【4歳4か月娘へ読み聞かせ】『ピーターラビットのおはなし』新旧訳を読みくらべ
できること、楽しめる絵本がどんどん増えています!
こんにちは、絵本ナビスタッフの坪井です。
この8月で、娘は4歳4か月になりました。
4歳になりたての頃は私が想像していたよりも幼くて「昨日まで3歳だったんだものね…」と思ったりしていましたが、そこからわずか4か月で見違えるように「子ども」らしくなってきたように思います。
話し言葉に「あのさー」「それで、」などの言葉が入るようになり、だんだん聞き手にもわかりやすい話の流れを組み立てることができるようになってきました。
そして、保育園で流行していると思われるテレビ番組にも少しずつ興味を持ち始めるように。
同じクラスに『鬼滅の刃』大ファンの男の子がいて、その影響か娘も登場人物の名前を覚えたりし始めましたが、「出てくる鬼が恐い」とのことで実際にアニメを見たことはまだありません。
その他にも「仮面ライダーが見たい!」などと急に言い出したので探してみたのですが、配信で見られる適当な作品がなく、代わりに戦隊ヒーローの『暴太郎戦隊 ドンブラザーズ』をつけてみたところ、一目で夢中に。主人公である高校生の女の子「はるかちゃん」に憧れ、最近は毎日「アバターチェンジ!」と叫んでいます。
そんな感じの娘と一緒に毎日(!)『ドンブラザーズ』を見つつ、絵本も忘れないでねと最近読んでいる絵本をご紹介します。
『ピーターラビットのおはなし』を読み比べ
この夏は何回か私の実家に帰省していますが、そのときに福音館書店版の『ピーターラビットのおはなし』を娘と一緒に読みました。
ピーターとマグレガーさんの攻防に息をのむ娘。もっと小さかった頃からハラハラするお話には否応もなく夢中になってしまうタイプです。
私も娘に読み聞かせながら「こんなにハラハラするお話だったっけ」と少し意外に感じたほどでした。
この場面は娘にとってかなり印象的だったようで、家族でジェスチャーゲームをすれば「ピーターを追いかけるマグレガーさん」の真似をしたり、お絵描きができたと見せてもらえば、この場面の挿し絵を真似たものだったりということが何度かありました。
「おはなし」らしい語り口が魅力の福音館書店版
いたずらっこのピーターは、お母さんの言うことを聞かず、マグレガーさんの畑に忍び込みます。れたすやさやいんげん、はつかだいこんを食べた後、ぱせりを探していると、目の前に現れたのはマグレガーさん。怒ったマグレガーさんはピーターを追いかけます。何度かマグレガーさんに捕まりそうになりながら、上着も靴もなくして命からがら逃げ帰ったピーター。疲労困憊のピーターに、お母さんは煎じ薬を飲ませてくれました。
そしてもう1冊は今年、早川書房から刊行が開始されたピーターラビットの絵本の新訳版。
私は川上未映子さんのファンなので、まずは1冊、と『ピーターラビットのおはなし』を購入しました。
娘に読む前に一人で読んでみて、まずびっくり。「マグレガーおばさん」が挿し絵に登場しているではありませんか!
