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絵本で伸ばそう!これからの子どもに求められる力

【特別企画】「こんなクリスマス絵本ありますか?」お悩み解決 Q&A!

絵本には、子どもに働きかける様々な力が備わっています。絵本がきっかけで、新しいことにチャレンジする気持ちを持てたり、苦手なことに取り組もうと思えたりもします。子どもたちの世界を楽しく広げてくれる絵本は、子育て中のパパママにとっても、大きな味方になってくれること間違いなしです!

この連載では、とくに「これからの時代に必要とされる力」にフォーカスして、それぞれの力について「絵本でこんなふうにアプローチしてみては?」というご提案をしていきたいと思います。

クリスマスのお悩み、絵本で解決! ニッチな質問集まりました。

今回は特別企画。「こんなクリスマス絵本が読みたいんだけれど、うちだけかしら?」という、ちょっとニッチかもしれないご質問にお答えしていきたいと思います。

クリスマスまであと少し。街にはイルミネーション、書店にはたくさんのクリスマス絵本が並びクリスマスムード満点です。

ところで、みなさんはクリスマス絵本をどのようなときに買いますか? 私、こういう連載をしておりますが実は絵本の編集者でして(ちょっと小声)、クリスマス絵本のご要望は多く、「やっぱりプレゼントの需要が多いのかな?」と考えながら今までクリスマス絵本を企画してまいりました。

しかし、子どもが生まれ現在子育て界を爆走している中、いろいろな年代の方から様々なタイミングで「こんなクリスマス絵本はない?」とリアルな質問を受けるようになりました。思ってもみなかった方向の質問もあり、「こういう需要があったんだ!」という驚きとともに“クリスマス絵本”への解像度も上がり、クリスマスへの考え方にも変化が起きつつあります。

それぞれの質問は個人的すぎるかもしれませんが、「こういうクリスマス絵本の選び方もあるのね」と、今までとは違った方向からご興味を持っていただければと思い、質問をどーんと蔵出ししながら最適な絵本をご紹介していきますね。

質問1: サンタクロース「いる」「いない」問題

Q. 小学生と保育園児の兄弟がいます。下の子は、とても楽しみにサンタさんを待っていますが、上の子はすでにサンタさんを信じていません。弟のことをニヤニヤ眺めており、いつ余計なことを言ってしまうかとハラハラしています。

「サンタさんは、いるんだよ。見えないけれど、いるんだよ」と、兄の口を閉じさせるような絵本はありますか?

(9歳、5歳兄弟の母)

A. いずれは子どもたちが通る道とはわかっているものの、ほんとに「いいから、黙っとけや」と思いますよね(笑)。そんなお兄ちゃんには、こちらの絵本はどうですか?

親子でサンタクロースの謎について語りあう

サンタクロースってほんとにいるの?

「サンタクロースって本当にいるの?」「いるよ」煙突がなくても、ドアにかぎがかかっていても? お風呂に入りながら親子が話しています。「どうしてぼくのほしいものがわかるの?」「子どものほしがっているものがわかるひとだけがサンタになれるんだよ。」お風呂から出たあとも子どもたちの問いかけは続きます。「どうしてそんなにたくさんおくりものができるの?」親子の会話と愉快なイラストで、サンタの謎に迫ります。

「サンタクロースって ほんとに いるの?」と、存在を疑い始めた子にむけて、

「どうして としとって しなないの?」「どうやって ひとばんで せかいじゅうをまわれるの?」などなど、「サンタクロースって ほんとはいないんでしょ」と思う子の定番質問にしっかり答えてくれます。そして短い物語の中で、子どもを喜ばせる「サンタクロースという存在」はなんなのかを考えさせてくれる名作です。

著者の暉峻俶子(てるおかいつこ)さんは1928年生まれの経済学者で『豊かさとは何か』などの著作があります。『サンタクロースって ほんとに いるの?』は1982年に刊行されていますが、暉峻さんは90歳を越えた今でも経済学者として活動され、「経済とは福祉だ」という考えをもたれています。そして、サンタクロースという存在を大切に考えられ「こういった本が子どもたちに今必要だ」との思いからできたそうです。

さらに、こちらもご一緒にいかがでしょうか?

箱を覗くとサンタさんの姿が……?!

