止められるものです。同じオバケが動画で動いたり効果音がついたりするテレビやゲームでは子どもが興奮しすぎてしまうため、静止画と文字だけの絵本から起こる穏やかな興奮がちょうどいいでのです。

絵本選びのポイントは?

―どんなジャンルの絵本を、どのくらい読み聞かせるべきでしょうか?

 

非認知能力を育むという視点では、「はじめてのおつかい」や「こんとあき」のような物語絵本が基本となるでしょう。また、図鑑もおすすめ。知らないことに触れて、知的な興味関心を広げるきっかけになります。

 

そして、短時間でもいいので毎日のように読んであげると良いでしょう。幼児は1日のルーチンが決まっているので、「ここは絵本の時間」と決めて習慣化してあげると良いと思います。一度にたくさん読む必要はありません。5〜10分程度、大人も疲れない範囲で(笑)、やってみてください。

多様な絵本に興味を持たせるコツは?

―新しい絵本を買っても、子どもが見向きもしてくれない時は正直凹みます…。 

 

子どもにも性格がありますから、なんでも受け入れる子と、興味に偏りがある子がいて当然です。また馴染みの絵本ばかりを好んで、新しい絵本に興味を持てないケースも多いと思います。

 

そんな時は、2冊セットにして「今日はいつもの絵本を読んだら、こっちも読んでみようか?」と子どもに提案してみてください。無理やりだと絵本自体を嫌がるようになってしまいますので、少しずつ興味の幅を広げることがポイントです。これは子どもの世界を広げるという名目で、大人が飽きないために有効な手段でもあります(笑)。

図書館などを利用する際に、読みたい絵本を自分で選ばせるようにすると興味を持ちやすくなる場合もあります。ですが、子どもの多くが保守的で、同じ主人公の絵本や、似たものを選びがちになるので、あえて違うテイストの絵本を選んであげるのは大人の役目かもしれません。

また、子どもが絵本に飽きてしまう理由として、その月齢では難しすぎる(文字が多すぎ、ストーリーが長い・複雑)という可能性もあるので、少し成長してから再度与えてみても良いと思います。

絵本を読み聞かせるコツは?

―最後に、絵本を読み聞かせるコツを教えてください。

 

読み方はドラマチックでも、淡々としていても良いのですが、読むスピードが速すぎないことは鉄則ですね。子どもはストーリーを耳で聞きながら、目は絵を見ています。視覚から入る情報がたくさんあるので、しっかり処理させてあげてください。

 

絵本は基本何度も読まれることを想定していますから、繰り返し読んだ時でも楽しめるように、たくさんの工夫がちりばめられています。ゆっくり読み聞かせて、毎回新しい発見をしながら「絵本って楽しいな」と思える時間を一緒に過ごしてみてくださいね。

 

* * *

 

STEAM教育の素地となる非認知能力の解説から、絵本の読み聞かせを習慣化するためのポイントまで、幅広い内容について教えていただきました!

 

無藤先生によると、非認知能力の育成と絵本の読み聞かせの関係について、すでに様々な研究が進められていて、その有用性が実証される日もそう遠くはないのでは?とのこと。

 

絵本の世界を楽しんでいる間に、将来に必要な能力を育めるなんて一石二鳥。
さぁ今日も、絵本のある生活を、ぜひ!

 

文:ライター 福田貴子(ふくたたかこ)

幼児教育や食関連のWebメディアを中心にコンテンツ企画、制作ディレクション、ライティングまで幅広くこなす。元PRプランナー、デジタルマーケティングコンサルタントを経て2016年に独立。

掲載されている情報は公開当時のものです。
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