マグレガーさんの奥さんの絵が存在しているとは、私はこのときまでまったく知らず、心構えなくこのページを開いたら見知らぬ女性が突然現れ、「誰!?」と息が止まる勢いでびっくりしてしまいました。
新しい挿し絵に今どきらしい言葉で読める早川書房版
いたずらっ子のピーターは、おかあさんの言いつけをやぶって、マグレガーおじさんの畑で大冒険。おいしい野菜をたべほうだい。ところが、おじさんに見つかり、さあたいへん! 120年愛される名作を、作家・川上未映子の新訳で贈る。
そして、マグレガーさんに出くわしたピーターが逃げる場面のこの描写。
さっきの木戸はどっちだっけ、わからない、しかも、ああ、かたほうのくつをキャベツ畑でおっことし、
あわてふためくピーターの気持ちが手に取るようにわかるこの表現、紛れもない“川上未映子節”でとても嬉しくなってしまいました。
ちなみに娘は、福音館書店版も早川書房版も、どちらも同じように緊迫感を楽しんでおり、違う絵本を聞いているとはまだ気づいていないようです。
娘と食べたい!『お月さんのシャーベット』
一度は食べたい「金色のシャーベット」
「それは それは ねぐるしい
なつの ばんやった。
あつくて あつくて ねるどころか
どうしようもあらへん。」
冒頭からすぐにその熱気が感じられます。そして、ぼんやりと浮かぶ月と、集合住宅の様子。表紙の絵からも、ペク・ヒナさんの独特の世界観が伝わってきます。
「ぽた……ぽた…ぽた
なんのおとやろ? お月さん とけてはるがな」
「えらいこっちゃ」しっかり者のおばあちゃんが、お月さんのしずくをたらいで受け取って、どうしたと思いますか? なんと、シャーベットの型に流し込み、冷凍庫に入れて凍らせるのです。ところが、エアコンや扇風機、冷蔵庫フル稼働の集合住宅が停電すると、おばあちゃんの部屋だけシャーベットの光がともっているではありませんか! それはとっても映像的でドラマティック。そして、集まってきた住民に、おばあちゃんがふるまった、シャーベットのお味は? 想像してみてくださいね。
さて、もう一つの難題「消えたお月さんをどうするか」。これもまた、不思議で、ロマンティックで、それでいて妙に納得の解決策ですのでお楽しみに。今夜のお月さんを見る目が変わるかもしれませんね。
『天女銭湯』『あめだま』などの作品で注目を集め、2020年にはアストリッド・リンドグレーン記念文学賞を受賞されたペク・ヒナさん。インパクトのある粘土人形とアングルで独特な世界が印象的でしたが、今作は少し趣が違います。ペク・ヒナさん初期の作品で、紙で作った人形とミニチュア模型が織りなす世界です。長谷川義史さんの軽快で愉快な大阪弁も、世界観を盛り立てくれます。
このシチュエーションと表現方法だからこそ味わえるリアリティ。視覚、聴覚、味覚、体感フル稼働で楽しんでください。住民たちの個性豊かな部屋もサブストーリーとして見逃せませんよ。
昨年は図書館で借りて私が一人で読んだこの絵本を、今年は自分で購入して娘と読むことができました。
私のインチキ大阪弁イントネーションでいいのかしら…という迷いはありつつ、この絵本の暑くてゆったりとした空気がなるべく娘に伝わるよう、「ゆっくり、ゆっくり」を心がけて読み聞かせ。
昨年も、一応娘に読み聞かせてはみたのですが、3歳4か月にはまだ難しかったらしく、何のリアクションも得られませんでした。
しかし、今年は違います。
マンションのみんなが持った、金色に輝く「お月さんのシャーベット」を見ながら「おいしそう…」とつぶやく娘。
そうそう、私も娘とその気持ちを共有したかった!
「シャーベット」というと真夏に読みたい絵本のようですが、まだまだ暑く、十五夜も間近の晩夏からゆったり楽しむのもよさそうな絵本ですね。
怖さよりワクワク感が勝る『めっきらもっきらどおんどん』
知らない世界へ、真夏の大冒険!