クリスマスのふしぎなはこ

僕はクリスマスの朝、床下で小さな箱を見つけます。開けてみると、そこにはなんとサンタさんが見えたのです。「サンタさんもう出発したかなあ」と箱の中を見ると、出発準備をするサンタさんの姿が見えました。箱の中をのぞく度に、サンタさんは、森の中を走り、北の町を走り、そしてとうとう僕の町にやってきました。僕は急いで布団に入ってぎゅっと目をつぶります。朝、目が覚めると、枕元にプレゼントがおいてありました!

この絵本は従来のクリスマス絵本とは趣きが違います。男の子がふしぎな箱を見つけて中を見ると、サンタさんがリアルタイムで何をしているのかが映し出されているふしぎな箱だったのです。あるときには寝ているサンタさん、次のときはプレゼントを配りに出発するサンタさんと、サンタさんの姿が見えるたびに「クリスマスが近づいてくる!」というドキドキワクワクが高まっていきます。

サンタさんが嘘か本当かなんて関係ないのです。この絵本を見せれば「こんなにドキドキしながら楽しみに待っている人に、あなたがとやかく言う必要ってあるかしら?」という思いは伝わるのではないでしょうか。

質問2: クリスマスの本質をちゃんと知りたい

Q. 子どもが小学校受験をし、キリスト教系の小学校に合格しました! クリスマスにはイエス様の劇をするのが恒例らしいのですが、子どもは今のところサンタさんにプレゼントをもらう日としか思っていません。私もうまく伝える自信がなく、もうちょっと知識を深めておかないと学校で浮いてしまうんじゃないかと心配です。子どもにやさしく降誕劇を教えられる絵本はありますか? 

(6歳女の子のママ)

 

A. ご進学おめでとうございます! イエス様の生まれた日のできごとを劇にした「降誕劇」。海外のキリスト教文化圏ではクリスマスの恒例ですが、日本で見る機会は少ないですよね。

小さな子からでもイエス様の誕生の様子がよくわかる絵本として、こんな絵本はいかがでしょうか?

聖書の世界にインタビュー!

クリスマスのインタビュー

これからみなさんをタイムマシンに乗ってイエスさまがお生まれになったベツレヘムへごあんないします…。聖書の世界にインタビューという形で入りこませる、元気いっぱいのかわいいクリスマス絵本。

(現在ご購入いただけません)

イエス様の生まれた日のできごとを、マリア様や羊飼い、三博士たちなどの登場人物にインタビュー形式で聞いていく絵本です。登場人物それぞれが話していくので、誰がどんな役割なのかもよくわかり、イエス様の誕生日に何が起きたのかを知るのにぴったりです。また、この絵本は「女子パウロ会」というカトリック修道会が作成しており、文章の吉池好高さんはカトリックの神父様でもあります。吉池さんは、クリスマスの聖劇の台本のつもりで書かれたとのことで、降誕劇の理解にうってつけです。

 

また、キリスト教の教えをもとにした小学校生活が始まると思います。その準備として、例えばこちらの作品にも目を通されているとよいと思います。

聖書を、「こども訳」で 超訳!

こども聖書

「世界一読まれた本を、世界一わかりやすく」ーーー長年にわたって、世界中の多くの人に読み継がれてきた「聖書」を、「こども訳」で「超訳」! 著書累計100万部以上の人気シスターが、子どもたちに向けて、やさしく解説しました。31日分に凝縮した「聖書」のエッセンスが、悩んだり、迷ったり、落ち込んだり、何かに挑戦しているあなたを勇気づけてくれます。大切な人へのプレゼントとしてもオススメの一冊です。

聖書の一節で書かれていることは要するに日常生活でどうすればよいと言っているのか、どんな心持ちで過ごせばいいのかなどが、子どもたちにもわかりやすく伝えてくれます。これを親子で読んでおくと、学校生活への理解が深まりますよ。

質問3: 大人がおさえておくべきサンタクロースの知識(基礎から応用まで)

Q. 毎年、孫娘のためにサンタ役をやることを楽しみにしています。これまでは、サンタの格好をしているだけでニコニコしていましたが、今年はクリスマス前から「サンタさんってどうやってプレゼントをくばるの?」「なんで私の欲しいものを持ってきてくれるの?」と質問が鋭くなってきました。

私もアドリブが効かないもので余計なことを言ってしまわないか心配です。サンタクロースの知識をインプットできる本は、なにかありますでしょうか?

(4歳孫娘の祖父)

A. プレゼントを渡して子どもの喜ぶ顔を見ることも、クリスマスの醍醐味ですよね! 4歳にもなれば“サンタさん”というふしぎな存在についてもたくさん疑問がわいてきます。そんなときには、この一冊で予習をしておけば万全です。

サンタさんの秘密が明かされる!

だれも知らないサンタの秘密

12月になるとこんな言葉をよく耳にします。「いい子にしてないとサンタさんがプレゼントくれないよ!」なんで、いい子にしていないとプレゼントがもらえないの?だいたい、いい子だったかどうかサンタさんはどうして知っているの?ついに、世界中の子どもたちを悩ませてきた疑問に答えが出ます!!さらに、太っちょのはずのサンタさんが煙突に入れるわけ、膨大なプレゼントの仕分け方法などが次々と明らかに!極秘情報を明かされてしまったサンタさんが、怒って仕事をやめてしまわないといいのですが…。
 

「あんなにたくさんのプレゼントを、どうやって配るの?」「えんとつがない家にはどうやって入るの?」とあらゆる疑問についての答えを網羅しています。お孫さんに隠れてきっちり読みこんでおいてください。

また、サンタ役を演じるわけですから、サンタとなる人間の背景や人格はどんなものなのかシミュレーションをして、しっかり役作りもしておきましょう。

若き日のサンタさん!

しごとをみつけたサンタさん

サンタさんって、どうしてクリスマスにプレゼントをみんなにくばってくれるようになったんでしょう?若き日のサンタさんがいろいろなお仕事を転々としながら、運命にみちびかれ、トナカイたちや、おもちゃ作りの小人たちと出会い、おもちゃを配るお仕事につくまでを、たのしく描いています。

若かったころのサンタさんは、体を動かすことが好きで荷物を届けるのが好きで真夜中に働くことが楽しい青年でした。しかし、どの仕事も何かしら問題が起きて辞めることになります。そして、いきついた仕事とは……? 

こうして「サンタになる人ってどんな人?」と人物像への解像度を高めておけば、サンタ役にますます深みが出てくることでしょう。

質問4: クリスマス会の幹事になったら……

Q. 幼稚園の有志のママたちで、子どもを集めてクリスマス会をします。流れ的に私が幹事となって進めることになってしまったのですが、(もともとそういうキャラでもないですし、)子どもをまとめる自信がありません……。子どもを飽きさせないクリスマス会のヒントがあるような本ってありますか……?

(年少さんクラスのクリスマス会幹事ママ)

A. 大勢の子どもたちをまとめて楽しませるために、何をすればよいか悩みますよね。

大丈夫です、そもそも子どもが全員まとまるなんてことはありません。子どもたちが各々楽しんでやれるものを用意しておきましょう。それは、工作です。

クリスマス飾りを作ろう!

みんなでつくる ふゆのかざりもの

クリスマスやお正月用の飾り物は、家の中にある身近なものを使って、親子で作ってみましょう。クリスマス・リースからおせち料理まで、ほらこんなにたくさん作れるよ。

この絵本には簡単にできて楽しめるクリスマス工作がたくさん。中でも、「かべかけツリーとかざりもの」は、すごくいいですよ。まず模造紙にビニールテープで大きなツリーの形を作っておきます。これは事前に大人たちが作っておきましょう。当日、子どもたちには飾り物の工作をしてもらいます。作ったかざりものは壁に貼ったツリーにバンバン貼っていき、最後、その前でみんなで写真を撮れば、映えスポットにもなって、ばっちり! 大人も思い出の証拠ができて大満足です。

大量の飴を用意して、好きな飴を選んでキャンディーリースも作ってもらえばお土産にもなって一石二鳥。最後にクリスマスの絵本を読み聞かせすれば、楽しくクリスマス会を終えることができます。はい、この流れ全部私もやりましたもので。

質問5: クリスマスの波に乗りきれない問題

Q. 子どもが生まれ、初めてのクリスマスを迎えます。ですが、私自身がうまく「クリスマス」に向き合えません。思い返せば子ども時代はそこまで「クリスマス」が浸透していませんでしたし、大人になってからは「恋人がサンタクロース」みたいなノリの中、波には乗れず、クリスマスと言えばバイトと残業の日々でした。そんな消化しきれないモヤモヤを乗り越えて、素直にクリスマスを楽しむ方法はありますか?