おかしいな、遊ぶともだちが誰もいない。
みんなどこへ行ったのかな。
歩いて来たのは、お宮の前。
かんたは、しゃくだからと大きな声で歌います。
「ちんぷく まんぷく……
……めっきら もっきら どおんどん」
めちゃくちゃの歌です。すると、どこかからか声がして、かんたがのぞきこんだ途端吸い込まれ、知らない世界の夜の山にたどり着いた! 向こうの方からやってくるのは、見た目も名前もへんてこりんな3人組。“もんもんびゃっこ”に“しっかかもっかか”に“おたからまんちん”。おっかない顔をしているクセに、なんだかひどく子どもっぽい。
ところが……この3人の遊びの素敵な事と言ったら。ふろしきを首に巻けば、どこへでも飛び回ることができ、たくさんの宝の玉の中から不思議な水晶玉をもらい、なわとびをすれば、山をけとばし月までひっかける!かんたは時間を忘れ、夢中で遊び回ります。そのうち疲れ果て3人が寝てしまうと、かんたは心細くなり……。
ちょっと不気味な表紙の雰囲気に「もしかしたら、うちの子には怖い絵本かな」と遠ざけてしまっていたらもったいない! なぜなら、子どもたちが夢中になる世界には、いつだってスリルが隣り合わせにいるのですから。テンポの良い文章と展開であっという間に惹き込まれ、画面を縦に横に自由自在に扱った躍動感あふれる絵の世界に、心が躍りっぱなし。絵本を読み終わり、大人だって、なんだかもうちょっとここに残っていたくなるほど。
でも大丈夫。子どもたちならきっとあの「歌」を覚えてくれるはず。そうすればいつだって、ね。ファンタジーの傑作絵本を体感する喜びを、ぜひ親子で味わってください。
こちらは今年初めて娘に見せた絵本。
これまでは、ちょっと怖そうな雰囲気のあるものはそれだけで敬遠する様子を見せていたので、この絵本も買ってはあったのですが見せたことはありませんでした。
でも、今の娘は特撮ドラマを毎日夢中で見られる程度には成長したようなので…と出してみると、「怖い」とは少しも感じない様子。
不思議な3人組が飛び出してくるところには少し驚いたようですが、かんたに遊ぶのを断られた3人が泣き出し、さらにけんかを始めると「けんかしないでー!」と心配そうにしていました。(ここで、子どもはこの3人に親近感を抱くのでしょうね!)
その後はこの3人との楽しそうな遊びの様子を夢中で眺め、最後のページでかんたの周りにあるものを「これってそうかな?」と観察したり。
かんたがいつもの世界に戻ってきたときの「魔法が解けた」感じは、娘にはまだ言語化できるものではないようですが、「もう3人に会えない」「なんだか寂しい」という気持ちはうっすらあるようです。
くまさん好き、絵本好きの子に『パンやのくまさん』
赤ちゃんの頃から、他のぬいぐるみよりも明らかにくまのぬいぐるみをひいきしていた、「くまさん好き」の娘。
4歳になった今でも、隙あらば新しいくまのぬいぐるみが欲しいような素振りを見せます。
そんな娘は、絵本も「くまさん」が出てくる作品が気になる様子。
この頃は図書館で絵本を選ばせると読める年齢や内容に関係なく「表紙がくまさん」の絵本をどこからともなく集めてきます。
もちろん楽しく読めるものもありますが、娘には簡単すぎたり、逆に難しかったりで読めずに返却することになる絵本も多く…。
そんなとき、私一人で訪れた近所の書店に、この「くまさん」シリーズの『うえきやのくまさん』が置いてあるのを発見しました。
私もこのシリーズを知らなかったのでその場で調べ、まず娘に読ませるのならパン屋さんがよかろう、とその場にはなかった『パンやのくまさん』を絵本ナビで購入することに。
大好きなくまさんがおなじみのパン屋さんに!
しっかり仕事をするパンやのくまさんの1日
パンやのくまさんは、朝早く起きて、パンやパイ、お誕生日のケーキを作ります。パンがほかほかに焼きあがると、車にパンをつみこみ売りに行きます。パンが売れると、次はお店に帰りお店番。仕事が終わると、お店の奥の家に帰って、暖炉の前で晩ごはんを食べ、今日いただいたお金を数えた後、2階に上がって眠るのです。こうして淡々と、そしてきっちりと、パンやさんの仕事をこなすくまさんの絵本です。
娘の好きな「くまさん」が、さまざまな絵本でもおなじみの「パン屋さん」に!
娘が喜ばないわけはなく、絵本が届いた日には何回も繰り返して読むことになりました。
働き者の「くまさん」が早起きをしてパンを準備し、焼き上がったパンを人々に売り、店じまいをするまでのシンプルなお話。
素朴な絵柄もかわいらしく、よく見ると細かなところは表紙や他のページとの関連をうかがわせる小物まで描き込まれていたりするので、絵だけをじっくり眺めて楽しむこともできます。
絵本のサイズも小さめで、4歳児があちらこちらに持ち歩いて広げるのにはちょうどいい大きさ。
娘はときどき、お気に入りのくまのぬいぐるみ(今は4体あります)を集め、「みんな、くまのパン屋さんだよ」と彼らに読み聞かせてあげたりしています。
4歳さん向け絵本の記事はこちらから
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