(四十路、0歳児の母)

A. あーー(声にならない悲鳴)! わかりみが深すぎて、身につまされます……。私も同じく、そんな感じの青春時代でした。

ですが、いい大人として年月を経てきました。あなたはもう、クリスマスを与えられる側ではなく与える側に立っています。甘えは捨てましょう。クリスマスへの迷走を断ち切るにはこの絵本です。

新版 わたし クリスマスツリー

きれいな町に行って、クリスマスツリーになりたいと夢みる「もみの木」。 町の人がむかえに来てくれると信じていたのに、季節は過ぎていきます。 やがて、ほかのもみの木をのせた貨物列車が走っていったと知らされた「もみの木」は走り出して……。 一途に願った夢がやぶれた「もみの木」を迎えてくれたのは、森の仲間たちでした。

猛然と走り出す「もみの木」に小さい子どもたちは大よろこび。 大人たちは、心あたたまるラストにほっとしながらも、ほろ苦さをかみしめる、そんなどこにもないクリスマスの絵本です。

 

*本書は、1990年初版刊行『わたし クリスマスツリー』、2006年初版刊行『新装版 わたし クリスマスツリー』の仕様、デザインをかえたものです。佐野洋子の原画に、より忠実な色みになっています。

絵本作家の佐野洋子さんは数々のエッセイも書かれ、迷走する女子たちを叱咤激励してきました。そんな女子の師匠・佐野洋子テイスト満載のクリスマス絵本で迷いをがっつりばっさり断ち切っていきましょう。

とある山のふもとに1本のもみの木が立っていました。もみの木には「わたしは クリスマスツリーになるの、きれいな町で」という夢があります。ある日、クリスマスツリーにするためのもみの木たちを乗せて、列車が山の中を通り過ぎていきました。

「あーあーあー。おいてゆかないで、おいてゆかないで、わたしを きれいな町に つれてって。」

山のもみの木は、力任せに自分の根っこを土から引き抜いて貨物列車を追いかけていきます。ですが、駅に着いた時には貨物列車は通り過ぎた後。もみの木は「わたしは きれいな町で クリスマスツリーに なるの。」と、おいおい泣き出すのです。

もーう、もみの木と在りし日の自分が重なっちゃって、身をよじってしまいますよね。もみの木はクリスマスに憧れて、クリスマスツリーに選ばれようとしました。でも、根っこを引きずりながら、最後には自分の意志で山に帰りました。そして自分が輝ける、自分なりのクリスマスに出会うのです。

 

私たちは大人になり、クリスマスを与えられる側から、子どもたちや大事な人に“与える側”となりました。この絵本とともに迷っていた過去の自分にさよならしましょう。これからは、子どもを喜ばせるために、自分の手でクリスマスを作り上げていくのです。

さいごに

今回は、Q&A形式でクリスマス絵本ご紹介いたしました。悩める方にお答えするピンポイントの選書となりましたが、「こんなクリスマス絵本ないかなー」と子どものために考えた日々は、のちのち「あのときの自分は、こんな思いをもっていたんだな」と懐かしく思い返す、思い出の1ページとなるのではないでしょうか。

クリスマスはみんなが思い入れのある特別な行事ですよね。こんなに子どもを喜ばせるために奔走する日ってなかなかないと思うんです。

クリスマス自体はイエス様の降誕を祝う日とされていますが、サンタクロースは、3~4世紀、ローマ帝国のミュラ(現在のトルコ)にいたキリスト教の大司教、聖ニコラウスがモデルとされています。子どものいる貧しい家庭に金貨をくばり、子どもの守護聖人とされている聖ニコラウスの行いをもとに、クリスマスの夜に枕元にくつしたをさげるようになった由来が描かれた

『クリスマスにくつしたをさげるわけ』(間所ひさこ・作 ふりやかよこ・絵 教育画劇)

という絵本もあります。聖ニコラウスのいた当時は農業技術も確立されておらず、まだまだ世界全体が貧しかったはずです。それでも多くの人々が「せめてクリスマスの日だけでも子どもたちを喜ばせたい」と思い、聖ニコラウスの意志を受け継ぎ、世界中に多くのサンタクロースが広がっていったのではないでしょうか? そう考えると、やっぱりサンタクロースは存在すると思うんです。私自身もサンタの指令を受ける手先となっているのですから。

クリスマスという特別な日を描いたクリスマス絵本には、「子どもを喜ばせたい、大事な人を喜ばせたい」という思いが根底にあると思います。ぜひ、「我が家にとって、クリスマスってなにかな?」と考えながら、お気に入りの1冊を見つけてみてください。

徳永真紀(とくながまき)


児童書専門出版社にて絵本、読み物、紙芝居などの編集を行う。現在はフリーランスの児童書編集者。児童書制作グループ「らいおん」の一員として“らいおんbooks”という絵本レーベルの活動も行っている。7歳と5歳の男児の母。

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絵本ナビ編集部
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